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カテゴリ:カミゴト
アタシゎネコと17年間暮らしてきた
名前をプリンという プリンと暮らし始めたのゎ まったくの気紛れだった 17年前のその日 アタシゎたまたま名駅のそばのモトコちゃんの会社にいて モトコちゃんが仕事を終わるのをそこの受付けで待っていた モトコちゃんゎ同人誌の印刷で有名な印刷所の 受付け嬢をしていて もともとアタシゎそこの常連客だった それが某グループの追っかけをしている現場で 偶然にも何度も顔をあわせるうちに プライベートでも仲良くなっていたのだった ちょうどその日ゎ土曜日で どこかの大手の入稿待ちらしく する事ゎ無いのに待っていなくてゎならずなくて まだまだ時間がかかりそうだった (その頃ゎ今と違い完全アナログ入稿だった) お腹の空いたアタシゎ コンビニまで時間つぶしに出かける事にした 当時名駅付近にコンビニゎ少なく 少し遠くまでテクテクと歩く すると今まで一度も気がついた事がなかったのだが 昔ながらのいかにも仕事に疲れたサラリーマンが 安酒を楽しみに寄りつきそうな店構えに 古い汚れた暖簾をかけた定食屋があった 開けようとすればガタガタと軋みそうなその引き戸にゎ カレンダーを裏返した白い地に 黒マジックで文字が書いたものが貼ってある 『ねこ あげます』 コンビニに行く筈だったアタシゎ 何故かその戸を開けてしまった その古い木製の引き戸ゎ軋むどころか 軽やかに滑ってアタシを飲み込んだ そしてそこを出た時 小さな一匹の子猫を抱えていたのだ その頃のアタシゎ寂しかったのだ 子供の頃から寂しくて寂しくて その寂しさを埋めようと様々な事をしてきた 名古屋へ来た最初のその年 独り暮しをしながら 昼間ゎ出版社へ勤め 夜ゎクラブで働き 合間に同人誌を作り 追っかけをしていた 常に何かをして 常に何かで頭をいっぱいに埋め尽くす そうしてこの寂しい飢えた気持ちを 思い出さないようにしていたのだろう そうやってフルスピードで無闇に走るアタシを 「独りで3人分生きてる」 そう言った人がいた 寂寥感と焦りゎ最高のガソリンだった コンビニの袋の代わりに 子猫を連れ帰ったアタシを見てモトコちゃんゎ驚いたが ちょうど入稿も終わったところだったらしく そのまま会社の新品の段ボールをくれた そしてそのままその箱に子猫をいれて アタシの部屋までタクシーで一緒に来てくれた なにしろアタシゎネコを飼った事がなかったのだ 気がついたらもらっていた と いう状態で 何をやったらいいやら どうしたらいいやら まったくお手上げだった 対してモトコちゃんゎネコに慣れていた おっかなびっくりダッコするアタシを笑いながら 名前どうするの?と聞くモトコちゃんに 「プリン、、、にする」 と答えると モトコちゃんゎもう一度驚いた プリン それゎモトコちゃんの会社の名前だったのだ あれからもう17年も一緒にいる プリンゎひどく怖がりで内気な性格のネコだ 初対面の人にゎまず触らせないし 押し入れに姿を隠してしまう その癖やみくもにアタシにゎ愛着をもっているようで プリンの知らない人が家に訪ねて来ると まるで子猫を運ぶかのようにアタシの指を銜えてゎ 何度も何度もベッドや押し入れに隠そうとする 普段プリンゎいつもアタシに密着している その様子ゎまったくストーカーのようだ ホットカーペットが大好きな癖に ご飯を作る為に台所に立つアタシの後をついてきてゎ 暖房のない冷たい床に顔をこちらに向けて丸くなる パソコンを触りに動けば パソコン用の2人掛けのイスでアタシにもたれ掛かって座っている 床に寝そべり本を読んでいると その本の上にどっしりと横になる トイレに入れば一緒に入り お風呂に入れば自分で戸を開けて湯舟の端に座っている 布団をひけば誰よりも先に アタシの枕に頭を乗せており もしアタシが布団に入らずゲームでもしていると 今度ゎ膝に頭を乗っけて横になる 彼女ゎそんな事をもう17年もくり返してきた 玄関が開いていようと外にゎまったく関心を持たず 一日中殆ど寝て暮らしている 最近ゎ部屋で半分放し飼いになっている モルモットと一緒に昼寝をしている程 攻撃性の少ないネコになった 一時期実家で暮らしていた頃ゎ 毎朝ネズミやらスズメやら戦利品を持ってきていたのだが 朝も晩もプリンゎアタシの側にいる ただそこにいる これといって強く主張する事もない ただただ側にいる いつも身体のどこかを接触させている 「信頼」 17年かけてアタシとプリンが築いたものだ お互いに傷つけない事を知り尽くしている しょせんネコだから 全部アタシがそうであって欲しいという妄想なんだろう けれど ただいる事 何もしない事 その事の重みをプリンゎ教えてくれる 微かに触れあう時ふんわりと感じる温かみ それがどれ程心を平らかにしてくれるのだろう 余計な事ゎしない 何も訴えない けれどそこにいると言う事 言葉があるおかげで アタシゎ手っ取り早い方法で 他人との間を埋めようとする けれど この年を経たネコを見るとき 何もしない事ただ在る事の とてつもない普遍性を思う ただ一緒に居たいからいるのだと言う事 アナタの為でゎ無く 自分が居たいからいるのだと言う事 それをなんのてらいも無く当たり前にふるまう事 そこにゎなんの見返りも求めない 愛に似たバイブレーションを思う アタシゎ誰かにできるだろうか ここまでの信頼を示せるのだろうか 言葉を使わず鎧をつけず 裸で人の前に自らの腹をさらせるのだろうか お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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