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カテゴリ:読書
「処刑宣告」(ローレンス・ブロック)を読みました。
私立探偵マット・スガター・シリーズの15作目です。 以前、同シリーズの5作目「八百万の死にざま」を読んだとき、私的にはロバート・B・パーカーの「初秋」以来のヒットだなと思った記憶があります。内容は全然関係ないけど。 それにしても、八百万の死にざまでウツウツともがいていた時のことが遠い過去になって、シャッキリと蘇っているマット・スガターの様子が頼もしい。 5作目から15作目までに、かなりいろいろドラマがあるようで、これはまたシリーズを読んでいかねばならん。。 新聞のコラムに対する投書が筆者宛に届き、そこに予告されたとおり殺人が起こるということが繰り返され、世の中が騒然となる。 その犯人は、読んでいて案外早い段階で分かって、おお私ってすごいかもと思ったら、話しはまだまだここからでした。 新聞のコラムに限らないけど、次々に新書とか乱発する人とか、求められればすぐコメントをする人とか、すごい根性だなあといつも思います。 腕を組んでこっちをにらみつけたり、上や斜め前を指差してポーズをとったりも、なかなかできるこっちゃありません。 そこまでいうか、そんなこといえるのかと、普通の人は言えないようなことも言っちゃうことでお金をもらってるわけで、一線を越えるギリギリのところの判断が人気を左右し勝敗を決めるのだろうけど、それを長年やってると段々…という発想がとても面白いと思いました。 また、殺害の対象とされる人たちについても、ただなんとなく作り出しているのではなく、アメリカ社会についてあまり知識のない私でも、こういうことが背景になっているんだなと分かることがあり、なかなか奥深いものがあります。 事件はもう一つ起こり、スガターのAA仲間の恋人が公園で射殺されるというもの。 被害者は末期のエイズ患者で、残されたわずかな人生のために充分なお金を生命保険から得て、穏やかに過ごしていました。 この事件で登場する生命保険の商品は特殊な金融商品で、こういうことは私はトンと分からんのですが、面白いなあと思って後でちょっと調べてしまいました。 それはviatical settlementというもので、この作品の中ではヴァイアティカル取引という言葉で出て来ます。 アメリカでは80年代頃、エイズ患者が増加したことなどから登場した商品で、保険の解約払戻金ではかなり減額されるため、保険受取人になってくれる人に権利を買い取ってもらって、その時点でまとまったお金をもらうことで、残された余生を尊厳あるものにするために必要な資金を調達するというもの。 買い取った方も、1~2年のあいだに高利率で返ってくることが確実(絶対助からない人の保険だから)なので、リタイア後ある程度まとまった資金がある人の投資先としてオイシイとかなんとか。。 でも医学の進歩により、そううまくもいかなくなったり(保険のリスクが高まったり??)、倫理的に問題があるということもあって、93年にルールを定める法律ができたりして、その数年後にこの本が出されているということのようです。 この事件を通じての、物事を自分の都合のいいように考えるようになる、人間の心理の描写がうまいなあと感心しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.07.20 17:35:18
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