|
カテゴリ:France
昔、パリの本屋で一冊の本を買い、自分のステュディオに
戻ってから、おつりが倍あることに気がつき、次の日、本屋に戻って、おつりが多かった、 と話したら、お店の女性のオーナーが、まあ今時珍しい、ありがとう、どれでもいいから、 一冊好きな本選んで持っていっていいわよ、と言ってくれた。 寛大なオーナーの言葉に甘えながらも、私なりに遠慮して、薄い文庫本を適当に選んで もらってきた。題名は確か、「シンプル・アムール」。第ヒットした短編らしいことが 本の裏に書かれていた。が、部屋の片隅で一人読み始め最初のページで、私は部屋の 向こう側に本をポイと投げた。本はポルノっぽい内容で始まっていた。 パリ大の学生だったある日の授業で、クラスの仲間の一人と組んで短編 を書くという課題がでた。クラスにアメリカ人の友人Dがいたので、 彼女と組んで書くことに。 短編の最初の出だしから第一部を彼女が書き、 残りの第2部を私が仕上げるということで話は決まった。 さて、2,3日して友人が彼女の課題作第一部を私に渡した。 話の内容は、若い女性がある青年に恋しているという内容だったが、 主人公の女性が青年を思い浮かべる時の描写がやけに色っぽくて、 私は戸惑った。 何しろ、シースルーのネグリジェを着て主人公登場。 恋する思いを熱っぽくため息交じりで述べる。 その恋の告白モノローグだけでも、WOW! さすがアメリカ人だよう、と、何がさすがなのかよく わからないけれど、とにかくこのあとをどうやってつないで いこうかと四苦八苦。彼女の作品をまんじりと読むたびに、 無理よ、私はお笑い系だったでしょう、とかぶつぶつ独り言を 連発しながら、それでも、なんとかマイペースに物語りを 運んでいこうと頭をかきむしる。…う、う、どうしよう…。 D, スレスレの純文学を目指していたのかも知れない。 でも、ごめんよう、軌道が完璧に変わります。と、いうか、 どういう内容の短編にするかなんて打ち合わせもしなかった。 たぶん、お互いに最初に決めたとおりに物語が運ぶなんて 考えられなかったからかも知れない。何しろ、短編だけに 丸々一週間かけるわけにもいかない。ほかにも、いろんな 課題が出ていたから。 …で、結果、私は決めた。まず、青年に名前をつける。 ガストン。 ガストンも主人公の若い女性が好き。つまり、相思相愛。 でもお互いに気づいていない。 ある月夜の晩、ガストンは彼女の家の前まで行く。恋を告白するために。 男らしく決意して、そうさ、振られても構わない、自分の気持ちを伝えたい。 そういう思いを胸いっぱいにしながら、ガストンは彼女の家の入り口に立つ。 深呼吸して、階段を上り始める。が、ガストンはそこで、一段 馬鹿っぽく足を踏み外し、ぶざまにも、その反動で庭の池に 落っこちてしまう。…という成り行きに話を持っていった。 ごめんね、D。ハリウッド映画風には話を持っていけなかった。 クラスでこれを読み始めた教授は途中から笑いだし、 学生たちも私の友人Dも大爆笑の渦に巻き込まれていった。… そんなに可笑しな内容でもないと思うんだけど、みんな、 笑いに飢えていたのかも知れない。 と、いうわけで。で、あのあと、ガストンはどうなったか。 池の水の音を聞いて、彼女が不信に思い、窓から外を眺めると 愛しいガストンがびしょぬれで池の中に立っている。 彼女は池まで走り、ガストンと彼女は抱き合ってハッピーエンド。 何年もしてから、実際に、ガストンという名前の人に出会った 時は内心焦ってしまった。 「いやあ、昔、こんな話を作ったんですよお…」なんて、とても 初対面のガストンさんには言えなかった。 一口フランス語 Qu'est-ce qu'on mange ce soir ? ケスコンモンジュ スソワー? 「今夜、何食べるの?」 動詞 manger : 食べる (最後のRは発音しません。) 「マ」をいう時の口の開き方で「モンジェ」と言うと、いいかも 知れません。 ce soir 今夜 今日もあなたにとって素敵な一日でありますように。 lots of love よろしければ、ぽちっとプレスを。 人気blogランキングへ ありがとう!Have a nice day ! A+ ! Vineusement vôtre. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[France] カテゴリの最新記事
|