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テーマ:変な夢見ませんか??(844)
カテゴリ:よもやま話
「夢」の話。
ある温泉宿の経営アドバイスを依頼される。 そこは街中にぽっかり沸いた温泉を持つ一軒宿で、女主人が一人で切り盛りしている。 昔はそこそこ流行っていたが、ロードサイドに次々と温泉ランドが進出するや、客足が遠のいており困っているとのこと。 訪ねてみると、広大な貯水池に突き出たような形で建っている平凡な二階建ての宿で、民宿、というほどの風情もない。かろうじて「○○温泉」という看板はかかっているが、まあ、どう見ても下宿屋という感じだ。 現在の宿泊客もビジネスか免許取得のための合宿に使われる程度で、それも先細りの感がある。 「こんにちは、よろしく」と割烹着で出てきた女主人、年の頃は55,6といったところか、もとバレー部(想像)、体は頑丈そうだが、全体にはじけるような愛想がない。 館内もそうしたことを反映して、素っ気無いのを通り越して、殺風景極まりない。 一階は風呂場、16畳ほどの広間(宴会などのときは近所の親戚が手伝いに来るそうだ)、炊事場、トイレなど、2階は5部屋ほどの客室がある。 2階からの眺めはと見てみると、正面に貯水池の全容が見渡せ、眺めは悪くない。なのに、どうしてこんなに窓が小さいのか・・。 これはまあ、構造の問題だから目をつぶるしかない。大広間からもそこそこの眺めが得られる。 ここで試食がてら昼食を出してもらった。 「う、うまい!」 この女主人、料理センスは水準以上だ。 だが、この地ならではという一品を出さないと、温泉宿としては失格であることを指摘する。 大浴場を拝見。と言っても6畳もないくらいの、素っ気ないタイルの風呂。 お、しかしよく見ると窓ごしに露天風呂が・・。 これで少し、救われた気になる。しかし眺めは皆無! 湯そのものは透明でとろみもあり、かすかな硫黄臭もし、悪くない。 垣根の配置を工夫して、風呂からは池が見えるように、外からは見えにくいように改善すべしと伝える。 「で、ひとつだけ?」 女主人は「ええ、なので混浴です」と事もなげに応えた。 (ダメじゃこりゃーっ!) それでは客がどんどん逃げ出すのは当然だ。 「部屋数が多くないのだからグループごとの貸切制にして下さい」 「わかりました」 「それから館内にまったく飾り気がないですね」 「すみません、無趣味なもので」 ・・私はこういう宿は、レトロ路線でいくのがいいかなと考えた。 親戚のところに行って、古い家具とか農耕具とか蓄音機などあれば借りて来て置くようアドバイス。 「ただし鎧兜とか、人や動物の彫り物などはだめですよ」 レトロというより、幽霊屋敷になるからである。 それから、駐車場からのアプローチだが、8メートルくらいの橋をかけて、そこを渡って行き来するようにした方がいいと思った。 そのことによって、特別な情緒性が出るような気がする。ただしこれは経営が軌道に乗ってから。 帰りがけ、何気なくある扉を開けると、さきほどの風呂の5倍はある、総ヒノキ造りのたいそう素晴らしい湯小屋に通じた。 中学生の男の子が泳いで遊んでいる。 「こんなにいいお風呂があるじゃないですか」 「いえ、これは自家用なので・・」 「うむむ、この女主人の性根を根底から入れ替えさえすれば、経営再建は十分可能なのだが・・」とその大浴場にどっぷり浸りながら、私は考えた。 途中で、男の子と水かけっこになった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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