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カテゴリ:読書
「白い巨塔」(山崎豊子)を読みました。
これもドラマは観ていないので、先入観ゼロで読めました。 読了後、配役を調べて、やっぱり知らないでよかったと思いました。 なんといってもまず、1960年代に書かれたものであることに驚きました。 前に読んだ、華麗なる一族の、経済界や政界への取材力も凄かったですが、それより前に書かれたこの小説では、あとがきによると、閉鎖的な医療界を取材するために医学的な予備知識の勉強から始め、医事裁判の判例を調べたりと、小説を書き始めるまでに、もの凄い調査をしているようです。 話を聞く相手が、この話の中の人たちのように、権力にまみれてたり逆に怯えていたり、権益でベチャベチャに繋がってたりするんだろうから、大変な苦労だったろうと思います。 全部で5巻あるのですが、そのうち3巻までがもともとの長さで、その後社会的に反響が大きく、続編として4・5巻ができたということですが、 私は、ストーリー的に後から付け足した不自然さは感じませんでした。 裁判で、3巻までの一審と、その後に描かれる控訴審とで、裁判所の判断が分かれ、こういった流れを読んでいくと、医師はどこまで責任を負うべきかと考えさせられますが、 60年代と今とでは、医学的に大きく進歩しているし、医事裁判の傾向も変化しているので、今の医療現場の常識や患者の権利義務(告知、インフォームドコンセント)に関する法律と判例の積み重ねなどを前提にして、読むべきではないのだろうと思います。 裁判がメインテーマではないけども、法廷での迫真のやり取りを描いている部分は、ドラマチックで、とっても読み応えがありました。 昔、NHKでやってたドラマ「ペリー・メイスン」を思い出しました。 また、法廷シーンと並んで面白かったのが、手術シーンの描写です。 映像を見てるわけじゃないんだけど、う~リアル。 ドキドキ、ワクワクします。 逆に、退屈だよ~読むの苦痛だよ~と思ったのが、医療界の権力争いの部分。 主人公の財前は権力欲が強く、それを露骨過ぎるほど表に出します。 その真逆のような、里見という医師が出てきて、余計に分かりやすい構図になっています。 タイトルからして、こういう医療界のタテ社会・権力至上主義的なものが、この小説の中心になっていることが分かりますが、 医師の仕事だけでハードなのに、ホントかねと思ってしまう気持ちもあるし、でもこういう部分が多かれ少なかれあるんだろうなとも思います。 からだのことを扱う仕事をしてんのに、煙草プカプカ酒ガブガブなのも、時代なのか。 こないだ禁煙したあるタレントがテレビで、喫煙者であるタレントに「それ(煙草を吸うこと)宗教か?」と軽く言ってのには笑った。時代じゃのう。 医療従事者はきっと、今は全然こんなんじゃないと言うと思いますが、やっぱり患者として病院に行くと、こういうふうに見えることがたくさんあります。 大名行列は病院によっていろいろで、前時代的なところは、偉いセンセが白衣のポケットに両手を突っ込み、患者には話しかけず医者同士の発表会&意見の場で、見世物の気分にさせられます。 そうではなく患者の目線で診療されているところで、世俗的な損得勘定からは超越して仕事をされている医師でも、病院の中の偉い人や地域の病院とのややこしい関係があるんだなあと思わされることもあるし、製薬会社の息のかかった講演会に借り出されてたり、なんやかんやあるように感じます。 この小説のモデルは、あの大学だと思いますが、大阪は特に、医師不足・医療の質における南北問題が深刻で、近畿労災病院とか近畿医大とか関西医科歯科大とか、ありそうななさそうなところが出てきてリアルでした。 まあでも、この小説には関係ないけど、逆に患者をヘンに「お客様扱い」する勘違いな対応も、白々しくてイラつきます。 苦情言わないでね、訴えないでね、お願い…、みたいな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.09.05 17:31:40
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