ひとり芝居
Photo,1【その土地、その場所が自分の檜舞台】記・坂本長利1月30日、雨降る金曜日の6時半、閑静な住宅街の中にある、一軒の瀟洒な家に、なぜか続々と人が集まった。Photo,2このお宅でいったい何が始まるのか?!冷たい雨に濡れて凍えそうな身体に床暖房の暖かさが嬉しい。辺りを見回すと、シンプルな台座の上に大きなロウソクが一本。Photo,3 どこからともなく聞こえてくる不思議な音楽と、部屋中に満ちている伽羅の匂いにも似た香りに期待はいやがおうにも高まっていく。Photo,4大勢の(70人近い)人々が集まっているのに、場内はとても静寂な空気で、そして期待の昂揚感に満ちていた。ここは東京・等々力、住宅街の画廊「スペースS」の別館。俳優・坂本長利のひとり芝居「土佐源氏」を見ようと集まった人たちだ。『あんた、よっぽどの酔狂もんじゃの、 乞食の話を聞きにくるとはの』「土佐源氏」(とさげんじ)土佐・梼原村の橋下の粗末な小屋に住む盲目の老人、若い頃は牛の売買をする博労(ばくろう)だったが、村の秩序の外で、村人たちに蔑まれながら生きてきた。極道の末に失明し、流れ流れて、今じゃ物ごいで暮らす日々。ボロのように何も残さず、ひっそり消えていく男の一生とは‥その女遍歴の中に微かに光る一片の「人間のこころ」の温もりを、老人の語り言葉そのままに、俳優の坂本長利が、1967年の初演以来およそ40年にわたり、たった一人で演じ続けている。坂本長利は、今年、劇中の老人と同じ八十歳を迎えるという。この話は民族学者の宮本常一氏が、日本各地を訪ね、1200軒以上の民家に宿泊しながら土地の伝承を聞き、書きとめていった実話のひとつだ。※著書「忘れられた日本人」(岩波書店)で読むことができる。地元では原作よりも坂本長利さんが演じる一人芝居の方が有名だとの声もあるそうだ。公演回数も今回のギャラリー公演が1108回目となるそうで、この日は、奇しくも宮本さんの命日であったという偶然に、主催したスタッフの方々は、とても驚いていらした。こちらが今回の素晴らしい舞台を主催した、ギャラリー「スペースS」オーナー安藤壽美子さんと、ドイツ・ハム&ソーセージの店「DA DA CHA」オーナー小池保さんのお二人です。Photo,5終演後も、ある種の衝撃と鳥肌が立つような感動とで、しばし身動きもできず、あちらこちらで深い溜め息がもれる。Photo,6スタッフの皆さんは、息つく暇もなく懇親会の準備に‥Photo,7Photo,8Photo,9「坂本長利さんを囲む集い」の風景。嬉しい新たな出会いもありました。Photo,10この方が俳優の坂本長利さん。舞台でみせる鬼気迫るエネルギーがどこに潜んでいるのかと、不思議に思えるほど物静かな方でした。Photo,11『秦野にもいらして頂けますか?』と伺ったら『必ず伺います』とおっしゃって下さって、近いうち必ず、我が町・秦野での上演をひそかに心に決めた夜でした‥。※画像は一部は「ぜんさん」こと太田氏よりお借りしました。雨の中、車での送迎もとても助かりました。ぜんさん、ありがとう~☆