|
テーマ:国際経済・金融(45)
カテゴリ:ビジネス・経済・政治
ギリシャの財政問題から端を発した欧州危機が再燃しているようです。
日本の政府も国民からの信頼が厚いとは言えませんが、 彼の国ではさらにひどいようで、 基本的にギリシャ国民はギリシャ政府のやることなすことすべてにおいて まったく信用していないんだそうです。 なので、政府がどんな策を繰り出しても国民は追随するどころか、 デモで応酬することになっています。 ギリシャ1国の債務不履行で、 ヨーロッパじゅうが大騒ぎになってしまうのは、 やはり統一通貨である『ユーロ』の存在が大きい。 このところ調子が良かったユーロですが、 ギリシャ問題が露呈して一気にその弱みがあぶり出されてしまいました。 もともと10数年前にユーロが本格的に導入されたとき、 当時の経済学者は「無理のある政策であり、失敗する確率が高い」 と予測していたのですが、 実際にはギリシャ問題が起きる直前まで「ユーロ高」という わが世の春を謳歌していたのは記憶に新しいところ。 かつての経済学者が現在の事象を見透していたのかどうかはわかりませんが、 しかしそもそも『ユーロ』という統一通貨制度は、 経済的にはやっぱり相当の無理があるんだそうです。 経済学者の中谷巌氏によると、 「それは仕組みとして『金融』と『財政』が別になっているから」 だといいます。
本来、『金融』と『財政』は不可分の関係にあり、 どちらも1つの国家が運営していくもの。 ところがユーロ加盟国においては、 『財政』はそれぞれの国が担っているものの、 統一通貨ユーロという『金融』分野は、 国を超えた存在である「欧州中央銀行」が その政策運営をまかなっているのです。 これのどこに無理があるのか? たとえばアパート等の集合住宅に住む複数世帯になぞらえてみましょう。 この場合、アパートが『ユーロ圏』、 アパートに住む複数世帯の一つひとつが『ユーロ圏加盟国』となります。 で、そういうロケーションでたとえたとき、現在のユーロのあり方は、 各世帯の運営は当然ながら世帯ごとに決めて実行しているものの、 家計はそのアパート内でまかなう、ということと同義です。 各世帯は、家族構成もジェネレーションもバラバラです。 ですので世帯ごとに生活の軸足もまったく異なります。 老人の1人暮らしや老夫婦世帯は、さほど支出もなく、 毎日食うに困らない程度で十分。 しかし、子どものいる若い世帯は養育費や教育費など、 物入りが多く、お金はいくらあっても足りません。 しかもそこに世帯ごとの収入の多寡が要件として入ってきます。 相応の出費をする世帯がそれに見合う所得を得ていれば良いのですが、 それに見合わない低所得だと、どこかで帳尻を合わせなければなりません。 世帯はバラバラでも家計が一緒、ということは、 どこかの世帯がマズい出費をしてしまったときに、 他の世帯が責任を持ってその後始末をしなければならない。 それが今のユーロの仕組みになっているんです。 まともな世帯(ドイツ)から見れば、 借金まみれで悪びれたふうもない世帯(ギリシャ)の肩代わりを 自分たち(ドイツ)のフトコロでまかなわなければならないわけで、 こんな不条理なことはありませんよね。 しかも借金まみれなのはギリシャだけではなく、 スペインやイタリアも潜在的に大きな負債を抱えており、 しかもギリシャに比べてケタが多いんだそうです。 いつアパートから全世帯退去命令が出るかわからない状態。 それが今のユーロ圏の実態なんです。 ひょっとすると数年後は、 再び「ドイツマルク」「フランスフラン」「イタリアリラ」等、 かつての国ごとの貨幣単位が復活しているかもしれません。 そういえばかの英国はユーロ圏の加盟に強く抵抗し、 今に至るまで独立を保っていますが、 今考えればそれが正解なのかもしれませんね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年05月14日 18時40分38秒
コメント(0) | コメントを書く
[ビジネス・経済・政治] カテゴリの最新記事
|
|