不思議な夢~第二話「橋を渡る」下
今朝、通勤途中、たくさんの人が信号待ちをしていた交差点で青になって歩き出すと、人と人の足の間から、巨大な雪(というか氷)の塊が見えた。注意深くそれにつまずかないように皆んなで避けて歩いたのだけど…何故都会の真中の横断歩道の真中に、巨大な隕石のような氷の塊があるのだろう?世の中は不思議で満ち満ちてます。(笑)ということで続きです橋の真中に差し掛かったところで、突然、落とし穴にはまったように体が沈んだ。右足が、橋を突き破り、所在なげに風に拭かれているようだ。私は慌てて左腕で(だったと思う)何処かに捕まり、体制を立て直そうとした。掴んだ指先の感触に異変を感じて、目を向けると、先ほどまでの雪が嘘のようになくなって、私は湿って真っ黒になった木のてすりを掴んでいたことがわかった。風に吹かれる右足に視線を落とすと、腐った木を突き破って宙ぶらりんになっており、眼下には、黒く濁った川の流れをはっきりと確認することができた。踏ん張っている方の左足の方も、心なしかキシキシしているような気がする。耐えがたい恐怖に体が固まり、口の中がカラカラに乾く感覚がした。私は橋の真中で完全に1人だった周りには、私以外人っ子1人、車一台、犬一匹さえもいなかった。空は暗く、私自身にも色はついていなかった。そのままの体制で、首だけを使ってゆっくりと振り返ると自分が真っ黒な木の橋を随分先に進んでしまっていることが一目瞭然だった。眼前の橋の袂の方が、まだ近くに感じる。助かるためには進むしか道はないようだった左足に力を入れて右足を橋上に乗せると今度は左足の方がザクっと腐木を突き破り、膝の辺りまで埋まった。「イタチごっこだ。」と夢の中の私は思った。どんなに注意をしても、この腐木を相手には、私は助からないかもしれない。私は突然「父」を思った。「すぐ側にお父さんがいたなら、きっとうまく私を救って くれるだろう。」「ここでじっとしていれば、お父さんが救助に来てくれるかも しれない。」でもそれと同時に私はわかっていた。この世界には私以外きっと1人も存在していないのだということを。私が、雪の中、この橋を渡ること。その橋は鉄ではなくて何故かもろい木で、しかもそれは今まさに朽ち果てようとしていること。私はそれに呑まれて川に転落すること。たぶんストーリーは最初から決まっていたのだ。夢の中で私は何故か悲しくも腹立たしくもなかった。夢の中で私の心は空っぽになった。私はもう一度父と母のことを思った。まるで死ぬみたいだなとも思った。開き直ると、ダラダラと自分の体が沈んで行くのを待つ気にもなれなくなったので、私は思い切って橋を向こう岸まで走ってみたくなった。見た目には何処が腐って陥没するところなのかわからない。全部がダメかもしれないし、ひょっとすると何でもないのかもしれない。私は手すりの側を一目散に駆け出した。ステップを踏むたびにつま先が少し沈みはしたものの、橋の袂までもうすぐというところまで軽快にやってくることができた。心臓がバクバクし、息も上がってきているが、ここで止まってしまっては、私はこの波に呑み込まれてしまう。死んでも仕方がないと思っていたのに、私は死の恐怖から必死で逃れようと全力疾走しているのだ。最後の一歩というところで左足が腐木を突き破り、その反動で蹴り上げた右足も一緒に埋まってしまった。私は両腕でしっかりと向こう岸の道路をつかみ、受身の姿勢で転がりこむように向こう側に倒れこんだ。なんとか助かった。そこで目が覚めた。どうも私は、歩いていると突然落とし穴に落ちるタイプの夢を多く見ます。屋上のパーキングに車を止めて、エレベーターホールまで歩いている途中にたくさんの車がポコポコと落ちてゆくのを目の当たりにするとか…(笑)この夢のお話には続きがあって、この話を父親にしたところ、この話の対象となっている「みどりばし」は父親が子供の頃実際木でできていたようです。当時旭川に現存する唯一の木の橋だったとか。明日は夢話の最後です。かなり官能的なので、18才以下の人は読んではいけません(笑)と、そこまでひどくないですけどずばり「情事」です。