社長室　業務日誌

懐かしいメモが見つかった。2003年4月13日。
前の会社を退社するときに残した言葉だ。

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新人へ。そして、俺自身へ。

・投資、つまり未来は制御不能。不確実な世界。
　何が、誰が、いつ勝つかわからない。
　そう、不確実なんだ、と理解しろ。

・不確実だからこそ、勝ち続ける奴もいない。
　負けた奴が来年勝つかもしれない。

・不確実だからこそ、多くの仲間がいる。
　君が勝てば、誰か負ける。
　しかし、その勝ち分で全体で勝つんだ。
　だから、君の隣の仲間を尊重し、援護しろ。
　君が勝負すべきなのは唯一、マーケットだ。
　それ以外は、全て仲間だ。大切にしろ。

・不確実だからこそ、
　相手や仲間、出資者に対する謙虚さ、尊敬、感謝を忘れるな。
　慢るな、卑屈になるな。
　現在、優秀でなかったり、裕福でない相手も切るな。
　その人の成長・未来を待て。

・不確実だからこそ、正解がない。
　だから、根拠のない恐れ、盲信を捨てろ。
　平常心で仮説を検証し、ストーリーを主張しろ。

・正解がない。
　だから、あるストーリーに基づき、
　不確実に立ち向かう経営者・仲間（投資家）には誠意・尊敬をもって対峙しろ。
　その上で質問・議論しろ。
　その問いかけは、
　「本当に賭けて悔いを残さないか。そこまで考えたか」
　それのみを問い詰めるものでなければならない。
　相手の意志・選択を尊重する心で満たされていなければならない。
　君には、否定・肯定する権利などない。
　だって、正解はないのだから。

・不確実だからこそ、
　唯一、己自身がコントロールできることを見極めろ。
　＝つまり「今」の努力によって、過程の制御を通じ、
　　不確実はmanage可能だからだ。
　　controlではない。あるレンジでのmanageのみが可能だ。
　1件の投資のために20件検討しろ。
　20件検討するために100件会え。
　100件会うために500件電話しろ。

・不確実だからこそ、「愛」「友情」を大切にしろ。
　この２つは不確実じゃないからだ。

　君が大切にしたとしても、必ず、確実に相手は答えるわけじゃない。
　しかし、大切にしている「自分」は確実に存在している。
　相手・対峙するマーケットがどう変わろうが、「自分」は変わらない。
　絶対に変わらない。

　そこに、自分は確実に存在している。

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どうして、こんな言葉を残したんだろう。

仲間を尊敬しなくなった、その環境に忸怩たる思いを感じていたからだ。

当時の会社は、誰と、何と勝負しているのか、
見失っている組織に陥っていたと思う。
弱いものイジメばっかりし始めた。

ほんの数年でここまで悪くなるなんて。
組織に巣食う病気は恐ろしい。

母親がガンになって、その進行スピードに驚いたのと、
似た驚きに似ていた記憶がある。

とても哀しかった。
とっても大好きだったのに。
どうして病気になっちゃうんだろう。

僕が社長だったら、部下や仲間をそんな病気に絶対しないのに。

平社員の僕の力では助けてあげることができない、
その無力感に吐気を催し、
また、逃亡者の形となる自分を激しく嫌悪した。
仲間を捨てるのかと。

でも、僕は自分をとった。
感染しそうだと思った。
自分を死なせたくなかった。

こんな言葉を残した所で、何かが変わるとは思っていなかった。
でも、ただ、伝えたかった。

そう、何も期待しないで、ただ、伝えたかった。

あのときの無力感、あれはもう味わいたくないな。

以上