カテゴリ:ワイン
8月10日付けの朝日新聞のシリーズ記事「週間アジア」に、シンガポールの流行前線として最新ワイン事情が掲載されていました。今日はその話を Rokku なりに咀嚼してお話したいと思います。
シンガポールといえば、最近景気がいいので有名ですよね。記事によると、アジアの金融危機がほぼ終焉を告げた2000年頃から、シンガポールは国民の所得が上がって、それとともにワインが飲まれるようになったのだそうです。ご多分にもれず、オーストラリアやチリの安いワインが始まりだとかで、国民所得の上昇とともに海外経験をした人々が増え、そのときの習慣をシンガポールに持ち込んで、ワインを飲むようになったといいます。ですから、事情は日本とほぼ同じですね。 2000年頃までは稀だったんですって、ワインを飲むというのは。ウィスキーやブランデーを飲んでいたというのですから、本当に昔の日本と同じです。 Rokku の一家とケイトの兄ちゃん一家が連れ立ってシンガポールへ行ったのはいつのことだったでしょうか。ダンが5年生ぐらいだったような気がするから、ちょうどその頃かもしれませんね。ほとんど何の期待も感慨もなく、ただ「行く」というからついて行った気分だった Rokku は、そのときに、日本の夏が南国とほとんど変わらないかそれ以上の酷暑であること、南国とは梅雨の蒸し暑さに通じるものがあること、オーチャード通りはアジアとイギリスがごちゃ混ぜになったような、散策するには面白い通りであること、などを感じました。 そして、よく知らない観光客にとっては、意外に中華料理が美味しくないことが印象的でした。ほとんど期待していなかった Rokku の唯一の楽しみは、「食べる」ことだったのですが、よその国のチャイナ・タウンの雑多な雰囲気と美味しい中華料理と違って、それはほとんど観光客用の料理でしかありませんでした。このことを書いていて、海岸沿いの野外レストランで食べた鍋風の料理のときは、どこかのガツガツした一家と同席になって、自分たちが損しないで食べることしか考えていない人たち(もちろん日本人です)の浅ましさを見て、うんざりしたことを思い出しました。その印象もいくらか重なっていますが、それにしても、あんなものは食べたくありません、もう二度と。 パック旅行ですから、多分、連れて行かれたところがそういう観光客用なのでしょうね。ですから、この一回の経験だけで一般化するのは無理がありますけど、それにしても、子供たちが寝静まってから大人四人でホテルにあるレストランで食べた西洋風アジア料理(あるいはアジア風西洋料理?)の美味しさに比べると、中華料理はまったく冴えを見せませんでしたね。とにかく、Rokku にはそれがすごく意外だったことを思い出します。 そういえば、このとき、オーバーブッキングのおかげで、Rokku たちはなんと!シンガポール航空のビジネス・クラスでシンガポールに来たのでした。いやあ、その料理の美味しかったこと! そして、帰りのエコノミーの窮屈なこと。もう、飛行機なんか乗りたくない!と思ったほどです。 さて、話を戻して、シンガポール航空のビジネス・クラスですが、その料理とホテル(イギリス系)の料理の美味しさは一脈通じるものがありました。 英語もよく通じました。当たり前のことですが。しかし、もっと印象的だったのは、それにもかかわらず、一歩踏み込むとそこはまごうことなきアジアというか、中国文化圏だったことです。シンガポール滞在の最後の夜に、人力車みたいなもの(すみません、細かいこと覚えていません)に乗って中国人街を案内してもらうツアーがあって、参加しました。面白かったです。だって、それまでの表面的には西洋風のアジアの観光地が一変して、突然、地層に深く根を張る中国文化を見たからです。 ここで食べれば中華料理はきっと美味しかったでしょう。でも、そこは、ちょっと中国人でなければ入りにくい、よそ者が足を踏み入れることを徹底的に嫌う排他性を色濃く持った空間のように見えました。その一画のツアーが終わると、Rokku たちは、また観光客にお馴染みの、いつもの界隈へと帰って行ったのですが、そこに帰ってみると、あれが同じシンガポールなのかと思わせるほど、その中国人街は異質な空間でした。 そして、その中国人街から考えると、ビジネス・クラスの料理も、ホテルのレストランの西洋風アジアン料理も、オーチャード通りを通じて見るシンガポールは、まるで夢で見る幻かのような気がするのでした。 さて、話は唐突に新聞の記事に戻ります。実は、そのビジネス・クラスで飲んだワインが美味しかったのですよ。細かい銘柄はまったく覚えていませんが、シャンパンも白も赤も、とても上質だった記憶があります。ところが、シンガポールのホテルではビールを飲んだのです。思い返してみても、シンガポールでワインという感じはまったくなかったような気がします。 それがどうも、最近では事情が変わりつつあるらしいのですね、記事によると。 日本だって、日本酒という特殊事情は措くとして、つい最近まで、洋酒といえばウィスキーやブランデーであって、ワインを飲む人というのはかなり限られていました。 酒の嗜好、とりわけ洋酒受容に関しても、アジア的、漢語文化圏的な特徴というのはあったのかもしれませんね。朝日の記事が示唆するのは、それがシンガポールにおいて壊れてきたということですから、いよいよかの国も芯から西洋的になるのかもしれません、ひょっとしたら。 いや、それは西洋的ということではなくて、意外にも日本的になるということなのかもしれません。もちろん、それは日本語文化圏という意味ではありませんよ。ナショナリスティックに誤解されると困るのですが、日本の現在と共通するプラットフォームを持つようになる、そういう意味です。 その記事にも少しほのめかされていましたが、何というか、「豊かになった」ことを実感させるアイテムの流行、そしてその定着、という感じです。 だから、写真にもあったように(お見せできませんが)、若い人に定着しつつあるのでしょうね、シンガポールのワイン受容も、当然。こうなると俄然、あの中国人街が気になります。あれも長くないかもしれないという気がしてきました。なくなってしまう前に、見ておいたほうがよさそうです。珍しく興味がわいてきました、旅行に。シンガポール版「ディスカヴァー・ジャパン」。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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