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テーマ:温泉について(1667)
カテゴリ:その他の山形の温泉
「東北地方を代表する温泉景観はどこですか?」と聞かれたときには、私は言下にそれは「銀山温泉」でしょうと答えることとしていた。 奥深い山中の狭い土地を分け合うように、浅細い小川を挿み、古風で重厚な木造3層、4層の旅籠が甍を競う。 古い建物がそのままで集積していること自体の美に、おのおのの建築美が付加されて、人々の心の奥底に残る「癒しの場」への郷愁を、重層的に呼び覚ます、異質な空間がそこにあった。 「レトロ」とか「大正ロマン」とかいう言葉を陳腐なものにしてしまう圧倒的な存在感が、あったのだ。 中でも、とりわけ異彩を放ちつつ景観美を支配していたのは、写真右手手前の「藤屋」だった。 入母屋の屋根を左右対称に近く配した三層の和風建築に、オシャレなステンドグラスの望楼が、「大正」の絶妙なハイカラ性を演出していた。 藤屋こそは、銀山温泉の最重要な構成要素だった。 その建物の美しさに、別のストーリーによる付加価値が生じていた。 そう、アメリカから英語助手教師として赴任し、当館の女将として転進したジニーさんである。この宿は、「日本人以上に日本の心のわかった青い目の女将さんのいる宿」としても、脚光を浴びた。 そのこと自体は、とてもほほえましいことなのだが・・。 「藤屋」が全面改築していると聞いて、ああ、躯体にいよいよガタがきたので、外観を保存したまま中身をリニューアルするんだろうな、と思っていた。 その後この宿のことは忘れていたのだが、ひょんなことからHPを見て驚愕した。 銀山温泉 旅館藤屋 !!!! 「和風」という記号は使用しているものの・・。 どうみても、全面にむき出された建築家の前衛自己主張。 まるで全身鉄仮面のようだ。 これがいわゆる「匠のワザ」とやらか・・。 あの控えめながら可憐な美をまとった少女のようだった藤屋が、これか。 中学校に片思いしていたクラスメイトがAVに出演したようなショックだ。(←オイオイ) 仮にこの建物が単体として優れた建築であったとしても、銀山温泉のこの風景に馴染むかどうか、これを破壊することはないか、誰か本気になって検証したのだろうか。 ・・いや、まさかこれだけの重要な景観に関することだ、そのデザインを旅館と設計事務所だけで決めたはずはない。なのに、なぜ・・? まあ、実物を見ていないのであまり強く断言することは控えるが、もう一度、この建物が銀山の、いや東北の重要な宝物に対してやってくれたことを検証すべきだと思う。 私は、かなり銀山全体に失望した・・というか、こうした景観ひとつ守ることのできない、日本の社会的システムに、改めてがっかりしたのであった。 料金は一泊一人34800円~50800円・・絶句。 皆様は、どう思われますか?コレ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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