キース・ジャレット
キース・ジャレットは私の大好きなミュージシャンの一人です。そのキースのコンサートを楽しんで来ました。キース・ジャレットのピアノソロコンサートは即興で演奏される為、大変緊張します。観客に要求されるマナーはクラシック以上かもしれません。会場に入場すると掲示板には「咳をする場合はハンカチを口にあてて下さい」・・・と書いてあります。曲が終わり、キースは手を足の上に下ろすまで拍手する人もいません。彼のコンサートの評価は、聴く人それぞれの感性、精神状況、体調、集中力等によって異なるのであえてコンサートには触れませんが、ちょっとだけキース・ジャレットについて触れてみたいと思います。その彼の代表作品である「ケルンコンサート」は1975年1月24日のライブアルバムです。★ケルンコンサート★当時発売と同時にLPを購入し、以来30年が経過して今尚新鮮な気持ちで感動を与えてくれる唯一のアルバムです。聴きすぎで買い換えた唯一のアルバムでもあります。現在ではCDで聞いています。ケルン, 1975年1月24日(パート1) (これが曲名です。即興での演奏の為曲名がありません)は、ケルン(一度も行った事がありませんが)の風景が伝わってくるような、あまりにも美しいメローディを奏で、ピアノに神が宿したような響きが伝わってきます。ケルン, 1975年1月24日(パート2a)ケルン, 1975年1月24日(パート2b)ケルン, 1975年1月24日(パート2c)と続きますが、全体で組曲となっているように思えます。ケルン, 1975年1月24日(パート2b)は特に大好きでこんなにも優しく・美しい本当に心を和ませてくれるメロディーは、多くのミュージシャンの数千曲に及ぶ私の聴いた曲の中でも他にありません。このコンサートは、ケルンに着くまで大変長時間の旅で彼が大変疲れていた上、ピアノの調子もあまり良くなかったと聞いていますが、、、また、「サンベアコンサート」これも素晴らしいアルバムです。★サンベア・コンサート★ケルンコンサートの翌年1976年日本に来日したキースのライブアルバムで発売当時は10組みLPで全部聴くと7時間ぐらい、これを当時学生だった私は時々朝から聞き始めて夕方までかけて一気に聞いていました。(北海道出身の仲間が里帰りで飛行機に乗ったらキース・ジャレットが乗っていてサインを求めたら無視されたといっていましたが(笑)大変素晴らしかったと評価の高い札幌公演へ向かって入る途中のキースでした。)他には「ステアケイス」曲もさることながらジャケットが素晴らしいです。★ステアケイス★美しく時には荒々しく演奏するキース・ジャレットのピアノは、Koinuma Musicのサイトで読んだノートで紹介されていたのですが、キース・ジャレットは自宅でNYスタインウェイを使用しているそうで、1999年来日時初めてが主催者にコンサートに使用するピアノをNYスタインウェイに指定したそうですが、ハンブルグ・スタインウェイしか用意ができなかったそうです。(NYとハンブルグとでは、白鍵盤のサイズが幅にして0.4mm、長さにして2mm、黒鍵盤は真四角と台形というように形状自体に差異が存在するそうです)そこで主催者側は2台のハンブルグ・スタインウェイを用意、この2台には、単に弦の調律だけでなく、キー・バランスからハンマー・バランスに至るまで、丸一日かけて、徹底的なメンテナンスが施され、コンサート当日2台のスタインウェイをステージに上げ、朝の9時からホールの温度と湿度を開演時と同じ状態に設定しキース・ジャレットに選んでもらったそうです。けっしてキース・ジャレットがわがままというのではなく、主催者のキースに対する思い入れからだと思います。殆どの楽器は演奏者の自前を使用し、調整担当のスタッフが楽器の状態を監視し、不都合があれば予備と交換するなどの作業をしています。(この姿は日本武道館の西の席でよく見ることができますヨ!)それに対してピアノの場合は会場のピアノを使用するそうで、例え同じ形式のピアノでも個体差がある上、温度や湿度等の環境の差も音に大きく左右されるデリケートな楽器ですから、演奏者も主催者も大変ご苦労があるところだと思います。Koinuma Musicのノートの中で、キース・ジャレットは「大半のジャズ・ピアニストは、ピアノが本来持っている能力の50%しか使っていない。例えば、ペダル・アクションをちゃんとコントロールしているジャズ・ピアニストは驚くほど少ない。それからコードだ。ジャズ・ピアニストはとかく複雑なコードを弾きたがる傾向がある。音楽そのものの流れに関係ない部分で、ややこしい音を挟み込みがちだ。しかし本人がその複雑なコードを弾いているつもりでも、聴いている方はそのコードを聴き取ることが出来ない。何故だか分かるか?ピアニスト自身の技術が伴っていない、つまり指のバランスが悪いから、頭の中でイメージしている音と、実際に出てくる音が違ってしまうんだよ」と語っているそうです。大変興味ある談話を残しています。更にこのノートでは“「クラシック界の巨匠ルービンシュタインは、両手ともに5度のハーモニーを低域から高域まで、全て同じバランスで弾く練習を日課としていたという。つまり親指から小指まで、そのすべての指の筋肉量が異なるため、自ずから鍵盤を弾く力も違ってくる。それを完全に均等なバランスにして全てのキーを鳴らすというのだ。これは、一見すると単純なようだが、実は神業的なテクニックを持ってこそのトレーニングである。そして、これはキースが語る“指のバランスによって、ハーモニーが違ってくる”という姿勢と合致するではないか。」とも・・・。やはり超一流の世界は凄過ぎます。 又別のKoinuma Musicのノートでは、熊本マリ(ピアニスト)さんがキース・ジャレットをこう評価していました。「ピアノが「土」で、演奏者は、土の中で生存する、大きな「幼虫」。 だんだんと、大きく成長する虫は、あっという間に、土を呑み込み、地の上をはいずる「カイブツ」になっていた。というように、なにか土の中を自由にはいずる生物のパワーにびっくりした!! ピアノの音色も美しく、Keithの才能に、あらためて感動した夜でした。」と・・・なんだかまとまりのない文章になりましたが、一度も聴いたことの無い方は機会があれば、是非一度キース・ジャレットを聴いてみては・・・。キース・ジャレットの素晴らしさはKoinuma Musicの社長さん曰く「とにかく凄い練習量。朝8時からお昼の休憩を挟んで6時まで毎日ピアノの練習をしているそうです」今現在も。。。