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カテゴリ:読書
「地下墓地」(ピーター・ラヴゼイ)を読みました。
ダイヤモンド・シリーズの第6作目です。 おどろおどろしいタイトルから想像するようなホラー的要素はありませんが、この短い日本語は小説全体の視覚的イメージをうまく表していると思いました。 それはひとつには、原題は「THE VAULT」(アーチ型の地下室というような意味のようです)ですが、その地上には有名な浴場の遺跡があるAbbey Church Yardという広場があり、その地下から人骨が発見されたのが事件の端緒だから、ということもあります。 さらにより「視覚的に」という意味では、「フランケンシュタイン」やウィリアム・ブレイクが使われていて、読者はそれらから不気味なイメージを膨らませて読むという仕掛けになっているからでもあります。 今回もバースが舞台です。そして、小説「フランケンシュタイン」の大部分が書かれたのが、バースのアベイ・チャーチヤード5番地なんだそうです(ここも見てみた)。 といっても、フランケンシュタインって、私、よう知らんのだけど。。 何度も映画になっているのは知っていますが見たこともないし、見なくてもそのキャラクターが一人歩きして、何となくその怪物がフランケンシュタインのような気がしていましたが、全然違うみたいです。 この小説の中で語られている小説「フランケンシュタイン」(映画でなく原作の方)の内容を読むうち、私が思い出したのは、クーンツの「ウォッチャーズ」でした。 フランケンシュタインを読んでいないという部下にダイヤモンドが「キングとは違うからきっとがっかりするぞ」というようなことをいう場面がありました。プッ、確かに。ウォッチャーズのアインシュタインに感情移入してクーンツをいくつか読みましたが、全然楽しめませんでした。。 ウィリアム・ブレイクも全然知らなかったので、読み終えてからちょっとネットで見てみました。ま、文中から想像していたほどではありませんでしたが、んー…。 宗教画的要素があるものは私には理解できません。が、前に出てきたターナーの茫洋としたものと比べると、具体的で分かりやすいようには思います。 で、そんな素材を使って進められるストーリー自体はどうかというと、今回も、読み終わって、やるねぇ!と思わされました。 イギリスには時効がないのか。時効があるからこそのハラハラもあるけど、ないからこそ時間を自由に行き来したり人物を深く描くことも可能だったりするのだな。 前作までは、すぐにかんしゃくを起こし周囲と衝突するダイヤモンドの脇にジュリー・ハーグリーブスがいて、トラブルを回避するよう計らっていましたが、今回からジュリーがいなくなり、より同僚たちとの関係が濃密になっていく様子が描かれています。 新しく女性の上司がやって来て関係に戸惑ったり、宿敵ウィグフルが倒れることでこれまでと違いウィグフルの仕事ぶりに敬意を払っている様子が描かれたり、部下たちの奮闘ぶりをみつめる目、部下のダイヤモンドの仕事への絶対の信頼など。 シリーズのはじめの方で、ゴツゴツぶつかったり、回り道をしたけど、かっちょいいオッサンになってきました。 あーでも次作を読むのが、コワいなぁ。 ※ピーター・ダイヤモンドお気に入りのパンプ・ルームはこちら。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.03.29 13:58:36
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