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テーマ:今日聴いた音楽(75212)
カテゴリ:ディープ・パープルファミリー解説
知る人ぞ知る名盤、もとDEEP PURPLEの、トミー・ボーリンのファースト・ソロアルバム。
日本での、とりわけパープルファンの間での彼の評価は大きく分かれます。 それも、9対1位でネガティブ派がいまだに多いでしょう。 少なくとも私のリアルタイム時代ではそれ以上でした。 私もご多聞に漏れず、トミーが参加したアルバム、'COME TASTE THE BAND'はもうパープルではないと思っていたし、さらにパープルの東京公演での彼の最悪のコンディションでの演奏(のLP)を聴いて、彼のことをへっぽこギターとずっと思っていました。 当時の回りの悪友たちもまあ、口を開けばトミーの悪口という状態であった。 「やれ煩さ カバとグレンの 空騒ぎ」 「それにつけても トミのへぼさよ・・いかん、季語がなかった」 とかね(笑)。 私にとっての転機は、たまたま立ち寄ったサイトで読んだ「Who are you?の悲劇」というコラムに潜んでいました。 そのサイトは WEB MAGAZINE GYAN GYAN という。 松崎氏の達者な文章にぐいぐい惹きつけられて読んでいくうちに、それまでわだかまっていたいろいろなことがだんだん腑に落ちてきました。 ・・東京公演のとき腕を痛めていたことは知っていたけど、そうか、ほとんどプレイできる状態じゃなかったのか、パープルに入るまでは実際に凄いギタリストだったのか、ルックスだけで入ったのではなかったのだな(笑)というようなことが。 そして、ひとつ騙されてみようじゃないか、という気になりました。 私は松崎氏の勧めに従い、トミーが参加したBIRRY COBHAMのソロ'SPECTRUM'を取り寄せて聴き、すっかりノックダウンさせられてしまった。 それどころか、その日からすっかりトミー信者になってしまった。このように「折伏の日々」を送っているのであります。 トミーに関しては、案外こういう経過をたどってファンになってしまうケースが多いのではないかと思う。 このアルバムのメンバーがまた豪華。 ベースがスタンリー・クラーク、ドラム1,2,3,5曲目がジェフ・ポーカロ 4曲目のパーカッションがフィル・コリンズなど、まず当時無名の若造としてはムチャクチャ大御所を呼んでいたのだ。 トミーよあんたはスティーリーダンかナベツネか、とツッコミのひとつも入れたくなるではないか(笑)。 さてこの豪華なバックを引っさげての、彼の才気あふれるプレイをご紹介。 1.The Grind キャッチーなイントロから始まる軽快なナンバー。耳のいい人はすぐにうん?ヤケにゴージャスなサウンドだなと気づくでしょう。そう、このキレのいいハイハット・プレイがまさにポーカロサウンドです。 トミーのさらさらと乾いたカッティングと清潔な色気のあるスライド・ギターが実に耳に心地良いです。 2.Homeward Stut どうです、このカッコいいリフは! トミー・ボーリンは巨匠ジェフ・ベックのWIREDより早くこういうロックのアブストラクトの境地に到達していたのですぞ。 というか、ベックはトミーの参加した'SPECTRUM'に触発されたというのが真相らしいのですが。実に色とりどりの多面体といった表情を見せるギターがここでも堪能できます。 余談ですが、第4期パープルのライブアルバム、'ON THE WINGS OF A RUSSIAN FOXBAT'では彼の絶好調のプレイが聴けますが、そこではこの曲が'The Grind'ということになっている。なんといういい加減なクレジットでしょうかっ。 3.Dreamer J.クック作の名曲中の名曲。 ところでこのJ.クックって、何者? JAMES GANG時代もトミーと一緒に曲作ったりしているけど、プレイヤーのリストには名前が上がってきませんね。ピアノはあのデビッド・フォスター。トミーのちょっと甘だるい声とやや硬質な音色のギターが非常によくこの曲にハマっています。 夢をみる者よ、君が何を考えているのか 顔をみればわかる きっと以前は幸せだったんだろう だけど今 君の心はここにない その後のトミーの人生を考えると、この歌詞もえらく甘苦く感じます。 4.Savannah Woman 今度は一転してボサノヴァ調。実はこの曲、ちょっと雰囲気がHっぽくてイイんです。 この曲も深夜にジントニックとかをやりながらボーっと聴いていたい。 う~ん、この曲がアルバム中でも一番好きかもしれません。 5.Teaser タイトル曲。この曲もポーカロのドラム、粒が綺麗に立ってます。 歌詞のとおり、ギターソロに入るところの焦らしの間がすばらしい。そしてさすがスケールの大きいギターソロももちろんナイス! 最後の方で「おぉぉぉぉいえあ!」と突然ヘンな低音のコーラス入れてるのは誰だ? ミョーだぞっ(笑)ポーカロもスティックをカランと置くオトまで入れてるし。 6.People,People レゲエのようなリズムを持った曲。世間からはみ出してしまった男の重苦しい気分を歌ったもの。 母さん 母さん 頼むから 俺が息をしていられるように祈ってくれ 父さん 父さん たったひとりの親父 息子を誇りに思ってくれるように願うよ ヤン・ハマーがピアノ、ドラム、シンセ、オルガンで一人何役もこなしています。 ン、ドラムもこんなに上手いのか?たしかベックのゼア・アンド・バックあたりではヤン がドラムをやると曲のクオリティががくんと下がったものですが。 7.Marching Powder この曲!は最もベックのWIREDに近い曲想を感じるでしょう。ドラムスもあのアルバムの一曲目'RED BOOTS'で超絶ドラミングを聴かせたナラダ・マイケル・ウォルデンです。 タムのオカズの入れ方とか、バスドラのフレーズとか、やっぱりナラダだ!とニヤリとするところが多々あり。 この人プロデュースに行ってしまったのが残念でなりません。世界で5本の指に入るドラマーだと思うのです・・。そしてシンセはここでもハマーときたもんす。 トミーのギターも、ナラダにもハマーにも負けてはいません。 でも、いかにもトミー得意のフレーズだな~。速弾きの前にタラタ、タッ、タッ、・・て引っ張るところが・・。パープルの東京公演のHIGHWAY STARでは、左手の不調のためこの先が続かず「マンドリン同好会」になってしまいました。 まさに「マヒなスターズ」(古!) 返す返すも残念でした・・。 8.Wild Dogs 左手マヒ状態の東京公演でも唯一まともだった曲。 自分のオリジナルだとこうも違うものか(笑)。 以前在籍していたJAMES GYANGのアルバムあたりに入っていそうな、良質のアメリカンロック。後半の「一人掛け合いツインギター」も実にいい感じです。 9.Lotus このノリはなんというんだろう。ヘビー・レゲエ? 「蓮」とはショボいタイトルだなと思って聴いてみると案外これが聞き応えがあります。 彼らが身を削って働いて稼いだ金で 買おうとするいろいろなものは 僕には重荷にしか思えなかった 東洋の空に浮かぶハスの花のように 先ほどSTEELY DANと言ったが、そう、この曲の中間部はちょっとそれを彷彿させるものがありました。 エンディングのギターソロが凄まじい。もっと延々とやってほしかったものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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