こんぱすコーチの全方位日記

楽天で予約してから１ヶ月以上は待たされました。
増刷に注ぐ増刷で、僕が手にしたのは6刷目。
今、かなり売れていると思われる単行本です。

タイトルからすると、
自衛隊がどこかの紛争地に
派遣されたかのようですが、そうではなく、
2011年3月11日に発生した東日本大震災において、
被災地に派遣動員された自衛隊員たちの活躍を描いた
ドキュメンタリーです。

マグニチュード9.0という、
有史以来日本人が体験したことのない強烈な揺れ。
そして、東日本の太平洋岸を襲った巨大津波。
さらに世界を震撼させ、
今も現地では精力的な対応を行っている、
福島第一原子力発電所のメルトダウン。

これら度重なる「想定外のできごと」に
自衛隊員一人ひとりが果敢に立ち向かいます。

津波に家や車ごと流された民間人を、
自身も津波に襲われながら奇跡的に助ける隊員。

災害発生後72時間以内に
できるだけ生存者を見つけるために、
壊れた建物を１軒１軒訪ね歩き、
瓦礫を取り除いて、
そこに取り残された人たちを救出する隊員。

そして津波被災者の遺体収容。

母親とその娘たちらしき、
成人女性と２人の小さな女の子の遺体。
母親が２人の幼女をかばうようにして
そのまま3人とも事切れている光景を直視し、
居合わせた隊員全員がむせび泣くシーン。

福島第一原発三号機の水蒸気爆発。
炉心の溶融を止めるため、
世界のどの軍隊も未だかつて体験したことのない、
上空ヘリからの海水投下。
自身の被曝を省みることなく、
積極果敢に
放射能にまみれた現場に立ち向かう隊員たち。

この本の作者をして、
「自衛隊創設60年にして、
初めてのこれは『戦場』だ」、
と言わしめています。

『自衛隊』と聞くと、
現在の憲法改正論議もあいまって、
どうにもキナ臭いイメージが
付きまとってしまうのですが、
2年前の3月11日から数か月に渡り、
10万人以上の自衛隊員が被災地に動員され、
それぞれの『戦い』を繰り広げたシーンでは、
「辛いものは辛い」
「悲しいことは悲しい」
「ささやかな市民の感謝の言葉に、感動」
といった、自衛隊員である前に、
一個の人間としての感情が
赤裸々に綴られていると同時に、
しかし同時に、
命令に対して忠実に、淡々と役割をこなす
自衛官としての
ストイックな側面が縦横に描き出されており、
この本はとても読ませます。

彼ら自衛官は、家族、親兄弟、
恋人たちの前では、やはり1人の人間であり、
しかも被災地の駐屯地に所属している者たちは、
彼らも被災者の1人であり、
そういう意味では民間人とまったく変わらない。
しかし任務の上では、
国民の生命を守る立場であって、
私情を挟む余地はまったくない。

そういった、自衛隊員としての彼らの行動指針と
公私あいまみえた複雑な彼らの心理描写が
鋭く表現されており、
自分自身に置き換えて考えてみれば
途方もないことを
実に淡々とこなしている自衛隊員たちに、
憲法9条だの、海外派遣だの、
それらの是非論を議論する前に、
改めて敬意を表ぜしめる、
そんな読後感を味わっています。

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