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カテゴリ:読書
「国境」(黒川博行)を読みました。
「厄病神」で活躍した、ヤクザの桑原と一応堅気の二宮のコンビが、北朝鮮まで行く、という話。 文庫本で800ページ超と、コンパクトな辞書ほどあって、病院の待合室で読むには、ちと難儀しましたが、読み出すとぐいぐい引き込まれて、あっちゅう間に読み終えました。 今回もベッタベタの関西弁(今回も「そやし」の使い方(京都独特)だけが気になりますが)。身近な地名がたくさん出てくるのでリアルです。 会話文が関西弁であるだけでなく、会話の展開、物事を砕けた方向に例える考え方など、もう全体が関西そのもの。会話文の後に続く短い説明文さえ、会話の続きのようにしゃれが効いていたりします。 ヤクザの桑原の口から、国家間のパワーや国境について簡潔な言葉で断じられると、つい、そやな、と噴き出しつつうなずいてしまいます。 日本の高速道路も、ひとこと「政治屋どもの米びつや」と分かりやすい。 二宮のやっている「建設コンサルタント業」というのは、依頼してきた企業の事業がうまく運ぶよう、業者ごとに付き合いのあるヤクザの調整をするというようなもので、一応表向きそういう癒着は断たれたとは言っても、今も日本社会は、こーゆー複雑なシステムになっとるんかいなぁと、うんざりため息が出てきます。 それに比べれば、サラ・パレツキーの書く小説に出てくるようなアメリカの企業犯罪の世界は、あっさりしててかわいいもんだなぁ。 北朝鮮については新聞やテレビで見聞きする表面的な情報しかなく、これまで本でも数冊しか読んだことがなかったので(それも学生の頃)、この詳細な参考資料を基にした描写は驚きました。 どうしても私たちは、知ったところでどうしようもない、という気がしてしまって、関心が薄れがちだけれども、こうやってミステリという娯楽小説の中で力強く描かれると、引き込まれるように読むし、自分たちの日常と照らし合わせて、いろいろ考えてしまいます。 それにしても、こうやってヤクザの世界と、ニッポンの表社会やかの国の体制を並べられると、つい、どこが違うねん?という気にさせられてしまいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.05.17 11:51:07
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