ピエロ。
人生において今日ほどショックな日は記憶にない。 最も信頼していた人々に、最も生きていく上で私が大事にしていた「義」を欺かれた。 知らなかったのは私だけ。 二人には約束したはずだ。必ず“事前に”「仁義」を切るように。 この事実を憎むことはしない、ただ心の傷は一生癒えない。 私を踏み台にして最高の幸せを二人で掴めばいい。 長く培った深い絆よりも、そこから派生した女への愛情か、それもいい。 結局は私の役割は、二人のために「2年間の契約で雇われた」ピエロに過ぎなかったのだ。こんな経験をするほど惨めなものはない。 責任を負わない無責任な他人からすれば些細なことかもしれない。 しかし、この事実は当事者である私自身にすれば今後生きていく上で一生重く被るもの。 仁義を軽んじて、誰かを踏み台にして生きていく人生、私にはできない。 タブーは侵すためにある、だから信頼を得ていたはずの人間関係も裏切るのか。 近々に、これまで培った絆とすべて決別する。 結果を問うているのではない。何故に、私が“死ぬ気”で別れを覚悟し、最後の善意としてお願いした「約束」を守ってくれなかったのか。その一点だけは許しがたい。 幻想の絆よ、さようなら。 弱い人間と言われても構わない、せめて自分自身の不器用な「心の仁義」だけは裏切りたくはない。