赤眼の姫巫女「第14話」
嫌な予感は、当たる。それは「第六感」の働きに寄るものだろうか。「おいっしっかりしろよ!!レイヴィスっ!セアラ姉!!!」二人にアレンは叫ぶように言った。その声に反応するかのように世亜羅の手がピクリと動き、重たい瞼を上げて、アレンの好きなその緋色の瞳を動かした。かすれるような声、アレンはいつもの彼女の声と違う声を聞く。「アレン・・逃げろ・・・あいつの思うつぼだ・・・・」「セアラ姉・・!?アイツって・・・?」「・・・・・・・・・・っ!!」世亜羅は、アレンの後ろで笑うモノを凝視した。気づかないうちに、彼を葬るつもりなのか。そんなことはさせない。たとえ私の身が滅びようともアレンを殺めさせはしない。だが、私には力がない。何故私は男ではないのだ。何故大切な者を守る力強い腕がない。アレンを守るための力が欲しい。力が・・・・・・・・・・!!!!!!アレンが、彼の後ろに居る三人目の存在に気がつく前に、血塗れの彼女がアレンをかばった。その手には持っていなかったはずの剣が光っている。それがイルキュタスの魔法攻撃を弾いたのだ。美しい紅を煌めかせているそれは神々しい紅玉で出来ているかのような切先。彼女の手に良くなじむ柄は漆黒に艶めく木で出来ている。それでいて重さを全く感じないのは正に『赤眼の姫巫女』のみが扱える「宝剣」と言うに相応しいものだ。「・・・・・これは・・・」「セアラ姉・・・・・」「あらあら・・・・さっきまでの木偶の棒とは訳が違うっていうのね・・?」アレンがその異形なものを凝視した。にやりと吊り上げられた唇をみて、こいつが世亜羅とレイヴィスを痛めつけた生物だと理解する。「誰・・オバサン・・・・・・」「っ・・・・(巫女が”姉”でアタシが”オバサン”ってどぉいうコトかしら・・) まあいいわ・・ アタシは闇の国、エレヴァスのイルキュタス。 アナタが”あの使徒”の生まれ変わり・・・ 随分と小さいのねぇ? フフフ、よろしくね?美味しい美味しい「使徒」ちゃん。」その異形なものが話すもの。それが先ほどまで信じないと叫んでいた話そのものを肯定しているかのように、アレンは悟る。あの使徒、そして生まれ変わり。闇の国エレヴァス・・・・。イルキュタスはアレンの前で彼をかばうように剣を構える世亜羅に視線をやり、そしてアレンに言う。「そうそう忠告、っていってももう必要ないかしら? 坊や、この女を信じてはダメよ?」「・・・・・・・・・」その先は、アレンも世亜羅もよく知っていること。「前の使徒みたいに、信じて、信じて、愛して、愛して、 それでも結局、裏切られちゃうものね?」「・・・・・っ・・」「ふふ、坊やが余りにも可愛いから、 余計な事を言ってしまったわ。・・フフ・・」「で、だから何だっての? 別に関係ねーだろ。」「関係ないって・・・・・」「・・・・なんだよ?」信じない。そんなこと、あるはずないじゃん。 使徒なんて、巫女なんて知らない。「アレン・・・・・」そうだ、オレはただの「ガラス玉」。セアラ姉だってどっかの国からきた見知らぬ髪の色をもった人種。今では24番街の母親役の口うるさい「ウルフ」なんだ。「・・・まさか、アナタ・・まだ洗礼も受けてないの・・?」「だからなにワケのわかんねーこと言ってんだよ!」「あ・・・・・アハハハハハハ!!!!!!!」いきなり気が狂ったかのように笑い出す怪物。「力も満足に使えないなんてっ!? それじゃあ今が喰べ頃ってコトかしら!?」そう笑いながらアレンに向かってくるイルキュタス。その長い爪の手には魔力を固めたものが光っている。世亜羅はその剣を構え、一気にイルキュタスとの距離を詰めるべくイルキュタスに向かった。「アレン!下がっていろ!!!」「セアラ姉!?」「ふふふふ・・まだやる気なのね?赤眼の姫巫女さん・・・ でもアナタじゃ無理よ! さあ!あの使徒の美味しい血を今一度”あの御方”に!!!!!」それまでの女性の顔とはうって変わり怪物と呼ぶに相応しい形相でイルキュタスは叫びながら向かってきた。「私は無力ではない!!!刺し違えてでも貴様を倒す!!!!!!!」そう叫んだ直後、辺りは閃光に包まれた。+++++