究極の唯心・唯テク主義バンド、マハビシュヌのデビュー・アルバム。
ギター JOHN MACLAUGHIN、ヴァイオリンJERRY GOODMAN、ピアノJAN HAMMER、ベースRICK LAIRD、ドラムBILLY COBHAMと、新人なのにオールスター戦状態という奇跡のようなメンバー構成。
マハビシュヌ・オーケストラという名は、このバンドの音楽性と精神性を見事に表現している。
壮大ではあるが、大自然のようなもの・・はあまり想起されない。
感じるのは、人智を超越した存在とそこに接近しようとする人間の営為である。
選ばれし5人のアーティストがひとつのテーマのもと呼応し合い、つむぎ上げる世界。
★★★★★。
輸入盤買ってしまったため、解説読むのに手間がかかってしょうがないが、アルバムの冒頭を飾る、マクラフリンの師、SRI CHNMEYの文章を途中まで紹介させていただく(誤訳があったらすみません)。
<大志 aspiration>
大志は、天へと向かう美しい炎。
真の大志だけが、神がともにあられることを感じさせる。
阻むものは誰もいない。
私たちは神を引き寄せたいと思うだろう。
だが神に身を投ずる大志こそを持たねばならないのだ。
太陽が暗雲に対する唯一の救済であるがごとく、
病める精神への与薬は大志だけなのだ。
・・・・
1.Morning of the Spirits
ハナから飛ばしおる(笑)。
「ワシにできぬことは何ひとつないんじゃ~っ」と帝王ドラムが鳴り響いたかと思えば、「ワシを阻むものは誰もいないんじゃ~っ」と支配者ギターが滅法弾きまくる。
同じフレーズを反復していたヴァイオリンも、出番がくるやフルパワーで参入。
全員がスーパー・サイヤ人(古!)となってくんぞほぐれつ、最後は堂々たるスケール感を伴い遠方へ消える。
2.Dawn
このイントロ、ドライブしているときにあやうくトリップしかけたぞ!
曲調転じ、またもやバトルモードへ。
ギター、ちょっと弾きこみすぎではなかろうか。
「ン?ベックのワイヤードにこういうのがなかったっけ?」
そうそう、ピアノ、ヤン・ハマーだった。これで繋がる。
ここでのピアノのプレイも実にいい。
3.Noonward Race
よくバンドの練習の時とかさ、ちょっといきなり課題曲に入るのけったるいな~ってことあるじゃん。
で、ドラムがなにげに
「ズン、タ~ッタズタズズタンタタ、」
な~んてやりながらおねだりの表情でベースのヤツのほうをちらっと向いたりすると、
ベース、「しょ~がねえなあ、ちょっとだけな」みたいな顔して、
「ドッ、テー、ドテーテ、ドーテドーテドリリンドリリン」
するとギターが、ン、「そすっと俺も何か・・」って気になって、コードを確かめながら、
「テロリ~ン、ピロポ~ン、テロテロキュ~ン」
とか何とか、しずしずと入室。
やがてコードが一巡し、要領が行きわたるや、今度は全員アドレナリン放出、得意技披露、新ネタ模索、新技術定着など動機はさまざま、もーやりたいことなんでもありのバトルへと突入。
ね、あるでしょ、どこのバンドでも。
それでだ、そういうノリをこの曲で感じるという・・前置きが長すぎたか。
4. A Lotus on Irish Streams
はじめピンとこなかったが、こういう曲は安物のカーステレオで聴いてもダメ。
じっくりヘッドホンで聴きこむとこの精妙な美しさが見えてくる。
しかしなんと融通無碍な演奏だろうか・・。
5.Vital Transformation
なんて訳すんだ?生命変換?
あーっ、このリズムパターン、ベックのSCATTERBRAINではないかっ!!
いかにハマーが(というと「ぴゅーっと吹くジャガー」という漫画を思い出すが・)インポートしたとはいえ、あまりにクリソツ。
あるレポートに9拍子とあったけど、6拍子ではないだろうか。
コード進行やベースラインなどは後発だけにベックバージョンのほうに一日の長があるか。
6.The Dance of Maya
はじめて聴いたときは「ヒンズー教徒のブルース」という(そんなのあるかーっ!)言葉が頭に浮かんだ。これも聴きこむほど凄さがわかってくる。時代を超越した名曲と言っても過言ではない。マクラフリンはジャズのテクとロックの荒魂を併せ持つ不世出のギタリストだ。
7.You Know,You Know
この曲も瞑想型。このタイトルを頭に繰り返しながら聴くと味わいが倍加する。
You Know,You Knowとは思い出せ、目を覚ませというメッセージにもとれるか。
後半、ちょっとドラムの音量を下げてもよかったかな。
8.Awakening
まさに「覚醒」。
16分音符、キメ技の嵐!!キターっ!!
再び全員スーパーサイ・・(くどいか)。
しかしこれぞマハビシュヌの世界だなあ。
ハマーのソロでのマクラフリンのキレた音のバッキングも凄まじい。
ああああと、何かとあっけにとられているうちに終わってしまうので注意。