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カテゴリ:ユーミン解説
ユーミンはあまりに好きな曲が多いので、ベスト10などはとても決められません。順位などをつけずにオススメ曲をぼちぼちと書いていくことにします。
○「78」(セヴンティ・エイト) この曲名は、タロットカードの枚数をあらわしたもの。 ユーミンの私小説的なトータルコンセプトをもったこのアルバム(悲しいほどお天気)の中で、唯一すっ飛んだファンクロックになっていますが、これは神秘的な側面も自分の一部として納めたいとする本人の意向があってのものらしいです。 「まったり語りました」感の強いこのアルバムにこのナンバーが入って、全体が引き締まりました。 こういうファンク、ただでさえ好きなのにユーミン印の珠玉の歌詞が載るのだからたまったものではありません。 「命を懸けるほど なにかを望むなら カーテンを開けてお入り」にぞくっとしませんか。 2度にわたって飛び出す伸びやかなギターは今剛か、鈴木茂か。02’34”からのウネウネしたフレーズが痺れます。 バックコーラスは黒人も参加、との解説も見受けられるが、上田正樹だそうです。そういわれると彼にしか聴こえなくなるから不思議です。 女性コーラスはかなり奔放にやっています。 04’42”にはネコ声も飛び出すのにびっくり。 歌詞には4大精霊シルフィ、グノメ、サラマンデル、オンディーヌまで入ってるので、没頭して聴いているうちに知らずのうちに身のまわりに召還してしまっているかもしれませんぞ。 かんしゃくや虚栄心を持った女性は、死後魂が天に昇ることができず暗黒の霧となってシルフになる。それを言っているのは私ではなく、詩人のアレキサンダー・ポープです。 ○リフレインが叫んでる ユーミン20枚目のオリジナルアルバムとして出されたDelight Slight Light KISSは、1989年の第31回日本レコード大賞で優秀アルバム賞を受賞。初のミリオンセラーを記録し、特にこの「リフレインが叫んでる」はシングル・カットこそされませんでしたが、テレビでのドラマ化、CMでの使用、西城秀樹によるカヴァーなどで非常に知名度の高い曲となりました。 アルバム全体は「純愛」をテーマとしており、この紹介曲を除き大変アンニュイな路線です。シンクラヴィアを多用し、いわゆる打ち込みのサウンドは、バンドをやっていた私としてはどうにもフラストレーションがたまるアルバムです。 しかしこのリフレインーについては、この打ち込みの音が実にガツンと嵌っています。 イントロのプログレめいた効果音でラフに色塗りされた空間に、ピアノの連打が刻まれる。ボーカル、ドラムと重なって世界が明らかにされていくのですが、その組み立てが意思的で快適です。 そういえば私はこの曲をネタに、カラオケビデオを一本編集したことがあります。 仕事場のきれいどころをモデルにして、鳥の海近くの海岸でロケして、青年文化センターのスタジオで歌詞を重ね、職場のパーティでの「紅白歌合戦」で歌ってもらったのですが。 あれはウケたなー・・。 こういうのをたくさん撮り重ねていこうと思っていたのですが、その後仕事が忙しくなって当時の上司を巻き込んで撮影した「愛人」を一本作って終わった。なんともとりとめもないことをしたものです。 この、 港の灯り冴えはじめる同じ場所に立つけれど・・ という歌詞が凄い!と思っています。 後世の人が聴いたとき、 すりきれたカセットの・・ って何?と思うでしょうね。 ○Flying Messengerと人魚姫の夢 アルバム「そしてもう一度夢見るだろう」から。 私のこのアルバムの印象は「懐石料理」でした。 どの曲も贅沢に材料を使って丹念に料理されている一方、ガツンとくる一品がないから。 Cowgirl Dreamin'あたりから、引き出しの不足感が顕在化している感がありましたが、このアルバムでは逆に復活した引き出しの多さがオール佳作化というかオール6番打者化に繋がっているようにも思えてしまいました。 そのなかではまず、Flying Messengerが気に入りました。 このアルバムの曲は昔の作品をいろいろ透かし模様に使ってありますが、この曲では、私は「魔法の鏡」と「時をかける少女」を思い出しました。 このキーボのイントロ、ヘビメタのブラックサバス"You Won't Change Me"にちょっと似ていてニヤッとしてしまうんだなあ。 は~ああああ~のコーラン風のコーラスはよい味つけでジャストフィットしている。 リズムが惜しい。 シンセのスッチャーカチャッチャッというリズムが、好かないのです。 どうにもせわしく煩く感じるのは私だけでしょうか。 ユーミンの曲って、こういうの多いよね。なんでこういうリズム使っちゃうのかなー。 最後はぷっつりと終わるがここはユーライア・ヒープのJURY MORNINGのようにテーマが悪夢風に繰り返されたらどうでしょう。いっそ、プログレにしちゃう。でもここで寸止めするのが余韻をもたせるワザなのかもしれません。 しかしやはりこのアルバムのハイライトはベタで悔しいですが「人魚姫の夢」なんでしょうね。イントロは「金曜サスペンス劇場」といった趣。 サビがとても魅力的で、私の頭の中でくりかえし鳴っている時期があったのですが、脳内のビジュアル的には氷に張り付いた肖像画が口だけ動かして歌ってました(ちょっと不気味)。 静かでオーロラのようなひだを感じるコーラスも実にこびりつきます。 「悲しい夢だったと」というフレーズが泣かせます。 ○潮風にちぎれて 1977年シングルカット、リアルタイムで何百回聴いたかわからないぐらい好きだった曲。 今聴いてもあーいうことも、こういうことも、と芋蔓式に思い出されてきて収拾がつかなくなります。こう生きればよかった、みたいなところまでも。 Youtubeでどうぞ 潮風にちぎれて 歌詞が歌詞なので、録音して、彼女とのドライブにでも聴いてください・・といえないのが残念です。 当時「ALBUM」という阿漕な商業魂から生まれた半端なベスト盤に入れられていたので、CD化もされず、こっちに入るまでは日の目をみませんでした。 サウンドについて小うるさくコメントするような作品ではありませんが、ただ、ドラムのリムショットが2泊ごとに入るのがちと耳障りです。 ○航海日誌 爽やかで、軽妙で、澄んでいて、描写が細かくてという「荒井由実」時代の佳曲です。 なぜかこの人のこの頃の「海」をテーマにした曲を聴くと、三島由紀夫の「午後の曳航」を思い出すのですが、あれはこの曲をBGMに読むには不吉すぎる話でした。 この曲を一人ドライブしながら聴くときは、私は一オクターブ下げて歌います。 とんでもない低音になって、頭蓋全体が振動するので、脳をここちよく刺激してくれます。空海の「求聞持聡明法」みたいな効果がないものだろうか、とひそかに期待するのですが、これもこの曲には似つかわしくない話題でありましょう。 この「航海日誌」で検索すると、上位に「航海日誌の書き方」とか「航海士便り」とか「艦長ブログ」とか肘毛の濃さそうなサイトが並んで笑ってしまいました。 この曲は四の五の言わず、このリラクゼーション映像でまったりしていただくのが最善かと。 You tube でどうぞ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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