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仙台から瀬見まで車でおよそ2時間、そろそろ疲れが出てくる体に軽くむちを当て、一路羽根沢温泉を目指す。どちらかというと平坦な、ときおり味わい深い集落を通過しながら走る。
目的地は、湯、料理、接客などに定評のある「松葉荘」。 松葉荘外観1 posted by (C)オフミ 5年ほど前に隣の加登屋さんに一泊したことがあり、もっぱら料理がふんだんに供されたことが印象にある。温泉街には、今や旅館は三軒のこったきりで、歓迎札は松葉荘が一番多い。新庄と仙台からの客で占められる。 玄関ロビーは無人で、しばらく誰も出てこなかったのでソファに掛けてしばし待つ。どうも家族だけ仙台で切り盛りしているようで、チェックイン時は込み合うのだろう。 ご主人が現れ、「3階で申し訳ありませんが・・」と 案内してくれる。 ネットでこの宿を紹介する人たちが必ず言及するのが、部屋の広さだ。 201504松葉荘02 posted by (C)オフミ たいていの部屋では、ふた部屋の仕切りを抜いて一部屋に改装してあり、これも時代の個人客へのシフトに対応してのことだったろう。 「寒いですので、おふとんは厚手のものになっています」明るく朗らかな感じの女将が言う。 なるほど、だいぶ上等な布団だ。シーツもウールの厚手なのが普通と違う。 「この窓の外のモミの木がいいですね」 「これはモミっていうんですか、私がここに嫁いできたときからありました」 この宿だけは3階だけが眺望が効くのではないだろうか。まだ広葉樹の木々は葉の満ちるのを待っているが、それでもところどころで豊かな表情を持つ山々を眺められるのは良い。 館内や室内は基本的に古い躯体が殺伐とした感じを与えないよう、ところどころリフォームしたり、インテリアの工夫をしたりして努力の跡がみられる。部屋の壁などは張り替えたばかりだろう。できるところからこつこつと手直ししているに違いない。私はこうした宿が好きだ。 風呂は男女交代制で、夜までは男は狭いほうだったので、外のスリッパをみながら空いているときを見計らって入った。それでも相客がいた。私より4,5つ年配のおやじさんだ。 何度も体に湯をかけてから、おずおずと体を沈める。熱い・・とろとろだ・・この感じ、なんだろうと思った。そうだ、濃厚ブイヨンのような感触だ。ブイヨンに仮に体を浸したらこういう感触になりはすまいか。 「今日はそれほど熱くないな」 相客が呟いて、話が始まった。 新庄から夫婦でこられた。月に一度は一緒に温泉めぐりをしているが、ここはあまりに近くてそう頻繁には来ないという。肘折においしいそば屋があるという。「寿屋」というらしい。 夕食は楽しみにしていたのだが、期待を裏切らなかった。 松葉荘夕食1 posted by (C)オフミ 牛の陶板焼きをメインに、天ぷら盛り合わせ、馬刺し、山菜の煮物、こごみ、そば(鴨のつけ汁)あゆの塩焼きなど。とくに美味だったのは、ヒラメのカルパッチョ風地元の野菜あえ(←勝手につけた名前)。 松葉荘夕食2 posted by (C)オフミ ご主人が説明してくれたのだが、活きのいいヒラメに地元の生野菜を載せ、青いトマトをベースにしたドレッシングをかける。これは新鮮な味わいだった。 なるほど、山深い宿で刺身の盛り合わせなどは無粋だが、こういう出し方をすれば楽しめる。ヒラメのぷりぷりした淡泊な身と、野菜の苦みがよく馴染む。 ご飯まではとても胃が収容できず女将さんにギブアップすると、「では夜食用に・・」とちいさいお握りにして下さった。 夜は「ふかふか布団」のお陰でよく眠れた。5時起床。目ざましにひと風呂・・と思いきやすでに二組のスリッパが並んでいる。宿泊者の年齢層が高いことを示しているな。しばし茶を飲み、出直してみると、今度は貸し切り状態だった。 松葉荘風呂 posted by (C)オフミ 男女入れ替わり、広いほうに入った。これは断然広い。そしてやっぱり、広いほうが気持ちいい!湯の良さはまったく感動もので、とろみ度では日本の最強レベルではあるまいか。肘折のあの色や金気臭も捨てがたいが、この湯はクセになる。 前回同様、周囲を散策。早朝の林道はとても心地よい。宿の裏手には人家はないが田畑が続く。近くから通いで農作業をしているのだろう。土手に開いてしまったふきのとうが目立つ。後で女将さんに聞くと、「このあたりでは誰も取らないんですよ」と笑っていた。 山肌を見ながら歩いていてハッとした。屋根が崩れ落ちたロッジ風の建物の正面に、いかにもゲレンデになりそうな開かれた斜面がある。左右に投光機も残っている。 昨夜風呂で相客になったおやじさんが、「昔、ここにもスキー場があったんだよねえ」と語っていたが、ここだったのか・・。ここが多くの若い男女でにぎわっていた様子を想像しようとするが、どうしてもできない。 散策の後の朝食も、大変うまかった。小さいお盆に小鉢が並ぶスタイルは、とても気が利いている。どの鉢も、味付けがよい。とくにゼンマイの煮物は、これ一品で十分ご飯が進む。 松葉荘朝食 posted by (C)オフミ シャケが大きすぎないのもいいが、昨日腹いっぱいで無理して食べたキングサーモンが、ここに回っていればな、とも思った。 帰りしな、注文していたマイタケを2箱受け取ったが、あまりのキノコの立派さ、量の多さに唖然。 温泉街の見事な肘折に比べ、どうしても地味な存在の羽根沢だが、こういう素晴らしい宿があるということを一度多くの人に体験していただきたいと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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