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カテゴリ:読書
「ウルトラ・ダラー」(手嶋龍一)を読みました。
諜報活動を扱った小説です。 書き出しにまず浮世絵が出てきたので、てっきり黒川博行の「文福茶釜」のように、いかに作るかが詳しく描かれているのかと期待しましたが、そういうハナシではありませんでした。 精巧なニセサツを、国家を挙げて作る目的は何か(ここでは軍備)、その目(作っている国家&操っている国家など)はどこに向けられているのか、といった、世界地図上のハナシ、でした。 とってもスケールの大きなハナシです。 だからなのか、地を這うように生きているワタクシメには少し、現実味を欠くというか違和感がありました。 一見、多くの人には計り知れないような世界を詳しく描いて見せているようではありますが、しっかり飛ばさず読んでいるつもりなのに文字と文字の間でいつの間にか物事がススイと進んでしまってて、なんか全然リアルな感じがしません。 知らない間に手はずを整えてあったり、都合よく事前に連絡がとってあったりして、あっそ、という気になってしまいます。 英語も日本語も堪能で、オモテとウラの二重の仕事を颯爽とこなし、恋もうまくいっている主人公。 なんでもスイスイとうまくこなしていたのに、急にボロが出てきてピーンチとなっても、ハラハラ出来ませんでした。 ついでに、知識の披露大会みたいな会話が続くのも、少々癇に障りました。 ま、そういうシロウトっぽいところはありますが、本質的には面白かったです。 一方では、情報を求め世界を股にかけて飛び回って、息を殺し会話のひとことやプライベートな領域にも神経を使う世界があり、 もう一方では、さまざまな世界でそれぞれ地道に必死で生きてきた人の日常が、ある時から突然、国家の陰謀にゆがめられてしまうという不条理な世界がある。 そういう対比が描かれているところは、よかったです。 最近ポッドキャストでCNNを聴くのですが、ま、もちろんアメリカの目線が絶対とはマッタク思いませんが、まーホント、日本ていうのは、ただの「軍事基地のある極東の小国」に過ぎない存在なんだなあと、思わされます。 この小説の主張は、すべて当たっているとは思いませんが、まあこういう視野で物を見るのも必要なんだろうな、と感じました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.08.12 08:41:11
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