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カテゴリ:ニュース解説ーデザイナー
昨年秋頃から噂のあった、「クロエ」のデザイナー、フィービー・フィロが辞める、という話、残念ながらとうとう本当のことになってしまったようだ(参考までにロイターのサイトをご紹介しておく)。一昨年誕生した愛娘や家族との時間を大切にしたい、という理由で、フィロ本人からの申し出であったようだ。
リシュモングループの「クロエ」は、先代のデザイナー、ステラ・マッカートニーの頃から人気を伸長し、デザイナーがフィロになってからも、女性らしい目線で打ち出した等身大のリアル・クローズと、お洒落で使い勝手の良いバッグの双方の人気が益々沸騰、世界的に売り上げが絶好調で、この1年間で倍増の勢いだとの話も聞こえてくる程である。 昨年はアジア地区では上海、北京にもショップがオープン、中国市場への進攻も始めていた。日本国内でも、今月、青山に新店のオープンが予定されている矢先のことで、リシュモンさんにとっては大きな痛手であろう。 さくらの所得では、セカンドラインの「シー・バイ・クロエ」くらいならまだともかくとして、ファーストラインなんてそうそう買える身分ではないが、コレクションの内容はここ数シーズンやはり非常にバランスの取れた良い内容だと思い、個人的には高く評価していた。フィービー・フィロは、今が脂の乗り切った時期だと思っていただけに、非常に残念である。 しかし、フィロさん個人の人間としての幸せって何だろう、と考えると、ご自身が大切だと思われることを重視する、というのが一番なのだろう、という気持ちになる。ファッション業界は、一見華やかで楽しげな業界に見えるが、日本国内のMDブランドを展開するアパレルさんを見ても非常に長時間労働で過酷な業界だ。 プライベートをかなり犠牲にしなければ続けていける業界ではない。まして、世界のトップレベルを走り続け、年2回(クルーズラインも含めると3回か)のコレクションをコンスタントに発表し確実にヒットを飛ばす、というのは、並大抵のプレッシャーではなかったことだろう。 ドナテッラ・ヴェルサーチが、一時期ドラッグ中毒に苦しんでいた、というのも、そういう業界事情を考えると、わからないでもない気がする。 だから、自然体を旨とするフィロが、自分の心に従って家族を選んだ、というのは、たぶん正解なのだ。本当に、心から彼女の今後の幸せをお祈りしたいと思います。 しかし、個人としてのデザイナーが辞任とか、引退、といった時を迎えても、ブランドを経営する企業体はビジネスを存続していかなければならない。現時点では、後継デザイナーはまだ決定しておらず、3月のパリ・コレクションでは現存のデザイン・チームがコレクションの発表を行う模様だ。 その次の、2007年春夏シーズンについてだが、Roland Mouret(ローランド・モーレット、フランス語読みだとローラン・モーレ)が最有力ではないか、と言われているそうだね。但し、現時点では、リシュモンさんからのこの件に関する公式なコメントはまだないようだが。 ネットを検索していると、VOGUE NIPPONさんのサイトのこんな記事がヒットした。モーレットは、昨秋、自身の名前「Roland Mouret」を冠したブランドのデザイナーを辞任しているそうだ。そういう意味では、確かに「クロエ」の仕事を引き受けやすい条件にある人材、と見ることができるだろう。 一般のファッションファンの方も早くもこの件についてのエントリを上げておられる方が何人かいらっしゃったが、その中に幾つか、「モーレット氏は(他に候補者として名前が挙がっているヘルムート・ラングやジル・サンダーに比べて)地味ではないか」といった趣旨のものが見られた。 成程、普通の方、というのは、やはりそういう見方をされるのだなぁ、と思って読ませて頂いた。さくら的には、というか、業界のプロの多くは、逆の考え方だと思います。 というのは、既に知名度の高いデザイナーに支払う契約料と、新進もしくは中堅クラスのデザイナーのそれとでは、金額に相当な差が出る、ということ。それから、マーケットに対して色のついていないフレッシュなイメージを打ち出せるという意味では、明らかに名前が売れすぎた人よりもモーレットのような人の方が費用対効果が高くなる、と思えるからだ。 今日私も初めてじっくりとローランド・モーレットの公式サイトを見たのだが、フェミニンでなかなか美しい服を作る人である。「クロエ」の客層は若く、「フェミニン」という今までのポジショニングはキープするのが得策だろうから、適任な人材だという気がする。 フィービー・フィロとの違いは、ややミニマルな雰囲気にあるなぁ、と思っていたら、VOGUE NIPPONのサイトのコレクション評の中には、「モーレットの特徴は40年代調のアワーグラスシルエット」云々の表記があった。成程、確かにどの服もウエストをきゅっと絞ってある。こういう服、昔からモーレット氏が衣装提供している女優さんの中では、特にニコール・キッドマンには最高に似合っているようにさくらは思うんですよね。 まだどうなるかわからないが、リシュモンの公式発表を楽しみに待ちたいところである。 PS.蛇足だが、Googleで英語で検索したところ、Phoebe Philoの57,700件に対して、Roland Mouretは、何と105,000件の圧勝である。モーレットは、ロンドン~ニューヨークと、英語圏で活躍してきたからだと思うが。しかし、ファッション業界の場合に限っては、必ずしも英語圏での情報発信で優位に立つ方が良いとは限らないんだけどね。 人気blogランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年01月07日 21時25分53秒
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