こんぱすコーチの全方位日記

昨日『NHKスペシャル』の『未解決事件』を書いたことで、
にわかに『地下鉄サリン事件』当時のことが思い出されたので、
そのことを書き留めておきたいと思います。

事件が起きたのは1995年3月20日の朝8時ごろ。
東京都内を走る営団地下鉄（現在の東京メトロ）の
複数の路線で、走行中の地下鉄車内から
毒ガスのサリンが発生。
折しも朝のラッシュ時で満員の車内や駅構内が大パニックとなり、
多数の死傷者を出したテロ事件がそれ。

当日は週初めの月曜日だったので、
いつもより多めの人出だったと思われます。

当時、僕はまだ大阪に住んでおり、
事件が起きた当時は僕も出勤途上でしたので、
リアルタイムでは事件そのものを知りませんでした。

たまたま10時過ぎ頃に本社に用事があって電話をかけると、
応対に出た社員が、本題もそこそこに「知ってましたか？」と
問いかけてきました。

－－何が？

と問うと、冒頭に書いた内容をとうとうと語り出したのです。

鉄道関係で乗客多数が病院に搬送されるようなできごとは、
衝突事故や火災事故が相場だと思っていた僕は、
その原因が毒ガス発生であることに
ある種の唐突感を覚えました。

しかもその毒ガスが『サリン』らしい、ということで、
「どうしてまたそんなところに…」という思いが。

というのも前年の初夏に『松本サリン事件』が発生しており、
その事件を通じて初めて『サリン』という名の
化学物質の存在を知ったわけですが、
その事件の実行者が特定できていないわずか1年足らずの間に
またぞろその化学物質が、首都圏で、
しかも朝の通勤ラッシュを狙って撒かれたことに、
少なからずのショックを感じたことです。

それと同時に、事件内容があまりにも突飛なことなので、
かえってリアル感がなく、
何だか遠い国のできごとのようにも受け止めました。

しかしそれにしても、どうしてそんな毒ガスが
地下鉄車内に存在したんだろう？

そんな素朴な疑問が頭を駆けめぐったのを
察したのかどうかは分かりませんが、
受話器の向こうで社員が、突然声を潜めながら
「実行犯は『オウム真理教』だともっぱらの噂ですよ」と。

まさか。

1995年当時は、既に数年前から新興宗教団体『オウム真理教』が
カルト教団として知られており、
音信不通になった出家信者の家族から警察等に相談が相次いで
世間的にも問題視されてはいました。

ちなみに出家信者の家族からの依頼で
信者の救出活動をしていた坂本弁護士が一家もろとも
教団によって殺害されていた事実が明るみになるのは、
この地下鉄サリン事件後のことです。

ところが首都圏では、
このカルト教団が何やらとんでもないことをしでかすかもしれない、
という認識は、一般市民ですら持っていたようなんです。

松本サリン事件の首謀者も、みんな知っていたようでした。

折しも関西では2か月前に発生した阪神淡路大震災のパニックが
引き続き尾を引いていて、
テレビや新聞などは2か月経過した当時も連日、
震災関連の報道で埋め尽くされていました。

そういうこともあってか、関西では『オウム真理教』について
そこまでせっぱ詰まった感を持っていなかったのが
正直なところです。

ところがこの3月20日を境に情勢はガラリと変わりました。

もちろん首都圏では震災報道がピッタリと沙汰やみとなり、
そこからは『オウム真理教』一色となったようで、
それは在京キー局からの報道番組の様子から見て取れました。

悲しいかな、関西ローカルも震災関連報道が後退し、
オウム真理教関連にすり替えられていったのを覚えています。

わずか2か月前に起きた未曾有の災害がまだ収束しておらず、
しかも思い出したように余震も発生していた時期にもかかわらず、
震災が忘れ去られていくようで、
何だか虚無感が去来しました。

『地下鉄サリン事件』がなければ、
もっと震災復興は早まったかもしれないのに……

そんな思いを未だに抱いているところです。

そんな時世から既に17年が経過しました。
昨日のことのようでもあり、
ずいぶん遠い昔のできごとのようでもあり、
何だか不思議な感覚です。

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