73ちゃんから夏休み明けにこんなメールをもらいました。
「また一緒に暴れましょう。」
暴れてるんでしょうか、わたしたち…。
ええ、毎月最終火曜日の夜には暴れていると言えるかもしれません。
だって、いくつかの美術館の入場がタダなんです。
無料なんです。貧乏な(あっ、失礼)日本人の女の子たち(アラフォー)5人が
ボルゲーゼ美術館前で待ち合わせです。
独身率高し。
このローマ在住女性たち相当強いですから注意…
(特に酒が入ると怪獣になる者数名)。
最終火曜日夜、さすがに無料でも、ボルゲーゼ美術館だけは
通常通り前日までの電話予約が必要ですので
お気を付け下さい。
このチームには業界で仕事しているのが数人おりますので
その辺は抜かりありません。
ボルゲーゼ美術館はもともと、
17世紀初頭にシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿によって造営された、
ボルゲーゼ一族のための屋敷でした。
ここ一帯、ヴィッラ・ボルゲーゼはボルゲーゼ家の持ち物で、
80ヘクタールの広大な庭園です
(ちなみにディズニーランドとディズニーシーを合わせたのが
100ヘクタールです)。
いくら金持ちの貴族といっても一家の庭と言うにはかなり大きいです。
シピオーネの伯父、ローマ法王パウルス5世に謁見した支倉常長も、
この館で歓待を受けたそうです。
この館は20世紀初頭に政府が買い上げ(のちにローマ市委託)、
現在では美術館として一般公開されています。
わたしたちの興味は
屋敷内の部屋で果たして落ち着いて眠れるかどうか、というところと、
馬鹿デカい離れの鳥小屋の豪華さであり、
その辺が小市民たる所以なのです。
さて、入ってすぐの玄関大広間で、
わたしたちは床のモザイク画に早速ノックアウトされます。
しかし、ボルゲーゼ美術館は2時間で追い出されるシステム。
こんなところで時間を食っているわけにはいきません。
ボルゲーゼ美術館には、いくつもの魅力的な作品があります。
アントニオ・カノーヴァのパオリーナ・ボルゲーゼ像。
ナポレオンの妹パオリーナをアフロディーテ(ヴィーナス)に見立てました。
上半身はヌードで、
手には『パリスの審判』の勝者の証、林檎を持っています。
大理石が柔らかいって分かりますか?
この作品を見ればその意味が分かります。
蜜蝋による艶出しもバッチリ効いてツルッツル、
「わたしを見て」と言わんばかりのパオリーナさん。
こちらの本に逸話が詳しいです。
なんとパオリーナさんは毎朝ロバの乳風呂に入り、
それを公開イベントとしていたそうです。
カノーヴァの前でも惜しげもなく脱いじゃったようです…。
当時のことですからかなりスキャンダルなことでしょうね…。
わたしたちギャラリーの議論は
「金持ちだったらヌードモデルになって大理石像を作ってもらうか?」。
カノーヴァ、よろしく。ジャン・ロレンツォ・ベルニーニの25歳の作品、ダヴィデ像はいい男。
イスラエルのダヴィデは戦争で
ペリシテ人の巨漢の兵士ゴリアテに立ち向かい、
石を投げて成敗したそうです。
この時のダヴィデもベルニーニくらいの年だったのでしょうか。
歯を食いしばるいい男、必見です。
続いては同じくベルニーニがダヴィデ像の少し前に作り始めた
アポロンとダフネ。
金の弓矢は出会った相手に恋する矢。
一方、鉛の弓矢が刺さってしまったら相手を嫌ってしまう。
この2本をキューピッドが放ってしまい、
金の弓矢がアポロンに、
鉛の弓矢がダフネに刺さってしまったからさあ大変。
ダフネは逃げ、アポロンは追います。
嫌がるダフネは父に懇願して、変身!
その瞬間がこの大理石像です。
ダフネは月桂樹の木になってしまうのです。
嘆き悲しんだアポロンはダフネを忘れないように、
月桂樹で冠を作り、
戦争や競技での勝者の頭に被せたそうです。
それでオリンピックのメダリストの頭には
月桂樹の冠が載せられるのですね。
ギリシア語で月桂樹のことをダフネと言います。
次の広間はまたまたベルニーニ。
アポロンとダフネの更に1年前の作品、プルトンとプロセルピナです。
プロセルピナは冥府の王プルトンに誘拐されてしまいます。
彼女を略奪しようとするプルトン、嫌がって逃れるプロセルピナ。
プロセルピナの頬には涙がつたっています。
プロセルピナの母である大地の女王ケレースの懇願で、
一年の半分だけ地上で暮らすことができるようになりました。
それで一年の半分、春と夏には地上に花が咲くのだそうです。
秋と冬はプルトンの元、冥府にいるんですね、プロセルピナちゃん…。
その他にもベルニーニの作品はたくさんあります。
子供の頃の作品、
雌山羊アマルテアにはその出来にびっくりさせられますよ!
まなさんの影響でわたしはベルニーニが好きになりましたので、
じっくりじっくり見ました。
カラヴァッジョやラファエロ、ルーベンスなどの絵もたくさんありますが、
それらについては、またの機会に書きます。
このあとわたしたち一行は暗闇のボルゲーゼ公園内を歩いて
国立近現代美術館へ。
ロッカーに荷物を預けて身軽になり、
「分っかんないねー」とか言いながら、
ヨユ~で近現代の作品を鑑賞して、
敷地内のBARで一杯やっていたら、
閉館時間の23時を過ぎてしまって、
ひえ~やばいと思って慌てて玄関に戻ったら、
完全に重たいその扉は閉められていて、
呼び鈴を必死になって探して押して、
セキュリティーにセンサーを解除させて、
中に荷物を取り戻しに入りましたとさ。
係の人々に迷惑を掛けるのはやめましょう、
うきちゃん、73ちゃん、MIMOちゃん、あさちん、Kuriemonちゃん、
そしてあたくし。