|
カテゴリ:遠刈田・鎌先・小原温泉(宮城)
さて、峩々温泉は残念ながら日帰りは狭い内湯のみ。
ここの露天はやっていたり、やっていなかったり。 露天があるときだと1000円、今日は500円。 日帰り用のロビーには誰もいず、帰りに宿泊用フロントで料金を置いていく仕組みである。 内湯は3人も入ると接近感がつのる狭いもので、ただ天井から浴槽まですべて木でできている素朴さはなんともいえない。 こういう悪天候の中だったので、相客は初老の男性一人だけ。 なかなか知的で上品な客だなあと思っていると、 「ここはこのお風呂だけなんですかねえ」と話しかけられた。 「廊下の突き当たりに露天への入り口があるんですが、閉鎖されていましたねえ」 「秘湯だというから、大きい露天風呂があるかと期待して来たのですがね・・」 「遠くからこられたのですか」 この初老の男性は、どうやら京都大学の、医学部あたりの教授(あるいは名誉教授)らしい。仙台の近辺を旅行するようになったのは、友人に東北大医学部の先生がいて、そこに行き来しているうちに東北の温泉に嵌ったようである。 話のはしばしに、「そのへんの定年一眼レフおやじではないんですよ私は」という矜持がみてとれる。 でも、イヤミはない。 「ここに来る前は、どのあたりに泊まられたのですか」 「高湯温泉の「卵湯」その前は鳴子ホテルです」 「強い泉質のところばかり泊まられましたねえ・・。」 「ここも、広い露天風呂に入りたかったなあ・・」 その後、遠刈田温泉「だいこんの花」や花巻温泉「佳松園」、秋保温泉「宗園」など、この相客の口から東北の一流温泉旅館の名前が次々と出てくるのに舌を巻いた。 相手も、どこどこ温泉の・・えっと・・と言っていると、かぶせるように私から旅館名を当てられるので、誰だ?この男はという風に思ったのではないか。 この客は、たとえば松島なら「松庵」に泊まるのではないか。そんなふうに見当がつくのだ。東山の・・「向瀧!」ピンポーン、みたいな。 通常、一泊あたり4万円までの予算で泊まるようだ。 「4万円は凄い。でも今は2万も出せばかなり満足度の高いところに泊まれますよね」 「そうそう、だいたい1万5000円以上で上等になってくるようです」 私もまったく同じ見解である。 「京都の周りではあまり温泉といってもイメージがないですが」 「あっても、千メートル以上ボーリングして沸かせた単純泉ばかりです」 「有馬も、行ったことはありますが、循環と塩素投入が酷いですね」 「そうなんです、温泉の効能がなくなってしまう。あと、京都近郊であるのはラジウム泉ばかりです」 「温泉の効能」については、私は言葉を慎重に選んだ。 ドクター相手である。似非科学をひけらかしたカタチにならないよう配意した。 「ラジウム泉は、入浴感に特徴が出るわけではないですからね」 「湯気を吸入することで効果はあるのですがね」 うーむ、こんな場所でこんな固有名詞つきの温泉談義ができるとは思わなんだ。 東北にとっても、超・上客ではなかろうか。 「空港で、レンタカーを借りたのですか」 「妻と二人で回っているんですが、こういう旅はカローラで十分ですね。京都では、普段は・・」 「レクサスですか・・」と口から出かかったが、 「クラウンに乗っているのですが」 私の洞察がたりなかった。もっと押さえが利いている人であった。 「レジェンド」だったら感激したろう。 それにしても、こんな山間の一軒宿で車の話にまでなるとは、なんという天の配剤か。 これだけの客を、この狭い内湯に不満をもたせたまま飛行機に乗せていいのだろうか・・。 この宿に顔が利いたら、交渉してこの夫婦だけでも広い露天風呂に入れてあげるのだがなあと・・私は残念だった。 「遠刈田温泉では、神の湯ではなく、まわりの小さい温泉宿の内湯に入ったほうが落ち着きますよ」 とアドバイスしたら、 「去年、「大忠」の風呂に入ってきましたよ」 という答えが返ってきた・・・。 筋金入りだ・・。 /////////////////// 2万円も出せば、いい宿が・・といわれて頭に浮かんだのはここ 別邸 山風木 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[遠刈田・鎌先・小原温泉(宮城)] カテゴリの最新記事
|