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カテゴリ:読書
「苦い林檎酒」(ピーター・ラヴゼイ)を読みました。
ほとんどの人が、その名を聞いただけですぐ、何が起こり裁判では何が争われたかすぐに頭に浮かぶ有名な事件。 犯人はすでに絞首刑となり、関連する本がいくつも出版され、法律の世界でも評価の固まった完全に過去の出来事。 当時少年で法廷で宣誓なしの証言をした主人公の元に、ある日、父親の無実を信じ汚名を晴らそうとする、ひとりの女性が現れ…。 というようなハナシ。 犯人とされた人物が本当にクロだったのか、それとも…という謎自体は、前半の事件当時の回想シーンでだいたい目星がついてしまうのですが、最後の最後まで、読ませてくれます。 時代設定は1940年代から60年代にかけてですが、キーとなっている、「記憶」の不確実性とか、証言の証拠能力といった問題は、なにかにつけ心情に訴える今の時代、タイムリーな気がしました。 ストーリーの本筋に直接関係ないところにも、楽しめる要素がいっぱいありました。 ひとつには、タイトルにある「林檎酒」作りの詳しい工程について書かれているところ。 戦時中のアメリカの大農家での、のどかな農作業の風景が書かれているのを読んでたら、頭ン中を「大草原の小さな家」の音楽が流れてきました。 それから、その土地独特の言葉をGIが収集する、というところ。 この人物の性格が分かるところですが、私もそういえばやったなと思って。 初めて大阪の小学校に来たとき、授業中ずっとセンセが何回関西弁のアクセントを使ったかを正の字で数えたりもしました。 高校生になっても、「場所」が「馬車」に聞こえたりしたものです。 そして、この作者は、以前読んだ「バースへの帰還」などダイアモンド刑事シリーズをのちに書く人で、この作品でもチラッとですが、「バース」や「ジェイン・オースティン」を入れています。 この人の作品が、かな~り好きになりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.07.11 16:24:32
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