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Professor Rokku のワインの日々

Professor Rokku のワインの日々

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Mar 3, 2008
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 この前の「母のその後」の続きです。
 母は去年の晩秋に左大腿部を骨折して入院しました。エクスカーションに出かけて、滑って転んだらしいのです。もう90歳になるので、心配でした。普通、高齢者は転んで骨折すると、寝たきりになるそうですね。そうなるんじゃないかと心配したのです。
 でも、杞憂だったみたいで、術後はとても快調でした。あまりの快調ぶりに、認知症も治るのではないかと錯覚したくなるほどでした。おかげでお正月は我が家で久しぶりの一家団欒を少しだけ味わってもらえました。

 ところが、それは束の間の喜びだったようです。まもなく母はまた転び、今度は本当に大腿部を骨折してしまいました。後で聞いたのですが、前の入院時は、骨折していたのではなかったらしく、後転ばないようにするのが大事だったのだそうです。Rokkuたちはそんなこと聞いてないので、ただのぬか喜びをしていたことになります。
 今度はさすがにダメでした。病院に会いに行っても、ボーッとしているだけで、ご飯すらまともに食べられません。だいたい覇気がありません。そういえば、盛んに「もうダメだ、もうダメだ」を繰り返していました、入院当初に。
 やっぱり、気の持ちようは大事ですね。おかげで母の認知症は相当進んでしまいました。仕方ないですけどね。おかげさまで退院しましたが、車椅子生活です。健脚だった母が歩けなくなってしまいました。

 でも、ホームに戻ってからは、次第に調子を戻しつつあります。大したもんですね。丈夫さもさることながら、女の人の芯の強さを見た思いがします。
 そこで今日のタイトルの「老後のジェンダー論」です。
 Rokkuにとっても、グループホームを見られたことはジェンダー論を構想するに当たって、本当に有益でした。特に老後の身の処し方を考えるのに、です。
 何が言いたいか、もうお分かりかもしれませんが、グループホームでそれなりに元気に過ごしていらっしゃるのはほとんどが女性なんですね。男性がほとんどいない。Rokkuの知っているところでは、一人しか男性はいなくて、しかもその一人の人が長続きしない。最初は元気に、協調的に共同生活を営んでいるように見えても、数ヶ月もすると不機嫌が目立つようになり、そのうちいなくなってしまう。もちろん細かい事情は分かりません。男性が増えるとうまくいかなくなるので、そういうこともあって、数を調整していらっしゃるのかもしれません。が、しかし、そういう事情は措くにしても、何せ男の人が長続きしないのが面白い。

 上野千鶴子の『おひとりさまの老後』(法研)という本をご存知でしょうか? Rokkuも購入予定リストには入っているのですが、まだ買ってはいません(今日やっと注文しました)。だから中身について今ちゃんとしたことは申せませんが、老後の一人暮らしについて、ジェンダー論の第一人者が、自らの生活を想定しつつ語っているであろうことは想像できます。
 新聞記事によると、老後の一人暮らしは圧倒的に男性が不利だそうですね。さもありなんです。料理は作れない、掃除はできない、近所づきあいは苦手では、老後でなくても生活は破綻し、ゴミ屋敷とまではいかないまでも、それとさほど違わない状況になるのがおちでしょう。
 グループホームを見ていると、そこにもその恐ろしい真実が口をあけて待っているような気がするのです。

 難しく言うと、これは公共性に関する認識の差異によるものだと思われます。

 男は会社における公共性しか持ち合わせていません。会社というところは、共通の利益を追求する集団ですから、そこにおける目的は一致しています。容易に一致団結することができる土壌を、その基盤にもっていると言っていいでしょう。
 基本的に言って、男の集まりはこの共通利害をもって構成されているので、同じ方向を向いて進みやすい社会です。それをホモソーシャルといいます。同一原理(価値)で構成されているというぐらいの意味です。もちろん、利害に関する意見の相違はありますよ。しかし、それはどうすれば利害が一致するかではなくて、仮に対立があったとしても、あくまで、どう行動すればその利害にとって有益かに関する対立にすぎません。

 それに対して女性の社会は、基本的にその共通利害がありません。「あーら、うちはこうよ」の世界です。この発言の裏には当然、「おたくはそうかもしれませんけど」がありますね。いちいち口に出して言うかは、Rokkuは男ですから知りませんし、「うちはこうよ」にしても、言う人はかなり押し出しの強い、ひょっとすると嫌われ者かもしれませんので、実際にどれほど、このやり取りが現実の会話に出てくるかは分かりませんが、基本的に言って、このやり取りが女性どうしの会話の基調となっているのはおそらく間違いありません。
 なぜか? これは基本的に、いくつかの家庭が集まったときのお話にその構図を持つからです。平たく言えば「井戸端会議」です。
 家庭の中は外からは覗けません。覗けないので、想像するしかありません。その家のことを知りたければ、探りを入れて、それとなく外から判断する。その方法以外にないでしょう。中にはずけずけと単刀直入に聞く人もいますが、それはあまりに粗野なやり方なので、ソフィスティケーション(洗練)がありません。洗練がないのは、エレガントでないので、女性は嫌います(男だって嫌いですけど、ね)。だから、探りを入れて、それとなく分かる範囲で想像し、解釈するのです。
 そういう意味では、女性の公共性って、ヘテロソーシャル(heterosocial)なのでしょうね。そんな言葉があるかどうかは知りませんが。

 「相手と意見が合うはずだ、合うに決まっている」から始まる男の社会性は、向こうも同じことを考えているときは有効です。でも、違うとなった時の譲歩のしかたを知っているようで知らない。どうしていいかわからない。

 家の中でも、男は同じ公共性でものごとに対処しようとします。つまり、妻に「あなたとの間で意見は合うはずだ」で話を始めるのですね。
 普通、夫婦というのは、愛情を基盤にして成り立っている共同体です。言うまでもありませんが、愛とは共同幻想です。「お互い愛しているはず」という幻想がまずあって、そのうえでお互いの条件を互いに調整して、家庭という社会活動の場を形成しているわけです。
 お金を基盤にしてもいいのですが、残念なことに、お金では共同幻想にならない。というか、誰との間でも持ちうる共同幻想だから(誰にとっても価値がある)、二人だけの共同幻想にならない。だから、お金を基盤にすると、二人の関係は簡単に破綻してしまう。
 愛情を妥協と言い換えてもいいですよ。別に恋愛である必要はないんです。惰性と言い換えてもいい。要は、家庭というのは共同幻想を基にした利害調整の場だということなんです。

 女の人は、その家庭という場が利害調整の場であることをよく知っている。井戸端会議と同じように。だってヘテロソーシャルなんですから、彼女にとっての公共性の実感は。
 ところが、男はホモソーシャルなんで、妻に自分と同じ感想、同じ意見を求めるんですね。根底のところで、意見の一致を見たいんです。
 本当のところは、奥さんが譲歩しているだけだということに気づかない生き物なんです。

 この話、面白いんですけど、キリがないから次行きますね。というわけで、この延長線でグループホームに入るときのことを考えます。
 グループホームは擬似家庭です。アットホームな空間で、そこはいかにも家庭を思わせますが、実はそこは利害調整の場です。たくさんの女の人たちがいる、ということは、そこが井戸端会議と同じ社会性を持つということです。女の人たちはそのことをよく知っています。女の人にとってグループホームとは、井戸端会議と自分の部屋だけで構成されている、実におなじみの場でしかありません。

 では男は? 
 彼は、この擬似家庭にも意見の一致する場、自分と同意見の者がいる空間を探すでしょう。そうでないと、彼にとっての家庭にならないからです。井戸端会議と自分の部屋しかないグループホームに、およそありえない夫婦の関係の場でも築かない限り、その男の人にとっての家庭はそこにないということを、それは意味します。個室の部屋では独居老人と何も変わらないのです。心安らぐことがない。
 グループホームの場が、意外にも、恋愛・痴情沙汰の修羅場と化すということを聞いたことがありますが、そういう現実には、Rokkuの言う男の公共性(その裏返しとしての家庭の公共性)の概念が関係しているのかもしれません。

 Rokkuの知っているグループホームでは、細かい事情は知らないものの、現実に男性入居者は次第にしょぼくれて、みんなに合わせられなくて、ついには消えていく運命にあるようです。今ひとりの方が入居していらっしゃいますが、誰かと喋っているのは見たことがありません。母は隣にいるのですが、もう痴呆も進んでいるものですから、容赦なく悪態をつくようです。母の悪口雑言ぶりについては申し訳ないことで、謝るしかないのですが、それにしても心配です。協調してやっていけるでしょうか、あの男の人は?
 言うまでもありませんが、その男の人は、未来のRokkuの姿でもあるのですよ。





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Last updated  Mar 3, 2008 12:24:26 PM
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釈迦楽@ いやあ・・・ 十分運動していらっしゃると思いますよ…
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