素人の感想 ルペン氏とマクロン氏の対決対談
2017年5月3日の夕べ、テレビ対談でフランス大統領候補のルペン氏とマクロン氏の対談があったので観た。ルペン氏はパンタロンに美しいハイヒールを履いていた。マクロン氏は細目のネクタイにすっきりしたスーツ。候補者二人の言葉の剣を交わす2時間半の対決となった。DUEL フランス語で「対決」まさにそんな感じだった。結果的にはマクロン氏が記者からの質問に明確な提案や対策を提起し、ルペン氏の執拗な攻撃にもよく抵抗していた印象。ルペン氏は攻撃が目立ち、彼女の提案そのものは二の次の印象を与えてしまった。マクロン氏は対抗するうち、まだ39歳なのに時々口のまわりに白い泡をつけて喋った。頼むから、水飲んで、と思っていたら、ちゃんと飲んでいたが。どこか病気なのか、とつい思ってしまったが、時々リラックスしている様子を見せながらも緊張はしていたと思うし、ルペン氏のあまりの攻撃に沸騰する腹立ちも抑えて 真剣に挑んでいたからだろう。話し方はちょっぴりサルコジー氏に似ているなあ、とふと思った。二人の男女のジャーナリストが候補者がそれぞれ各自の意見を述べる時間が均等になるように指示しながら対談が進むが、時にはそれが困難になることも。中年の女性のジャーナリストの表情がおかしかった。「もう、いい加減にしてよ」という表情がありあり。「あなたたちが同時に喋ったら何を言ってるんだかわからないでしょ」と言う場面も。C'est inaudible!ルペン氏が先に話し始めた。「あなたの政策の内容についておしえてください」という質問に答えるはずだったのに、ルペン氏はマクロン氏を皮肉りまくり避難攻撃。ルペン氏の政策企画図はまるで全然出てこないままの開幕となった。彼は野蛮なグローバル化候補だのオランドの指示で動くなど、彼の過去の大臣時代の仕事への批判、彼の本性は善意を誹謗にすり替え、笑顔を引きつった顔に変え、社会党の伝達マシーンは管理下に従える。銀行家の冷酷さをうまく隠し、などと続く。le candidat de la mondialisation sauvage, ... tout cela piloté par monsieur Hollande qui est à la manœuvre de la manière la plus claire qui soit. ... la bienveillance a laissé place à la médisance, le sourire a laissé la place à un rictus, et la machine de communication du PS a repris les choses en main. La froideur du banquier que vous n'avez jamais cessé d'être a fait surface. あれだけ次から次に勝ち誇った様子で避難攻撃を受けたら普通の人間はうつになるわ、と思うほど。もしくは切れやすいフランス人なら、完璧に切れて低レベルの罵倒後、退場だってしかねない。一体、マクロン氏、これだけ言いたい放題避難を受けてどう対抗するのか、と思っていたら、開口一番、爽やかな表情で「あなたは繊細なエスプリを持つ候補者ではないですね」と始めた。Vous n'êtes pas la candidate de l'esprit de finesse.そして、ルペン氏には何の対策もない、と。「全く驚くかな、あなたはされた質問に決して回答しないんですね。あなたから全く何も提案が出てこない。私ははっきりと答えますよ」Ce qui est extraordinaire, c'est que vous ne répondez jamaisaux questions. Vous ne proposez rien! Moi, je réponds précisément:それにしても、マリーヌさんも父親のルペン氏と結局同じか。マリーヌさんの意図はこのテレビという公の場所でマクロン氏を徹底的に叩きのめし、彼のイメージを下げること。政策なんてどうでもいいんだ。もしかしたら勝てないことがわかっているから叩くだけ叩こうと思ったのかな。ひいき目にみれば、これから若いマクロン氏がぐじゃぐじゃに言われても対抗するだけの力をつけていってほしいという老婆心か。確かにこきおろしている時のルペン氏は時々楽しそうでもある。私の剣についてこれるの?と言っているみたいでもある。でも、若い視聴者なら、そこまで読み取ることはないだろう。こういうやり方って返ってルペン氏の品格を下げると思うんだけど、何故もっとすっきりと自らの対策を述べないのかな。案の定、マクロン氏からあなたには何の対策もないのだと言われた。今朝はフィガロ紙はルペン氏とマクロン氏が上げた数字のエラーをつついていた。ただマクロン氏のあげた数字は2010年のある機関を根拠にしたものだろうと書いていた。マクロン氏はテロ特別対策本部を設けると言ったが、フィガロ紙はフランスにはすでにある、と書いていた。政治に関しては最も中立的な立場をとるとされるル・モンド誌もルペン氏がマクロン氏について「あの時、あなたは財務大臣だった」と言ったことは嘘であることを指摘している。ほかにもマリーヌさんの嘘や勘違いをいろいろ指摘していた。ル・モンド誌が上げたマクロン氏のエラーは二つのみ。最後のあたりは寝てしまったので、候補の二人が環境について話したか話さなかったかわからないけれど、たぶん、なかったんだろう。この分野は結局専門家の意見が必要だし避けたのかな。二人は法律や経済には明るい候補者だけど、原発や太陽光に残る疑問はいろいろあるし。それぞれ欧州連合に残るか離脱するか、で二人の意見は対立。マクロン氏は欧州連合に残る。欧州連合からの離脱をすると、例えば薬代も跳ね上がりますよ、と。マクロン氏は欧州連合の連帯で中国やロシアやほかの大国からフランスの経済は保護される、と説く。ルペン氏は国内生産を推進するためには欧州連合からの離脱が必要だという。ルペン氏は言う。まるで案がないわけでもない。最初からちゃんと言えばいいのにね。「最初の三つの層から10パーセントの収入税を減らす。 残業代は税金対象からはずす。 ガスや電気代は5パーセント減らす」と言ったあとで、またマクロン氏にあなたは何にも知らないでしょうけど、と言った素振りもあまりに見え見えで、さすがにマクロン氏もこの人、頭、ほんとうに大丈夫か、と訝し気に眉をひそめる。「あなたにはすべてが買っては売るもの。私にはすべてを売ってすべてを買うということはない。フランスはそんなものよりもっと別のものなんですよ」とルペン氏。マクロン氏は大統領になったら、80%の国民に住民税は消すとかいってた。どうなるんでしょうね。この対決後はテレビ視聴者の63パーセントがマクロン氏のほうが説得力があったと。ルペン氏は34パーセント。あるフランス人は候補のレベルも落ちたな、と言ってミッテランやシラクはもっと格が上だった、と。 ちなみにグローバリゼーションはフランス語で la mondialisation片仮名のグローバリゼーションもしくはグローバル化は日本語で「地球規模化」なんだろうか。グローブ globe は地球を指すから。フランス語から訳すと「世界化」