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社長室 業務日誌

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2005/08/19
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カテゴリ:カテゴリ未分類

事業計画とは、何か。

事業計画に投資するのではない。
それを書いた、その人に投資するのである。
それに関わる、その人達に投資するのである。

――――――――――――――

前の会社の、審査部長に言われたことがある。

それまで審査部は敵だと思って大嫌いだった。
わけわかんない質問ばっかして、経営者を不愉快にするような奴らだ、
と思って大嫌いだった。

けど、それから尊敬するようになったし、勉強するようになった。

どうして審査を通してくれないんだ、将来はわからないじゃないか。
市場は良し、経営者の経歴も申し分ない。
やってみなきゃ、わからない。
なんで、そんなNOとか言い切れるんだ、
と噛みついた僕に。

彼は言った。

「君は若いから、一度だけ言おう。
 年をとった担当者(投資部員)には、絶対に言わないけど。

 事業計画上の、将来の数字には、意味はない。
 その数字をつくった背景、人間に、意味がある。

 なぜ、それをつくったのか? 
 どんな生い立ちを経て、それをつくるに至ったのか? 

 そして、数字そのものや、質問への回答内容そのものには、意味はない。
 その理由、思考パターン、回答の仕方に、意味がある。

 その表情、口調、感情、手の動き、心の動き、空気の流れ。

 将来のことだから、本当に意味がない質問なんだ。そんなのわかってる。

 でも、質問をされて怒るような奴は、
 きっと将来、本当に問題が起こったときにも、僕達投資家を敵だと思うだろう。
 そんなときこそ、手を離しちゃいけないのに。向こうから手を離す奴なんだ。

 将来を不安に思う人間、従業員、お取引先、投資家。
 それらのことに気を回せない人間は、偉大なる経営者になれない。
 僕達は、それを見抜くべきなのだ。

 僕達は、経営者を全て応援すればいいのではない。
 偉大なる経営者になる人だけを応援する。
 だって、大切なおカネには、限りがあるのだから。

 そして、もし現在はそうではないが、可能性を秘めた経営者ならば。
 偉大なる経営者になるよう、叱咤激励する必要がある。

 でも、審査部は、案件が成立したら、もうその経営者には会わない。
 叱咤激励することができない。

 でも、君達担当者は、ずっと接するんだろう。
 君が、責任を持って、あの社長を叱咤激励すると約束するのならば、
 この案件を通してもいい。

 それは、ある意味、担当者である君までを含めて、投資案件と捉えて、
 リスク判断、可能性への投資判断をしている、と言えるのかもしれないね。

 残念だが、今日の経営者と、今日の君には投資できない。
 どちらも哀しいほどにユルすぎる。真剣じゃない。すぐに投げる。

 今日の経営者を、今日の君が御せるとは思えない。

 今日の経営者に投資できるとすれば。
 君がしっかりしているのが条件だったろう。

 君自身が、もっと事業計画を完璧に理解し、議論できるようになって欲しい。
 もっと責任感を持って欲しい。もっとコミットメントして欲しい。

 そんな君が、よし、と思う案件だけを、持ってきて欲しい。

 そしたら、僕達審査部員など、もはや要らないんだ。

 君が担当する、ということで、全てOKにしてもよい、
 そんな投資部員になって欲しい」

と。

審査部員に信用されて、リスキーな案件に挑戦する投資部員、既に何人かいた。
そして、その何人かは、審査部員の信用に応えていたと思う。

仮に失敗したとしても、挑戦できた人間となったわけだ。
挑戦すらできなかった人間よりも、根性と実力と、そして経験が身についた。
どんどん差がついていったように思う。

ただ、エコヒイキされてるのかと思っていたけど、
そのビジネスに関わる人間の思いを読み取り、きちんと応えていた、からなんだ。

投資ビジネスや社内政治といえども、
人間が関わるビジネスなんだな、って、今、振り返るとよくわかる。

―――――――――――――――――

もし、おカネを投資してもらったのなら、ぜひ、知っておいて欲しい。

そのおカネには、とてつもない期待や不安が入り混じった気持が、
投資した側からは、込められている。

本当は、自分だって、起業家になって頑張りたい。
担当者となって、ずっと支えたい。
でも、いろんな理由で、僕はやらない。できない。
だから、目の前のあなたに、期待している。

あの堅物の、金融機関の審査部員だって、
マスクの下では、そんな風に思っている。

おまえだから、投資したんだぜ、と、思っている人の、
なんと多いことか。

その存在や、期待や気持を忘れないで欲しい。
いつの日か、応えて欲しい。

そんなことを心に留めてくれる、
そんな経営者が多くなったらいいなあ、と思う。

以上






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Last updated  2005/08/21 02:13:34 AM
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