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縁あって、美輪明宏氏の 『 毛皮のマリー 』 を 観劇する。 地方都市に在って、演劇舞台には無縁、といっていい程で(悲)、 『 毛皮のマリー 』とは、寺山修司氏が美輪明宏氏のために書いた、という 「 伝説的な名作 」であるらしい、ということ。 出演者全てが男性であり、美輪さん演じるマリーの息子である、 美少年・欣也役 を射止めた俳優さんは、軒並み大活躍して行くらしい、 との噂しか耳にしておらず。 お名前だけは よくよく識ってる寺山修司氏に対する知識がまるでない。 せいぜいが、学生時代に、 1960年に、若手の文化人中心に結成した『 若い日本の会 』 ( 大江健三郎、谷川俊太郎、永六輔、開高健、江藤淳氏らそうそうたるメンバー。 何故か、石原慎太郎氏も(滝汗) )で、安保反対闘争をした由に興味を覚え、 『 書を捨てよ、町へ出よう 』を少し齧った程度。 後は、彼の作品だと知ってて聴いていた 『 戦争は知らない 』、『 時には母のない子のように 』等。 それから来る漠然とした 反戦的アングラの権化的?イメージ、だけを 抱いて出掛けたのであったが。 まるで 横尾忠則氏の作品のやうではないか?? と思った私の感想は的を得ていたようで、 後でググると、初演当時には、 美術・横尾忠則氏であったらしい。 現在の演出・美術は美輪明宏氏なので、 このチラシが横尾氏のものかどうかは不明。 結果は、惨敗であった。(-_-)。 まず、シチュエーションをなんと理解していいのか判らない( ┬_┬)。 席は11列目のど真ん中、という好位置に在って 美輪さんは驚くほどお綺麗であるのだが、 登場人物たち全てが壊れており、 全てが頽廃美のなかで、その美ですら 醜悪醜怪にしか感じられず。 徐々に シチュエーションそのものが見えてくるも、 虚実入り乱れた意味深な言の葉が 矢継ぎ早に「 てんこもり 」で、 そのひとつひとつを味わい、噛み締めるまでに至らず、 私は消化不良を起こしまい、不快にすらなってしまふ( ┬_┬)。 これはいかん! 単純に楽しもう! と、途中で意識を切り替えようと努力する。 しかし 役者さんたちの滑稽な演技、台詞まわしに 笑っている方々もそこここにいらっしゃるのに、笑えない。 楽しめない。 むぅ。 なんでだ。> ぢぶん これでもか、と 繰り広げられる【 壮絶 】な愛憎劇は、 私のなかで 深い哀切なる想いにまで行き着かず、 閉じられた世界の外に、きのこ雲。 剥きだしの鉄骨、壊れた柱時計。。。 被爆直後のヒロシマの惨状を連想させられる背景に、 それを 「 象徴 」 なのだと受け止めきれず、 唖然、茫然、おなかいっぱぃ、な気持ちにさせられてしまう。( ┬_┬) が、ラストシーンのなんと美しいこと。 「 真実 」を知ったマリーの息子・欣也が マリーのもとから出て行き、 それをなかなか信じられず、欣也を探し求めるマリー。 そこへ傷だらけになって戻って来た欣也を手当し、欣也と遊ぼうと 「 もういいかーぃ 」と しゃがんで両手で目を覆い、 かくれんぼの鬼になったマリーの横に。 欣也が初めて自らの意志で マリーのこころに近付こうと、しゃがんで両手で目を覆う。 そのふたりの上から白い雪が舞い降りて 幕――。 圧巻はカーテンコール。 きのこ雲であった背景は、巨大な金色の孔雀に変わり、 支え合って立っている 白衣のマリーと欣也の上に降り注ぐ金の雪――。 美輪さんも、欣也役の吉村卓也くんも、 この世のものとは思えぬ美しさ、である。 ここに至って 俗なる毛皮のマリーは、 聖なるマリアである、こと に やっと得心が行き、 「 毛皮 」がコートではなく、黒の細長いショールであったことにも合点がいく。 美輪さんのマリーは、マリアというよりは 慈母観音――。 降り注ぐ金色の雪は、雨であり、曼荼羅華であるかのやう。 私にとっては、 ただただ このシーンのために、この舞台は在ったかのやうで、放心状態。 周りの皆が席を立つ。 つられて私も立ち上がる。 スタンディングオベーション! 最初に幕がおりたとき、 ヴラボー! と叫んで立ち上がったひとは数人であった。 皆も 私のやうに放心状態であったのだろうか?? この世のものとは思えない、美しき2人へのカーテンコールでは 観客全員総立ちで、熱狂的な熱い拍手が送られ、 美輪さんの金色のオーラを受けやうと、両手を掲げたまま立ち尽くすひとも。 ぅぅむ。 演劇初心者である私には 途中までは ヘコむ程 ヘビィ過ぎる難解な舞台であった。 翌日、1日中考え尽くして ようやく消化できたように思う。 ( 私にとって ) 『 毛皮のマリー 』 は、 何度も観て、 場面場面を得心していくもの、なのであるのかも知れない。 あの不快なる 醜悪さ、猥雑さは 人間界そのものであり きのこ雲は まさに その醜悪の象徴。 その泥のなかから 咲く 蓮の花二輪 の聖なる美しさは、 泥のなかに在ったればこそ、であることに。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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