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カテゴリ:読書
「葉桜の季節に君を想うということ」(歌野晶午)を読みました。
ずっと同じ作家ばっかり読んでるし、ここらで新しい人を発掘しよう!と、私にしちゃ珍しくちゃんと本屋さんで新しいのを買った。のに、失敗した。 久しぶりに読んでて気分が悪くなった。東野圭吾の容疑者Xの献身以来。 タイトルから勝手に、ロマンチックではかない要素があるミステリなのかなと想像していました。ミステリと分かったのは帯に2004年このミス第1位と書いてあったから。ほかにもナンタラ受賞カンタラ受賞と書いてある(お金出してもいいように思ってしまった)。 でも内容はタイトルのイメージとは全然違います。 ミステリ&ピカレスク&トリック? この小説には話の内容以外に読者を驚かせる仕掛けがあります。その構成自体は面白いと思うけど、この作者のシュミが悪くて楽しめない、私には。 トリックの内容を明かすとこれから読む人の楽しみを奪ってしまうので意見を書くのが難しいですが、要は作者の目線が気に入らないってことかな。。 ある人があるサイトで、今の日本では自分より下にあるカミサマがもてはやされるというようなことを言ってて、はぁなるほどうまいこというなぁと思ったことがあります。 お犬様猫ちゃん孫などなど。ブサイクな人を「癒し系」なんていってちやほやするのもそんな心理ではないかと思う。 自分より劣っているものにやさしく寛大な心を持つことは心地よい。 この小説の老人の描き方には、そんなものが透けて見えるように思えました。 時間は一定方向にしか流れないから、経験していないことは想像するしかないわけですが、作者から見て主人公やその周辺の人たちは、こんな風にしか描けないのか。そういう風に見ているのか、薄っぺらだなという感想を持ちました。 小説としてピカレスクという世界を描くというのは、ありだと思います。好きな作品もあります。 でもそういう内容を描くときは、最終的に正義とのバランスが取れていなければいけないのでは。そして何より、主人公が魅力的でなくては。 この作者がよしとしている価値観がダメなので、そこに失敗していると思いました。 結局、私はこの作家の価値観が嫌いなんだと思う。 でも、こーゆー本が売れて1位に選ばれるんだから、今の日本は概してこーなんだろうとも思う。 ただ、この小説はさまざまな小細工で失敗しているものの、芯のミステリーの要素はちゃんとあります。それが、小細工にゴテゴテにされて見えにくくなっているのが残念。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.09.08 13:07:56
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