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カテゴリ:France
在仏の日本人夫妻で有機ワイン栽培農家が強制送還を命じられた話を聞いて、それはないだろう!?と思った。
一応、下記サイトの署名運動の力もあったのか、強制退去は延期され、しょうじ夫妻の状況を見直す方向に向かっているようです。が、まだ安心はできません。政府が特別待遇をすればほかから槍が飛ぶのは目に見えています。何とか既存の法律を尊重した形で夫妻の滞在が正式に求められることを祈っています。(追記フランス時間7月7日) 下記のサイトは「在仏の日本人夫妻への強制退去を却下してください」というフランスでの署名運動サイトです。Non à l'expulsion des vignerons japonais de Banyuls ! フランスのピレネー・オリエンタル地方の Banyuls-sur-Mer でワイン畑を所有する山形県出身の しょうじ ひろふみ さん 38歳と 大阪出身の りえ さん42歳ご夫妻。写真でみると、とても若々しいご夫婦。すでに三ツ星のレストランでも認められた有機赤ワインを出荷している。2016年にはスペインでも最高の赤ワインとして名前が出ているそうだ。パリのレストラン Le Verre Volé でも認められた。強制送還は2018年4月に出されたそうだ。 Pour quelle raison ? どのような理由で? INDEPENDANT Un couple de vignerons japonais installé à Banyuls frappé par une obligation de quitter le territoire 夫妻の収入が外国人滞在者がクリアすべき収入に満たない、というのが理由らしい。 月収2000ユーロに満たないじゃないか、という理由らしい。 日本円で2018年5月7日は2000ユーロは大体258000円くらい。 確かにフランスには外国人に対してそのような法律はある。 フランス国籍保持者と結婚していないなら、 お金がフランスの一般市民より要るんですよ、という法律。 フランス国外の人間がフランスの大学生として滞在する場合は貯金額は証明する必要はない。 申請すれば、週20時間の労働もできるので、免税店や食堂や会社でバイトもできる。 留学生の場合は働かずにちゃんと生活ができていけるかを証明する貯金額を聞かれるのではないかと思うが、その辺は私にはわからない。 インデペンダント誌のジュリアン・マリオン氏の記事によると、 カタランの地のスローフードの代表かつ有機ワイン造りを土着体質で貢献するサロンの責任者であるジャン・エリティエ氏 Monsieur Jean L'Héritier, président de slow food pay Catalan が しょうじ ひろふみさんとりえさんのワインは超高速で上質なワイン造りに成功しており、このような二人を国外追放とは何という損失だろうかという趣旨のことを語っている。 「カタランの地のスローフードの代表かつ有機ワイン造りを土着体質で貢献するサロンの責任者」 この元のフランス語が président de Slow Food Pays Catalan et responsable du Salon Indigènes consacré aux vins nature です。 急いで訳したので激しい日本語になっていると我ながら思いつつ。 特に「土着体質で」なんですが、indigène = qui est originaire du pays où il se trouve, où il habite なので「地元民」で十分だったのかもしれません。まあ「先住民族」の意味もあります。 vin nature は vin biologique 有機ワインで農薬も化学肥料も使わずに造るワインのことです。「カタランの地」ですが、1659年のピレネー条約でスペイン王国からフランス王国に渡されたピレネー・オリエンタル地方を指すそうです。カタルーニャと思ったのですが、カタルーニャは即スペインだろうと思われてわけがわからなくなる恐れもある、と思い避けました。 現代風に訳すと「ピレネー・オリエンタル地方のスローフード代表兼有機ワインに貢献する地域民のためのサロン責任者」うーん、たいして進歩してないか。「地域密着型の有機ワイン農業者サロン」かなあ。 しょうじ夫妻と同様にショックを受けた地元のフランス人、あるいはインデペンダント誌で紹介された二人の強制送還の通告に衝撃を受けた各報道陣が一斉に話題にした。ジャンポール・サルトルが1973年にディレクターだった左翼系のリベラシオン紙、ル・フィガロ紙、ル・ポワン誌、レジスタン・レピュブユリカン誌など。 リベラシオン紙は1973年に哲学者サルトルがディレクターをしていた新聞で人道的な記事を多く掲載している。 フランス3オクシタニのテレビ局ではアラン・カステックス氏 Monsieur Alain Castex は夫妻の有機ワインの素晴らしさと夫妻が地元にもたらした称賛すべき功績を称えている。 ル・ポワン誌では、日本人夫妻の現地の弁護士 Me Jean Codognès コド二エ氏の言葉を載せている。彼らが働く地域で助成金を得ても月収2000ユーロはおろか1000ユーロの収入も得ていないケースは多い。しかも日本人夫妻は外国籍なので助成金なしでやっている、と。 ル・フィガロ紙では経済欄にリュック・ルノワール氏の記事で、 夫妻のワインに寄せられた葡萄酒専門家たちから数々の賛辞を載せていることや、 夫妻の弁護士コド二エ氏は強制退去を命じた県に対して夫妻の滞在を許可するよう要請し、来月9月初旬に南仏モンペリエの行政裁判所で検討される予定になっていること、 まさに化学肥料を全く使わない手作りの上質のワインへの評価も専門家の間で高いこと、 夫妻はすでに2020年まで有効な滞在許可証を保持しているが、滞在許可証の身分を「給与所得者」から「農業従事者」に変更をした時点で国外退去を命じられてしまったことを載せている。ル・フィガロ紙の記者も、夫妻が助成金まったくなしでやっていることも強調している。 弁護士は日本人夫妻が強制送還の通報を受けたことに動揺を隠せず、日本人特有の「名誉」感からか「恥」の念すら覚えているようだ、と語ったことも記者は書いている。このことが政治問題にも発展し、ルイ・アリオ氏も夫妻の立場を応援する姿勢をとったそうだ。 政治的には右翼も中立派も左翼も関係なくピレネー・オリエンタル県の政治家も夫妻の立場を再検討してほしいと動いていた。Perpignon ペルピニャンは県庁所在地。 ピレネー・オリエンタル上院議員(元老院議員) Sénateur des Pyrénées-Orintales の フランソワ・カルヴェ氏 François Calvet は 4月末の有機栽培ワイン市で実際にしょうじ夫妻の有機ワインをおいしく味わった際に夫妻にも出会い、二人が4月3日に受け取った退去通告に悩んでいることを知り、その通告が全く理解できない、と ピレネー・オリエンタル地方長官 préfét に対して、2018年 5月 3日にしょうじ夫妻が受け取った通告の再検討を求める手紙を出していました。 ローマン・グラゥ氏 Député Romain Grau はフランス国民議会で選ばれた下院議員、ピレネー・オリエンタル地方でブドウの栽培農家の息子として生まれ、弁護士の資格を持つ政治家。グラゥ氏(グロー氏とも聞こえる)も、しょうじ夫妻の件に関して再検討を求め、電話でも確認したと述べている。 しょうじ夫妻の弁護に立った Jean Codognès ジャン・コドニエス氏は自ら、自分は常に左翼だったと主張するエコロジスト。コドにエス氏も元デピュテ(仏国民議会で選ばれる下院議員)だったこともある。コド二エス氏の話では日本大使館も夫妻の件を知り、動いてくれるのではないか、と期待しているようである。 ルイ・アリオ氏はもともと弁護士でカトリック教徒、2018年まで極右翼系のマリーヌ・ペンで知られるあのフロント・ナショナルもしくは国民戦線党の党員である、とのことで驚いた。と、いうか、8年越しのマリーヌ・ペンの恋人である。籍は入れてないが生活をともにしているらしい。二人の間に子供はいないとのこと。2018年からは国民戦線党は名前を変えて国民連合党 ラソンブレ・ナショナルになっている。極右翼と言えば、移民排斥主義のようなイメージが定着している党である。ルイ・アリオ氏は2017年6月から欧州議会でピレネー・オリエンタル県などを代表する議員である。アリオ氏はおそらく良きフランス国民に恥じない模範的は農業従事者として頑張る夫妻がまるで犯罪でも犯したかのように国外追放になるとは、とショックを受けた趣旨のことを語っている。ワインはフランス国民にとってアイデンティティのような位置を占める、と私は思う。キリストの赤い血ともされる聖域の飲み物である。だから修道院でも昔から栽培されてきたのである。その聖なる飲み物を日本からやってきた若い夫婦が精魂込めてフランスの自然環境も配慮しながら造るのだ。最近のフランスは宗教的に多様化しており、無宗教的な傾向が強い。が、一方でクリスマスを祝うためのキリスト教的な飾り物を公共の場からはずす政府の決定をマリーヌ・ペン氏は嘆いておられたが、実は私も特にキリスト教徒ではないとしても、なんだか、それはフランスの伝統の一部だったんじゃないか、という気がしてちょっぴり賛同してしまった。 しょうじ夫妻が身分の変更のために申請しなければ、誰かに密告でもされなければ、そのままいけたのだろうか。しかし自分たちのワインで起業した形になった時点で正直に申請したことがあだになった形で返ってきたような感じだ。 夫妻は2011年に渡仏後、ブドウ栽培から赤ワイン造りまでをディジョン大学の学生として、ボルドーやブルゴーニュで修行を積み、oenologie 葡萄酒学及び農場責任者の技術者資格を取得したらしい。2017年に自分たちで10万ユーロ(約1300万円)の自己資金を投資し、5万ユーロを銀行から借り、土地を購入、自分たちの手で造る有機のワインづくりを始めて今日にいたった、と。始めたばかりのワイン造り。なのにすでに高い評価を受けたのである。まさにこれから、といった出だしである。 フランス人にしてみると、フランス人でもその地域で有機のワイン造りをしている人にはそんな収入に満たない例も結構あるらしい、とル・パリジャン紙のクリスチャン・グトゥルベ氏も書いている。 この夫妻の魅力的な味を醸し出す有機の赤ワイン造りは、日本的な完璧主義者の要素が伝統的なフランスのワイン造りに生かされている。このような称賛すべきワインの製造者がフランスから追放されるようなことがあってはいけない、と語るフランスの人々。 追放しないで、と署名運動もあったようだ。私もネット上でフィガロ紙の記事で紹介されていたので署名だけした。法律だけを取るなら不可能かもしれないが、署名者がある人数を超えると助けられることもあるのだ。 かつて親を猟師に撃たれて失くしたイノシシの子供を大事に育てたフランス人夫妻が野生動物を飼ってはいけない法律があるので手放せ、という命令を受け、署名運動の力で特別に認められた例がある。何でもケースバイケースであるべきだが、行政は公正な対応をと一緒くたにしてしまうこともある。 思うに、ポール・マッカトニーも日本入国を禁じられていたが、多くのファンの要請で運命を変え、日本でコンサートをよく開いてくれるようになった。ありがとう、ポール。 確かにフランスの滞在許可証取得には規定がある。と冒頭でも書いた。 フランス国籍者と結婚している。 あるいは定期的に高額な給料を得ると証明できる場合。 ほかには戦争などの理由で亡命を認められた場合。 これは一般のフランス人にもあまり知られていない。 昔、パリでイランからの亡命者の若い女性がクラスにいたことがある。 彼女はフランスで懸命に勉強し、やがて母国に戻り、子供たちに教育を施したいと願っていた。 彼女の住む地域は毎日のように爆弾に脅かされ、家族もまた危険な状態にある、と話していた。 最初は冷静に話していたが、その内涙にくれた。 たぶん、その頃か、中近東の11歳の少年が書いた言葉がフランスの新聞ル・モンド紙に掲載されていたことがあった。「僕の国は物心ついた時から戦争をしています。世界のどこかには戦争のない国があるそうですね。僕も早く戦争のない国になってほしいと願っています」 またポルポト政権で家族親戚を抹殺され、命からがらでフランスに亡命を申請したカンボジア人の男性はパリのメトロで鞄の屋台を引いて売っていました。 さて、それにしても、おいしいと定評のある日本人夫妻のワイン。 15万ユーロあるいは約2千万円相当の投資をして一年後、どんなに上質のワインを出荷しても、元手を取るのはまだ先の話だという人間にいきなり国外退去を命じるのは酷だ。投資をした時は2020年まで有効な滞在許可証を持っていたわけだし、あくまでフランスの法律を尊重する姿勢はくみとってもらえるのではないか。それと大事なのが、お二人ともフランス語は日常語はもちろんフランスの資格を得るほど勉強はされている。これは滞在許可証申請時に移民局でわざと日常的な質疑応答でチェックされるが、夫妻はこの点も完璧にクリアされている。 南仏にはイギリス人夫妻がやはりワインを始め、コティニャックにお洒落な店もだした。 南仏の夏場は特に観光客も多いので、なんとかやっていけるのだろう。 有機栽培で村おこしをした南仏コレンスにはかつてブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリ元夫妻もロゼワインを高額な値段で完売していた。日本でも販売されていると思う。最近はどうなってしまったのかわからないが、どちらにしても、実際にワイン畑は昔からブドウ園農家が携わってきたので、ピットさんがいなくなっても何らかの形で続いているのではないだろうか。 フランスで頑張ってきた日本人夫妻が法律的に晴れてフランスで農業従事者として滞在許可証がおりますように。仮にモンペリエ裁判所が滞在願いの要請を蹴った場合、フランス大統領に直接恩赦をお願いする方法が残っています。しょうじ夫妻の弁護士の方はご存知だと思います。 la grâce présidentielle si la juridiction saisie rejette la requête en relèvement d'interdiction du territoire, il vous reste la possibilité de saisir le Président de la République d'un recours en grâce. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 13, 2018 11:33:10 PM
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