20050827金融サービス事業者として(3)
僕達は、小さな証券会社だ。そんな僕達が、もっと大きくなっていくにはどうしたらいいのだろうか? 僕達は、どうせ、大企業のボンド発行を任せてもらえない。それに、そんな商品、僕達のアカウントに口座を持つ個人投資家には売れないだろう。投資銀行だから、大口機関にはめ込んでいくのは当然のことながら、僕達の強みを活かした、なんらかの戦略を編み出していかないと、いかんだろう。顧客(資金調達主体=資金不足主体)は誰か? その顧客が取り組む事業(製品・サービス)は何か? その製品・サービスで満たされるんは誰か? 資金調達のために用いる金融技術は何か? どの程度のリスク・リターン設計に仕上げるのか? 何のリスクを抑制するのか? 今まで抑制され得なかったのはなぜか? 一発商品で終わらず、継続的に資金需要が見込めるか?(開発した技術・ノウハウを転用できるか?)欲しがる顧客(資金余剰主体)は誰か? どの程度のリスク・リターン設計の商品を欲しがっているのか? なぜ、それを欲しがるのか? (どういうポートフォリオとなっており、何を埋めたいのか?)―――――――――――『金融イノベーター群像』(久原正治 著)シグマベイスキャピタル刊新しい金融サービス・金融商品、つまり金融イノベーションが起こった、そのとき。それは、つまり、新しい成長産業が出てきたとき、というのだ。従来型の金融技術では満たせない、急成長の新産業と、常に高利回り運用商品を探している機関投資家。そして、両者をつなぐ金融事業者。資金不足主体(イノベーター)と、金融事業者(イノベーター)。産業は、担い手だけでは生まれない。資金があって初めて生まれる。担い手としてのイノベーターと、金融技術のイノベーター。つまり、イノベーター同士が手を組んだ、という。―――――――――――米国の具体例としては、シリコンバレー、IT産業の勃興(資金不足) ↓ ↑ベンチャーキャピタル・ファンド(Kleiner, Perkins, Caufield & Byers等) ↓ ↑機関投資家(資金余剰)M&A、LBOによる企業再生(資金不足) ↓ ↑LBOファンド(KKR等) ↓ ↑ハイイールド債(ジャンク債)(Drexell Burnham等) ↓ ↑機関投資家(資金余剰)低所得者層の借入ニーズ ↓ ↑サブプライム・ノンバンク(Mercury Finance Co.、Green Tree Financial Corporation等) ↓ ↑小口証券化技術(ウォール街の各証券会社) ↓ ↑機関投資家(資金余剰)―――――――――――日本だと既に、邦銀の不動産ダイベストメント・ニーズを、不動産ファンド運営ベンチャー企業が、掻っ攫っていった。すごい嗅覚だなあ、と感心せざるを得ない。次にくるのは、なんだろうか? 僕達のケースでいえば、下記2パターンが考えられる。<パターンA>資金不足主体 x1 ↓ ↑金融事業者 y ↓ ↑僕達(ネット証券会社) ↓ ↑個人投資家(資金余剰)<パターンB>資金不足主体 x2 ↓ ↑僕達(ネット証券会社) ↓ ↑何らかの金融技術 z ↓ ↑機関投資家&個人投資家(資金余剰)(今後のTo Do)・x1、x2、y、zを見出していくこと なお、 Aでは「個人投資家への販路・PR能力」がカギとなり、 Bでは「新産業への嗅覚・目利き能力」がカギとなる。―――――――――――ところで、個人投資家の買いたい商品とは、小口、高い流動性、ハイ・ボラティリティ(投機性)だと、現在の所、思われている。(プライベートバンキングとなったなら、そうはならないと思うが)この点、ゴールドマンサックスが開発した『eワラント』や、為替証拠金取引は、上記、個人投資家のニーズを満たし、大流行している。提供したプレイヤーとしても、十分なサイズの”金融商品ビジネス”として捉えることが可能、といえるだろう。しかし、これらは資金不足主体を満たしていない。つまり、eワラントや、為替証拠金取引の誕生のおかげで、急成長した実際の産業はない、ということだ。これはこれでいいのだが、金融イノベーションが、新産業の後押しとなった、というようなことになったら、金融マンとしては、生まれてきた甲斐があった、というものだ。以上