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テーマ:広告・マーケティング(61)
カテゴリ:ビジネス・経済・政治
マーケティングの理論をわかりやすく説明するために、
何か良いたとえ話はないのかなぁ、と思っていたら、 職場のボスがこんなエピソードを語りました。 「ホームセンターに穴を開けるドリルを買いに来た人は、 別にドリルを買いに来たわけではない。 本当は『穴』を買いに来たのだ」 一見、まるで謎かけのような文章ですが、 「なるほど、このフレーズは使えるな!」と合点が行きました。 2週間ほど前の日記に書いた『マーケティングの3原則』。 1.お客様が買ってくださる 2.そのお客様が、また買ってくださる 3.そのお客様が、他のお客様に紹介してくださる そしてマーケティングは 「信頼」と「評判」のために行う活動のこと。 決して「売上げ」と「利益」のために行うものではありません。 あるお客が自宅の壁に穴を開けたいと思って、 もし「売上げ」と「利益」しか考えていないホームセンターに ドリルを買いに行ったならどうなるでしょう。 お客「すみません、ドリルはどこにありますか?」 店員「はい。あちらの奥にございます」 お客「ありがとう」 で、お客の彼はいくつか並んでいるドリルを品定めし、 そのうちの1つを選んでレジに並びます。 ホームセンターとしてはドリルが1つ売れたのでそれで良し。 でもここからが悲劇の始まり。 お客が家に帰っていそいそと箱を開けると……。 「!?」 ドリルの刃が入っていません。 そう、通常、ドリルの刃は別売りなんです。 そんなことを知らない初心者の彼は 「何だよ。それならそうとドリルを買うときに言ってくれれば良いのに…」 と文句の一つも出るところ。 でも文句を言い続けてもしょうがないので、またそのホームセンターに行き、 「ドリルの刃はどこでしょう?」と店員に尋ねます。 売ることが第一、と考えている店員は、 「はい。それでしたらドリルのコーナーの向かい側にございます」 と答えるだけ。 果たしてそこへ向かうと、たくさんのドリルの刃が並んでいます。 自分の開けたい穴の大きさは1センチなので、その大きさに見合う刃を購入し、 自宅へ戻る。 さぁいよいよ開けるぞ、とよくよく刃のパッケージを見ると、 『木材用』と書いてあります。 そのお客が穴を開けたいのはコンクリートの壁。 「えっ! ドリルの刃もそんな種類があるのか!? 何でそういう基本的なことをあの店の人間は教えてくれないんだ!?」 一度ならず二度までも裏切られたお客は、 そのホームセンターへの信頼をすっかり失いました。 「もう二度とあそこでは買わない」と思った彼は、 近しい人にも「あのホームセンターは不親切だ。行かない方が良いよ」 とネガティブ・キャンペーンを張ります。 かくして「売上げ」と「利益」が大事だ、と思っている店は、 客からの「信頼」と「評判」を落とすとともにお客を失い、 結果として肝心な「売上げ」と「利益」をも失う図式。 さぁ、これがマーケティングの行き届いたホームセンターなら どういう話になるでしょう。 お客「すみません、ドリルはどこにありますか?」 店員「はい。あちらの奥にございます」 お客「ありがとう」 店員「ところでお客様。ドリルの刃は別売りなんですが、 お宅には既にお持ちでいらっしゃいますか?」 お客「あ、そうなの? いや、家にはないんだけど……」 店員「それでしたら、ドリルのコーナーの向かい側に ドリルの刃を陳列していますので、 併せてのご購入をお勧めします。」 お客「うん、わかった。ありがとう」 店員「ちなみにお客様はどんなところに穴を開けようとしてらっしゃいますか?」 お客「あ、家の壁にね、穴を開けようと思って。」 店員「さようでございますか。 その壁は木材でしょうか? それともコンクリートでしょうか?」 お客「コンクリートなんですよ」 店員「でしたらドリルの刃もコンクリート用をお求めになる必要がございますね。 穴の大きさは?」 お客「1センチで大丈夫だと思います」 店員「あ、でしたら在庫はございます。 あのう、お差し支えなければ、教えていただきたいのですが、 ご自宅の壁に穴を開けられて、次に何をされるおつもりでしょう?」 お客「ああ、ちょっと吊り戸棚を取り付けようと思ってね」 店員「さようでございますか。よろしいですねぇ。 ところで吊り戸棚は既にお持ちでいらっしゃるのですか?」 お客「いや、それもこれから買わなきゃいけない、と思ってて……」 店員「でしたら2階に家具コーナーがございますので、ぜひご覧になってください」 お客「そうなんだ! いや、ありがとう♪」 いかがでしょう。 お客は1回の訪問ですべての事が足りました。 実に効率的に次の行為に移ることができます。 お店側にしてみれば、お客様の「穴開け」にフォーカスすることで、 ドリルもドリルの刃も気持ちよく買っていただくことができ、 なおかつ吊り戸棚まで売ることができました。 これが本当の『Win-Win』。 そしてまさにマーケティングの活動が売上げと利益を呼び込んだ図式です。 このエピソード、マーケティングの説明に使えそうです。
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