フランス語入門「半過去」って何?じっくり考えてみようか。
「過去形」ってまず何だろう。日本語には「過去形」があると思いますか。いや、ないわけがないよね。しかし、文法用語としてはないのです。国文法では終助詞が過去時制を示す、という説が普及しているようです。 「遊ぶ」→「遊ん・だ」 「遊び・まし・た」「食べる」→「食べ・た」「食べ・まし・た」「思う」→ 「思っ・た」「思い・まし・た」「笑う」→ 「笑っ・た」「笑い・まし・た」などのように「た」あるいは「だ」という終助詞を使うことで過去の出来事や状態を示す、という説です。 さて、フランス語の「過去形」には「単純過去」passé simple 「複合過去」passé composé 「半過去」imparfait また「大過去」plus-que-parfait があります。名前からして「単純過去」passé simple が一番簡単だろうと思うのは早合点です。これを使いこなせるフランス人は立派なものです。何故なら話し言葉で使うことはないためかなかなか使いこなせないフランス人も多いようです。作家や学者が「単純過去形」を使いこなせないのは問題外です。 今回は「半過去」 imparfait について少し書いてみます。フランス語で アンパッフェ imparfait と呼ばれるものです。parfait は英語でもパーフェクトの「完璧」を意味するものですが、アンパッフェ imparfait なので中途半端なイメージがあります。終っているのか終わっていないのかグレーゾーンみたいですが、確かにある出来事がいつ始まっていつ終わったのかを伝えることを目的とはしていません。これは● よく過去に習慣的に行った事柄を表す時や● あるいは過去に動作が連なる時や● また一枚の絵にたとえて、主題の陰で背景を表現する場合(描写)、● そして仮定法でも使われます。例文を見ながら確認しましょう。動詞が「半過去形」の例文です。フランス語では主語に合わせて動詞の末尾(=語尾)が変わりますから注意が必要ですよ。ここが日本語や英語と大きく違う点です。例文1小さい頃、よく友達とサッカーをして遊んだ。Quand j'étais petit, je jouais au football avec mes copains.上記の例文には「よく~したものだ」という習慣的な事柄を示すニュアンスがあります。これをフランス語は「半過去」の動詞を使って表現します。「小さい頃、(よく)外で遊んだものだ」は英語では used to ~ を使って表現できますね。When I was small, I used to play outside. 例文2昔は我々はテレビもコンピューターもなく暮らしていた。映画もなかった。学校がない時は外で遊んだものだ。Autrefois, nous vivions sans télé, sans ordinateurs. Il n'y avait pas de cinéma. Lorsque nous n'étions pas à l'école, nous jouions dehors…事柄を描写する時の動詞は「半過去形」になります。暗に「昔は~だった」という「過去の状況」を示している例文です。例文3今でも彼女はケーキを作る度、母の顔が浮かんだ。Aujourd'hui encore, chaque fois qu'elle préparait un gâteau, elle revoyait le visage de sa mère. 「~するたびに~した」「今でも」とあるので「過去」ではない、とふと思うかも知れません。確かに「現在形」でそのような文章は可能です。「今でも~するたびに~する」知っている?君の写真を一人で見る時、今でも泣けてしまうことを。Sais-tu que je pleure encore chaque fois que je me retrouve seul face à tes photos.このセリフは自分の現在の心理状態を伝えています。「今でも彼女はケーキを作る度、母の顔が浮かんだ」Aujourd'hui encore, chaque fois qu'elle préparait un gâteau, elle revoyait le visage de sa mère. これは筆者がある人の心理状態を描写している文ですね。筆者は女性の心理状態は見聞したか、想像したか、筆者から見るとその人の心理状態は描写する段階で「過去」なんですね。さて、どの過去のどの時間であるかを特定していません。「ケーキを作った」「母の顔が浮かんだ」がほぼ同時に発生し、このように二つ以上の動作が過去にほぼ同時に連なった時に「半過去形」を使います。さらにここでは「~するたびに」で始まっていますから、「習慣」の要素がありますね。ただし、面白いのはたとえば、「彼女はみんなに挨拶をし、バゲットを頼んだ」Elle a dit bonjour à tout le monde et elle a demandé une baguette. という、動作が連なっているにも関わらず、すべて「複合過去形」と言う例文をあげることができるのです。「半過去形」と何が違うのでしょうか。「複合過去形」の表現では、一つ一つの動作がきっちり終了しているイメージがあります。「半過去形」で示されるような習慣的なニュアンスも描写的なニュアンスもそこには全くありません。この違いを考えるのは面白いですよ。バゲットは日本ではフランスパンのことですね。あの長いパンです。例文4Quand tu m'as appelé, je dormais.あなたが電話をしてきた時、私は寝ていた。「寝ていた」が「半過去形」です。リーンと電話が鳴るシーンが起こった時、「寝ていた」電話が鳴る前からすでに寝ていたわけです。何時に就寝した、というのはこの文章の中では問題としていませんね。「電話が鳴る」という一つのアクションが「寝る」状態をつきやぶったわけで、「寝る」行為は「背景」の動作として表現されている、と解釈するとどうでしょうか。難しい?英語でもこれは同じです。文法用語は違うけれど、英語では背景としての「寝ていた」は「過去進行形」で表現できましたね。When you called me, I was sleeping.ちなみに tu m'as appelé, あなたが電話をしてきたこれは「複合過去形」です。フランス語では主に書く時のみに使う「単純過去」がありますが、過去のことを話す時はこの「複合過去形」を使います。例文5きみはこの歌手を知ってた?Est-ce que tu connaissais ce chanteur ?いつの頃から知っていたか、という質問ではなくてもっと漠然とした感じで聞いています。例文6 "si" 仮定法で人に何かをすすめる時。あなた、シャワー浴びたら?Si tu prenais une douche ?例文7 この試合に勝ったら、彼は一晩中お祭り騒ぎだな。S'il gagnait ce match, il ferait la fête toute la soirée.仮定法で「~したら」の部分が「半過去」です。どうでしたか。習慣的な動作「いつも~した」「毎日~していた」「雪が降っていた(描写表現)」そして仮定法「~したら」などで「半過去」として大活躍するわけですね。Paris décembre 2017姉 半過去の例文「あなた、シャワー浴びたら」って シ チュプ r ネ ユンヌドゥーシュ? Si tu prenais une douche ? なんかすごく汚い人に言ってしまいそう。生徒 下手にいうと誤解されるから。 子供の頃はよく川で遊んだ、なんて時代じゃないし、 子供の頃は隠れてよくネットで遊んで親に怒られたっていう時に 半過去を使うのか。 先生、フランス語で何て言うんですか。先生 それを考えてほしいから教えているんだが。生徒 子供の頃は Quand j'étais petit, っすか。姉 あなた、ちょっとすごくない?生徒 je jouais à l'ordinateur, で「俺はコンピューターで遊んだ」ってあるなあ。 隠れて、は あれか、en cahette 怒られるって何? 先生 gronder あたりがこの場合はいいでしょう。 imparfait では grondait 母親に私は怒られた ma mère me grondait Quand j'étais petit, souvent je jouais à l'ordinateur en cachette, ma mère me grondait. l'ordinateur コンピューターが長いので l'ordi と短縮してしまう人が多いです。姉 隠れて遊んでいるのに母親にはわかるものなのよね。先生 昔「禁じられた遊び」というフランス映画がありましたが。姉 そうだったわね。Jeux Interdits 生徒 あの小さな女の子がやがて「ブーム」という映画の中で お母さん役してるんだよね。先生 そうそう。 さて、半過去形と複合過去形を比較してもっと勉強すると面白いですよ。Marseille 2017フランス語ランキング