こんぱすコーチの全方位日記

京セラ創業者の稲盛和夫氏が10年ほど前に上梓した
『生き方』という本。
僕は4年ほど前に購入して読んでいたのですが、
経営者・リーダーとして必要な信条、熱意といった内容が
本当に的確に書かれていて、いちいちうなずけます。

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稲盛氏と言えば、最近は、
事実上倒産した日本航空を再上場に至るまで
飛躍的に再建を果たした立役者、ということで
名経営者の金字塔をさらに1本打ち立てたということで、
ここ最近、またこの本が売れ出しているそうです。

僕も稲盛氏は尊敬する経営者の1人だったりします。

ところがよくよく思い返してみると、
僕が大学4年の就職活動たけなわの頃、
京セラという会社は、
決して共感できるような企業ではありませんでした。

「毎日、残業は深夜にまで及ぶ」
「月の残業100時間は下らない」
「入社3ヶ月で血尿が出て、退職した人がいる」

大学OBで、京セラに入社した先輩筋から
まことしやかに語られるこのような噂が、
就活生の間を駆け巡りました。
今の時代なら『ブラック企業』のそしりを免れません。

火のないところに、煙は立たない。

多少、誇張したところはあるだろうけど、
概ね、そんな企業風土なのだろう、と解釈しました。
そういうモーレツ会社に、僕は基本的になじまない。
なので、いの一番に就活先から除外しました。

そんな会社の創業者が、今や時代の寵児としてもてはやされている。
松下幸之助に次ぐ、経営の神様と言われる。

しかし片や『ブラック企業』ばりの働き方を強制される。

いったい、どっちが本当なんだ!?
と戸惑ってしまいます。

でも、僕の解釈だと、おそらくどっちも本当なんだと思います。

その仕事に、なぜゆえ寸暇を惜しんで打ち込めるのか？
幾晩も眠らず、貫徹状態なのになぜゆえ身体は堪えないのか？

それは、その人にとってその仕事が眠ることよりも、三度の飯よりも、
大好きだから、なんだと思うんです。
大好きなことをしているわけですから、欠食しようが徹夜をしようが、
全然ヘコたれないんです。楽しくてしょうがない。
だから大きな成果を手に入れることもできるんですね。

ところが、ここで仕事に向き合うときに主体性の1つでも欠けるとどうなるか。

そこは「ねばならない」の世界です。
本当はやりたくない、と思っていることをやることになるので、
「やらされ感」が募ります。だからそれが大きなストレスになる。

同じ水準の仕事を同じ時間やったとしても、
主体的に「やりたい！」と感じてやっている人はハッピーだし、
受動的に「やらねばならない」と感じてやっている人はアンハッピー。

この違いが、その人にとっての『ブラック企業』『ホワイト企業』の
境目なのではないでしょうかね。

確かに『ブラック企業』の烙印を押されている会社で、
本当にひどいケースもあります。
社員をほとんど家に帰さず、半ば社内をたこ部屋状態にして、
とことん納期どおりに仕事を仕上げることを強制する会社。
しかも残業代も宿泊代も支払いません。徹底的に社員のスタミナを吸い尽くす勢い。

こういう手合いは言語道断ですが、
ここまでひどくはなくとも、『ブラック企業』のレッテルを貼られている企業は
そこそこあります。特に外食業界や流通業界に多いように思います。

最近では『ワタミ』やユニクロを運営する『ファーストリテイリング』が
やり玉に上がっていますが、しかし前述のことを考えたとき、
これらの企業を一律に『ブラック』と称して良いものか。
ちょっと僕は躊躇します。

というのも、中には会社のポリシーに共感して、
主体的にどんどん働き詰めている人もいるはず。
彼らは意気に感じて今の仕事に誇りを持っていることでしょう。

そういうように、同じ仕事であっても、人によって捉え方、感じ方は違います。
それを第三者が一律に『ブラック』と決め付けるのもどうかな、と思うんですよね。

……と、ここまで書いて、ハタと思ったのは、
モーレツ企業のポリシーに共感して働き詰めの人が、
メンタル面では全然問題ないものの、肉体的には知らず知らずのうちに疲労が溜まっていき、
結局、病気になったり過労死に至るケースもあるんですよね。
そのことを考えると、やっぱり複雑ですねぇ……。