しろやぎさんからのお手紙

祖父母が住んでいた家が、売れたのだそうだ。


幼稚園の頃、弟が入院していたときに、
アタシがずっと預けられていた家。


週末の夜、奥の部屋で祖母がドリフを観ていて、
厳格だけどやさしい祖父が居間に居て、

お釜でごはんを炊いていて、塩っ辛いお魚が焼かれていて、

夜になると動物園の動物たちの遠吠えが聞こえてこわくて、、、


そんな家が、お嫁に出て行くのだそうだ。


『ピアノ弾いちゃだめだよ』


家の裏のお寺でお葬式があるときは、いつもそう言われた。

そのお寺の、駐車場に生まれ変わるのだそうだ。


『売れて良かったね』


そう言いながら、実はちょっぴりさみしい。