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社長室 業務日誌

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2005/03/24
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カテゴリ:カテゴリ未分類


昔、ある案件で、交渉に携わった。

A社と、B社、2社を同時に相手した。

―――――――――――――

A社の交渉担当者は、メチャメチャ頭の回転がよく、
切れ味もバツグン。
論旨明快、声も高らかにキッチリ主張してくる。
正直、この人はスゴイ・・・と脱帽する人だった。

でも、僕は、その人と、二度と仕事したくないと思った。
僕は、できる人になっても、あんな風にはなりたくないと思った。
僕以外のメンバーも、そう思っていたらしい。

自分のことしか、考えてくれなかったからだ。
この人は、自分の企業を守りたい一心だったんだろう。
会社を代表して、出てきているのだから、当然だと思う。

でも、僕達だって、譲れない部分がある。

日本有数の企業だけど、
あまり人気がなくて、味方が少ないイメージの企業。

でも、ホントに実力ある人が多いことで有名で、
その交渉担当者も、実力があった。
なんだか、交渉自体を楽しんでいる雰囲気があった。
ディベートという、知的な格闘技を楽しんでいる様子だった。

この人は、味方にしたら、頼もしいのかもなあ・・・と
一瞬、思った。

けど、やっぱり、
「この次は、この人達と一緒にやりたくない」
と思った。

また、こんな風に自分のことばかり主張されるのは、
イヤだったからだ。

実際、その後のco-workは一切、ない。

―――――――――――――

同時に、相手方としてもう1社、B社がいた。

こっちは、結構、甘アマだった。
会社としても、ノホホンとしていて、
いいやつが多い会社、そんなイメージ。

でも、担当者はシッカリした人だった。
反論はするが、その論拠もしっかりしていた。

自分のことばかり主張しなかった。

もつれた糸を、ほぐすには、どうしたらいいか。
そんな中立的な視野からの意見を、何度も出してくれていた。

結果的に、条件交渉は、このB社は割を食うことになった。
A社が、結構、持っていっちゃったからだ。

でも、僕達は、そのB社をすごく尊敬した。
紳士だと思った。
中立的な視野で物事を捉えること。
このディールを成立させる=関係者全員が幸せになる、
その意識を持っている人だったからだ。

この次も、このB社とはビジネスしたいと思った。

そして、いまでも、B社とは多くのビジネスをしている。

―――――――――――――

A社、B社、どっちが勝ちだろうか? 
A社、B社、どっちが幸せだろうか? 

―――――――――――――

僕達は、どんな交渉をすべきだろうか? 
交渉で何を勝ち得るべきだろうか? 

以下のように、と言い切ってしまってもいい、と僕は思う。

「この次も、この人達と仕事をしたい」
と思わせるためだと。

相手に、
僕達の実力・思想・スタンス・生き様・男気・優しさ、
そういった”僕達”を認めさせることだと。

こんなに”僕達”を見せつけられる、いい機会はない。

交渉という機会をおいて、他にない。

ヒザを突き合わせて、何時間も、何日も、
お互いのことだけを考える時間。

恋が芽生えやすい環境に似ている。

だからこそ、かもしれないが、
僕達に”惚れさせる”ための機会、としか思えない。

―――――――――――――

お互いに譲れない部分が重なったとき、こそがポイントだ。
そして、その溝が大きければ、大きいときほど、そうだ。

相手に、最大限、譲歩すれば、それでいいのではない。

譲歩の量、それ自体に本質があるのではない。
譲歩の仕方に、本質がある。

甘やかせば、いいというのではない。
それでは、「敬意」が生まれない。

相手に譲ればいい、ということでもない。
自分が損ばかりしたら、この幸せは続かない。
2人が幸せにならないと、続かないのだ。

だから、2人ともが同じ程度、幸せになる必要がある。
もしくは、同じ程度の痛みを分かち合う必要がある。
じゃないと、続かないのだ。

―――――――――――――

どうやって、目の前にある、この2人の溝を埋めていくのか。

そのときにこそ、相手の本質、生き様が透けて見える。

こいつは、今まで、こんな風に仕事をしてきたんだな、って、
そいつの歴史・生き様が透けて見える。

・こっちは譲らなくて、相手に完全に譲歩させるか。
・単純に、エイヤで線を引いて、落とし所を見つけるか。
・問題を切り分けて、細分化し、
 さらにお互いに譲り合える部分をみいだしていくか。
・ギリギリ詰めるか。一緒に考えるか。
・横からダメなら、上から攻めるか。

もう、何日も、何時間も交渉している。
正直、ノイローゼになりそうになる。
そんなとき、人は、感情を露にさらけ出しやすくなる。

にもかかわらず、
真剣に相手の幸せも考えつづけられる人もいる。

僕達は、そうでなければ、ならない。

相手が、できなければ、できないほど。
その分も埋め合わせるほど、
相手のことを慮ってやらなければならない。

―――――――――――――

「この人達は、本当にビジネスマンだ。甘くない」

「かといって、自分のことばかり主張しない。
 両社、お互いが幸せになるために、
 真剣に脳みそを絞ってくれている」

「この人達と、やる限り。私達も幸せになれる」

「何が起こっても、この人達となら、解決できないことはない」

「何が起こっても、この人達と対話を継続しよう」

――――――――――――

そう思われたい。

そんな風に思ってもらえたら、
相手は、きっと、永続的なビジネスパートナーとなってくれる。

そう思ってもらえた真剣な交渉の場の数だけ、
たくさんのハードな交渉の数だけ、
僕達が、何か、本当に大きな仕事をするとき。
きっと、味方になってくれる人、企業の数になるんだろう。

その味方の数こそが、幸せのバロメータなのかもしれない。

その数こそが、本当の企業価値、なのかもしれない。

以上







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Last updated  2005/03/25 01:53:24 AM
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