年下彼氏

「姫さま」　

この言葉にはなんとなく優雅で雅びやかで楚々とした印象がある
現在では姫と呼称される人間は非常に限られているだろう
しかし華やかなりし江戸時代には「常時」千人以上
恐らく合計で一万人以上の姫さまがおいでになったらしい
そう　まさに姫さま全盛期なのである
この本はさまざまな姫について教えてくれている

姫さまというとなにやら若くて美しいｲﾒｰｼﾞなのだが
実は　結婚しても「姫」　
どんなに年を召そうが「姫」
つまり「姫」というのは一種の身分・位にあたるので
年令や結婚の有無にはまったく関係ないのである
もし結婚をした場合
その旦那たる殿がお亡くなりの際に髪を切って仏門に入るか　
姫本人が死亡した場合に初めて
法名「○△院」となるがそれまでは
とにもかくにも「ﾅﾝﾄｶ姫」なのだ
ただし幕末の頃には
江戸生まれの姫さまの中でも身分がﾋﾟｶｲﾁな
将軍家の姫のみ「姫君様」と呼ばれたらしい
そして姫君様は三位以上の殿様にお輿入れすると「御守殿様」
それ以下の婿の場合「御住居様」と呼ばれたそうだ
なんて上下関係がはっきりしているんだろう

当時の流行もなにかと流派のようなﾓﾉがあり
御本丸風（将軍家）　大名風　公家風などがあった
例えば持ち物ひとつでも
元将軍家の姫君様に仕えた御殿女中ませ子へのｲﾝﾀﾋﾞｭｰによれば

「御本丸では、箱せこ・かんざしを用いないのです。
あのピラピラさせるのを大名風だといいましてかえって嫌いました」

御本丸流はﾋﾟﾗﾋﾟﾗと軽薄でなくあくまで重厚で渋いのである
それは何故か

実ゎ結婚しようがなんだろうが奥方様のほうが
大名なんぞよりも地位が上だという表明らしい
この姫君様よりも身分が上なのは唯一将軍のみ
降嫁しようが将軍家の姫という身分は一切変化なしなのだ

こうなれば夫婦といえどまったく殿は頭があがらない
いくらｵｯﾄとはいえ　いきなり今夜♪なんてことは許される筈もない
まずは奥さんの住んでいる御殿へ出向き
そこの待ち合いで奥様がお迎えに来てくれるのを
ひたすらじっと我慢の子で待っているのだ
しかし奥様は三味線や踊りで一晩中遊んで眠りにつくのは朝方
たいてい昼過ぎまでぐっすりねちゃってるので
大抵は各種お女中に見張られてじーっと小さくなって待たなければならない

一方こうした将軍家の中でも家斉の子や孫は
非常に美形ぞろいだったらしい
あのｼｰﾎﾞﾙﾄが家斉の子を
「目立つ程色じろの美少年だった」と書き残している
ちなみに五代将軍家綱の正室信子の容貌は
当時来日していたｹﾝﾍﾟﾙの「日本誌」によると
「いきいきとしたﾖｰﾛｯﾊﾟ人のような黒い目をした
褐色がかった円みのある美しいかおであった」そうである
もっとも信子には子供はできなかったのだが
美人程推挙されて側室となりその息子も美女を選びといった具合にして
将軍家の姫君様のかんばせはまさに花のようだったのだ
とびっきり美女で金持ちで
自分より偉いのがお父さんだけとなればそりゃ旦那なんか、、ねぇw

この本にはこのほか
姫さまたちが愛玩した狆についても触れている
詳しくは読んでみてのお楽しみなのだが
当時の日本人のｲﾇに対する感覚が私達とまったく違うのは驚かされる
（「犬」と「狗」と「狗の子」はそれぞれ
別の生き物を意味していたのである）
犬の張り子を枕元に置くことについての記述など
当時の姫さまたちのえっちについて想像をかきたてられ
ﾜｸﾜｸして　ゆーき　に語りまくりましたw

この本を読んでから
川原泉の書く鳴沢家を読み直すのも一興かもw