ある島に工事の監査にでかけた。工事が仕様通りに行われているかどうかを確認するためだった。
空港に降り立つと40代になったばかりの所長が私達を出迎えてくれた。世間はゼネコンを搾取の胴元と捉えていないだろうか、共産党は彼らをバッシングするばかりだ。所長はこの島に赴任して10年ちかくになる、スーパーゼネコンの社員だ。組織の出世街道からはもう外されてしまっているだろう。
夜になって歓迎会が催された。ゼネコン所員も自分達の部屋から自慢の酒を持ち込んだようだ。ぼくは本土では2千円、3千円の「会費」を払わなければ参加できない会合だ。発注者と施工者のけじめ、それがルールになって久しい。そんなことをしかしここで言えば張り倒されるような雰囲気だった。
翌日になって 空軍の少佐が20人乗りのボンバルディア機で空港にあらわれた。ぼくの知っている軍曹を従えていた。出迎えたのはぼくと同僚のふたり。駐機場でのわずか20分あまりの雑談で 少佐はiPhone片手に工事の進捗を入力してゆく。 ぼくはその後定期便に飛び乗った。数ヵ月後、工事の完成が新聞に小さく載った。
辺地には防人がいてこの国の防備のために働いていることを忘れないで欲しいです。
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