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カテゴリ:France
フランス国内のピレネー・オリエンタル地方でワインの専門家や愛好者から高い評価を受けた上質の有機赤ワインを造りながら、国外退去を通告された日本人夫妻の記事を詳細にまとめて書いた一人のフランス人記者、リュック・ルノワール氏。
夫妻は各報道機関の記事や5万人を上回る署名運動のお蔭もあってか、現在は検討中で国外退去は保留とされている。 ル・フィガロ紙の青年記者ルノワール氏の記事のお蔭でこの日本人夫妻が抱える問題をより詳細に知ることができた。短時間でよく調べたなあ、と思った。調査力、まとめ方、プロだから当然よ、と言われてしまえばそれまでだが。なんか特別思い入れもあったのか、と思うほどだった。しかし、それは彼の普段からの姿勢と信念から生まれたものだろうと思う。 リュック・ルノワール氏は現在、ル・フィガロ紙の新聞記者で当新聞サイトに個人のブログコーナーもあり、本人の個人的な意見も載せている。彼個人の twitter には、日本人夫妻に関して「最悪なことは、この愛すべきカップルが味わった出来事を本人たちは恥と感じているのだ」と驚きの念をコメントしている。 「国外退去」の通知を「恥」の概念で受け止めてしまう日本人のリアクションは恐らく多くのフランス人には不思議にうつるだろう。同様のことがあると、よく泣きわめく映像が報道される。それがいいとか悪いとかの話ではない。 日本人としてこの気持ちは何となくわかる。無念さと入り混じった恥の概念。 それは日本が戦争をしている国ではないことや日本から追放されたわけではないこと、日本人としての自尊心があるからではないか、と思う。日本が嫌いでフランスに抜け出したわけではなく、フランスワインに魅了されたから自由意志で夢をかなえにフランスにやってきたから。 さて、フィガロ紙の記者の話に戻る。 記者はフランス海軍の予備役将校 officier de réserve でもあるそうだ。 「予備役将校」と言えば、アメリカ軍にあるが日本の自衛隊にはないそうだ。 リュック・ルノワール氏はフランスのグランゼコールの一つである ESSEC を卒業後、2017年からル・フィガロ紙の記者である。その前は、パリ・ソルボンヌ大学で現代史の修士号取得、ボルドーのモンテスキュー大学で政治学の修士号取得、ボルドー政治学院で政治経済分野での修士号取得、TOEICは980のスコア、ドイツ語も理解する人らしい。 日本語で「ルノワール」と書いたため、画家のルノワールの親戚かも、と一瞬思ったが、画家は Renoir で 新聞記者は Lenoir さん なので関係なかった。 リュック・ルノワール氏は最近では、第二次世界大戦中のフランス海軍に関する歴史本を出版している。この本の読者はやはり著者リュック・ルノワール氏の調査力と分析力を称えていた。 ナチスの脅威と占領に抵抗し、シャルル・ド・ゴールは1940年6月18日、ロンドンからBBCを通じてフランス自由 France libre を提唱し、フランスは闘い続けるべきだ、と伝えた。これは当時のペタン将軍がナチスと協定を結び戦争を終結させる意図と衝突した。ルノワール氏は当時のフランス海軍の話はあまり知られておらず、その視点から歴史を調査した。 Luc-Antoine LENOIR "Résister sur les mers" 電子図書としても出ている。日本語版はまだ存在していない。 フランスの特に戦後史に興味のある人には呼んでみたい著書の一冊だろうと思う。 Jonathan Siksou reçoit Luc-Antoine Lenoir sur Rcj ルノワール氏が自著について語る フランス語 ルノワール氏の著書とは関係ないが、ナチスの脅威に落ちつぶされそうになっていたフランスに大きく協力した話として米軍によるノルマンディ上陸作戦が有名で、1962年のアメリカ映画「史上最大の作戦」にもなっている。フランス語版の題名は le jour le plus long 。 この偉大な映画は実話と違うシーンもある、と当時のフランスの軍人Maurice Chauvet氏(1918年6月12日ー2010年5月21日)が語っていたそうだ。映画製作にも助言者として立ち会ったが、監督は助言にも係わらず、作り話をあちこちに散りばめたそうで、一人の元フランス軍の助言者は頭にきたのか途中でその場を去ったそうである。パラシュートで降りてきたアメリカ軍がナチスに銃殺されるというぞっとするシーンは明らかに作り話だそうである。 映画は衝撃的でないと話にならないと脚色されることは多いので鵜呑みは禁物であるけれど、よく宣伝効果のために利用される。「姥捨て山」の日本映画を観たフランス人に日本は年よりのばあさんを山に捨てるんだってね、と北フランスでも南仏でも聞かれたことがある。自分は少なくとも、そのような地域に生まれていないので、親からもそんな話は聞かされたことがないし、日本は今はどうかわからないが、年上の人間には敬意を示すものという風潮で自分は育ったから、と言うので精一杯。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 14, 2018 10:00:17 AM
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