頭骨にある丸い穴から
5,200万年前と推定される中年男性の頭骨に丸い穴が発見されています。一人の考古学者が、当時頭骨に穴を開けて手術する時に残されたと大胆に推測します。テレビインタービューのワンシーンです。考古学者は淡々とその一部始終を語るんだけど、見ている側は時空の倒錯に翻弄されてしまいます。5,200万年前の出来事を現代人がどうやってうまく解釈できるのか、素人の自分はそう思うだけで頭が茫然とします。ストーリーはともかくとして、2点ほど考えさせられました。考古学者の推論をめぐって、各方面の専門家が招集され、鑑定会が行われました。その場には、考古学者だけでなく、医学者もいました。当然、歴史学者、自然科学者などもいるはずです。一つの判定にこれだけ様々な分野の専門家が動員されるというのは考古学ならではの魅力でしょう。自分も研究者と思われる仕事をしているのですが、他分野の学者に注目されるような研究はとてもできないと思います。でも、ある一つの物や事柄に焦点をしぼり、深く掘り下げていく姿勢を持っていなければなりません。頭骨にある丸い穴のように、歴史の真相が隠されているからです。もう一つは、「現代人の発想で古代を想像してはだめ」という話。歴史を考える時だけでなく、外交問題を考えるのも同じではないかと思います。自国の発想で相手国のことを想像しがちだけど、時には相手の発想で物事を考えてみると、そこに何かいい打開策が存在しているかもしれません。