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保育制度改変を議論している厚生労働省の社会保障審議会少子化対策特別部会は,現行制度で保育所認可の権限が都道府県にあることを問題視しています。
保育所建設の財政負担が大きいために認可したがらない,だから保育所建設がすすまないというのです。 「ポストの数ほど保育所を」の運動が広がった1960年代-1970年代には,現行制度のもとで毎年500ヶ所の新しい保育所が建設されました。その後,保育所建設にブレーキをかけたのは,政府の保育施策の後退です。 1980年代半ばに,保育所運営費の国庫負担率を8割から5割に削減し,2004年には公立保育所の運営費を一般財源化しました。 1970年代に保育所運営費は国の予算の0.8%を占めていたのが,今年度は0.39%にすぎません。 こうしたもとで自治体負担が増大したのです。 認可制度は,国の最低基準以上の保育水準を確保し,安定した運営を維持する保障です。 特別部会では,地方の財政負担を理由にして,営利企業が参入しやすい仕組みにするために,一定の基準を満たす事業者はすべて参入を認める制度の導入,初期投資や土地建物の賃借料などが回収できる仕組みや,運営費を株主配当に回せる仕組みまで検討しています。 このことを要求しつづけてきたのは,ほかならぬ財界や政府の規制改革会議です。 結局,現行制度を批判する狙いは,国や自治体が保育の実施責任をもち,認可保育所制度を中心として保育水準を確保し公費負担に責任をもつ公的責任の仕組みをなくすことです。 そして介護保険や障害者自立支援法などで先行して導入されてきた市場原理にもとづく制度を保育にもちこみ,営利企業中心の多様な事業者が顧客獲得を競いあう市場で,利用者がサービスを選択する仕組み(直接契約制度)に変えようというのです。 こうした改変によれば,「ハッピースマイル」全施設閉鎖という事態にみられるように,儲けが見込めれば営利企業が大量に参入するが,儲からないと判断すれば撤退も自由になります。 安定した運営が困難な事態もうまれます。 儲け優先による保育士の労働条件の悪化,保育水準の低下,施設間の格差拡大,低所得者が利用できない,などの事態も懸念されます。 犠牲になるのは幼い子どもたちです。 これまでの議論では,子どもと親,国民にとって,現行制度を変えなければならない理由はひとつも示せませんでした。保育関係団体からのヒアリングでも,問題は制度にあるのではなく,国の保育予算の貧弱さにあることが共通して指摘されました。 制度改変ではなく,現行制度のもとで保育予算を抜本的に増やし,保育所の増設を計画的,本格的に取り組むことこそ求められています。 国民や保育団体の反対の声に耳を傾けず,結論先にありきで制度改悪につきすすむならば,子育てをめぐる環境をさらに悪化させ,将来に重大な禍根を残すことになります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Dec 2, 2008 05:09:44 AM
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