観て良かった「のぼうの城」
こういう魅力的な人物が実際にいたとは!良くぞ掘り起こして本にして映画にしてくれました。この映画、水攻めの場面が凄いので公開できなかったのですが。 歴史上には埋もれてはいるが立派な方がいるものです。 以前は誰が政権取っても同じという声をよく聞きましたが今度は違いますね。 野村萬斎さんは大河ドラマ「花の乱」でその口跡のよさでいっぺんに注目しました。 最近では子供の教育番組でもご活躍。 お子さんを教えてるところもテレビで拝見しました。 ところがこの映画ではせっかくの端正なお顔をちょっと情けないような顔にして、 すぐには観に行く気がなかったのですが評判よいし(上の写真は良いほうです) 何人も死ぬような「北のカナリアたち」や「ルイ・コルビジェの家」のような映画が続いたのでいってきました。 「硫黄島からの手紙」「チェンジリング」などで尊敬するC・イーストウッドの 「人生の特等席」も気になりますがこれはまだ始まったばかりなので。 昨年の今頃は映画どころではなかったので幸せなことです。 最後にみんなで死者を弔う場面や現代の行田市や石田堤も登場しました。 名古屋の大須のお寺も関係あり監督たちがヒット祈願にこられたとか。 でくの坊とよばれていた城代成田長親がつい傲慢な権力者にたてを突き、 日頃の行いから領民やさむらい大将が味方し無謀とも思える戦いに挑む話。 水攻めでは津波を思い出していたたまれない方もあるでしょうが、後味が良いのです。 女性陣も一筋縄でいかぬ肝っ玉の持ち主たち! 8年も前にオファーを受けていた萬斎さん、あの謡と田楽の場面も必見、ほかでは見られない。敵も味方も巻き込む凄さ。 見るも見ないものぼうの城 武州・忍城(おしじょう)を石田三成が水攻めにした史実を基に和田竜さんが書いた脚本(後に小説化してベストセラーに)を、犬童一心さん&樋口真嗣さんのW監督が映像化、昨秋公開の予定でしたが、東日本大震災の津波被害を想起させる映像があるとして公開が延期となっていました。「樋口さんの特撮、見たいなあ」と思っていたので、無事公開の運びとなりヨカッタヨカッタ。 領民から「のぼう様」(でくのぼう)と呼ばれ慕われる成田長親が、たった500人の軍勢で2万人の三成軍に挑む物語。三成は、ナメてかかった初戦で忍城軍の騎馬鉄砲や火攻めにより思わぬ敗北を喫し、秀吉の兵法にならい水攻めを選択。忍城の周辺に全長28キロの堤を築いて水をためます。 「決壊させよー!!」という三成のかけ声、やがて轟音(ごうおん)と共に濁流が押し寄せます。家々を押し流し、真っ黒い水が膨れあがるように田んぼをのみ込んでいく――。夜、高台にある本丸のみが水面から顔を出し、ポツン、ポツンと遠くに火事の炎が見え、城の中には着の身着のままで避難してきた人々が暗い顔でひしめきあって……。 あぁこういう光景、見たよなあ……と、私の心はザワつきました。と同時に、この迫真の(まさに、真に迫る)特撮映像を震災前に撮っていたことに対する感嘆もわき上がります。ニュース映像を見ながら「まるで映画みたいだ」という感想を漏らした、その逆のことが起こったわけです。「今は、そういう映像は見たくない」という方もいらっしゃるでしょう。なので、予告編にも入っていないらしい水攻めシーンをご紹介した次第です。 私たち人類は――なんて話をデカくしなくてもいいんですが――様々な戦争や災害の前にも後にも、戦争や災害の出てくる映画を作って、そんな映画を見てきました。ラブストーリーだって子どもの成長物語だって、ある展開が個人的な心の古傷をグサリと刺すこともあります。個人的には、そうした痛みや心のザワつきも、「映画を見る」ことの中に含まれると思っています。いやまあ、見事な特撮を純粋にスペクタクルとして楽しんでも、それはそれで構わない気がしますけど。 映画そのものは、そのほかに二つの特徴を持っています。クッキリと濃いキャラクター造形と、お祭りか運動会みたいな戦(いくさ)のムード。野村萬斎さん演じる主人公の長親は、あっさり開城するはずだったのに相手のゴーマンな態度にブチきれて「イヤなものはイヤなのじゃ!」と開戦を言い出す「ワガママなガキ」であり、劣勢をはね返す奇策として敵の2万の兵の前でヒワイなケツ出し白塗り踊りをかます奇人です。榮倉奈々さん演じるヒロインの甲斐姫は、好きな長親にくってかかりつかみかかり更にはのしかかるという男勝りの姫。極めつきは山口智充さん演じる剛腕の家臣・和泉。大音声と共に大軍に突っ込み馬上からヤリで敵を串刺しにし、それを頭上高く掲げてガッハッハと大笑い。ヨロイには毛皮をあしらい、カブトにはウルトラマンタロウみたいな2本のツノというこしらえ。 領民はというと、初めは無謀な戦にかり出されるなどイヤじゃと迷惑顔だったのが、戦うと言い出したのが長親と知るや「のぼう様じゃあ助けてやらにゃしょうがねえ」と楽しげに城に参じ、初戦では「勝った勝った」と笑って帰ってきます。実に能天気。500対20000というからさぞ悲壮な闘いだろうと勝手に想像してましたが、大違いでした。この陽性の物語を引っ張るのは、家臣も姫も領民も敵兵もみなとりこにする魅力の持ち主、長親。その長親というキャラを成り立たせているのは、野村萬斎という役者の特異な存在感です。 ちょうど今月、犬童・樋口のW監督が名古屋・大須にある大光院という寺でヒット祈願をするというので、取材に行きました。劇中で夏八木勲さんが演じていた老僧が後に尾張に移り住んで創建した寺なのだそうです。本堂で「怨敵退散怨敵退散~」とご祈禱(きとう)があった後、犬童さんは三成の、樋口さんは長親のカブトをかぶって会見に臨みました。 犬童「樋口さんが『ガメラ』で見せてくれた特撮がすごくて、大ファンになった。いつか一緒に面白い映画を作れたらと思っていた」