大企業は雇用を守る社会的責任を果たせ
金融バブル,住宅バブルによって演出されたアメリカの好景気のもとで,アメリカむけ輸出を急増させてきたトヨタや日産など日本の自動車メーカーが,輸出が不振になるといって,いっせいに非正社員の「首切り」計画を発表しています。 これまでトヨタなど自動車メーカーは,非正社員を低賃金で酷使し,大儲けしてきました。 たとえば,トヨタ本体の正社員の平均賃金は830万円です。期間社員は,220万円~250万円です。期間社員は正社員と同じ生産ラインで働いています。 トヨタが期間社員などを大々的に導入したのは2003年からです。2008年までに,トヨタ本体で8,000人から18,000人へと2.2倍以上に増やし,トヨタグループ全体でも,40,000人から87,000人へと,2.1倍以上になっています。 そのなかでトヨタグループは,経常利益を大幅に伸ばしました。 内部留保(隠し利益)は,2003年度の9兆5,000億円から2007年度の13兆9,000億円へと,1.5倍近くも増やしています。非正社員の汗と涙で積み増しした内部留保です。 こんなに内部留保を増やしながら,その最大の“源泉”となってきた期間社員を減益が見込まれるといって,放り出すようなやり方は許されるものではありません。 派遣や期間社員などの非正社員を正社員化すれば,雇用が安定・拡大し,内需を拡大することにつながります。 それは,「内需主導での経済成長」にとって不可欠の課題です。 労働総研の試算では,正社員になりたいと考える派遣社員など363万人の非正社員を正社員化すれば,5兆円近くの消費需要を増やし,GDP(国内総生産)を0.8%押し上げます。 選挙目当ての2兆円のばらまき「定額給付金」のGDP押し上げ効果は0.1%といわれていますから,その8倍もの効果があります。 非正社員の正社員化は,経営者がやる気になればできることです。 段ボールメーカーのレンゴーが1,000人の派遣労働者を正社員化する方針を打ち出しました。 レンゴーの経営指標をみると,経常利益は,100億円,内部留保は1,200億円です。社員(10,000人)1人当たり内部留保は1,200万円です。派遣社員(1,000人)を正社員化することによって,社員1人当たり内部留保は1,100万円に減少します。 レンゴーは,「安定生産継続に向け正社員にすることで要員を確保する」として,「人件費は年間数億円増える見通しだが,士気向上で生産効率向上につなげる」としています。 トヨタの連結子会社レベルで非正社員の正社員化をしても,レンゴーと比較して,経営になんの問題もないことは,経営指標が示しています。 トヨタグループ全体の内部留保は13兆9,000億円です。社員(316,000人)1人当たり内部留保は4,400万円です。レンゴーの4倍近くです。派遣・期間社員など非正社員(87,000人)全員を正社員化しても,社員(403,000人)1人当たり内部留保は3,450万円もあります。 経営が危うくなる危惧はまったくありません。 非正社員の正社員化をはかる財源は,トヨタの例にも見られるように大企業には十分あります。 労働総研の試算では,363万人の非正社員を正社員化するために必要な賃金増加額は,8兆円ですが,大企業の内部留保228兆円の3.5%をはき出せば可能です。 日本の大企業は今こそ,雇用を守る社会的責任をはたすべきです。