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カテゴリ:読書
「友は永遠(とわ)に」(ルース・レンデル)を読みました。
この人の本は面白いと聞いていて、ずっと読みたかったけど、絶版のものが多く、これまで本屋で見かけたことがありませんでした。 こういうものを古本屋で見かけたときにこそ、喜びがあるというもの。 このタイトルは光文社の本のものです。もう一つ「死を望まれた男」というタイトルのものが創元推理文庫から出ています。 どちらも「The Best Man To Die」という作品の翻訳本です。紛らわしいなあ、もう。 死を望まれた男の方が、タイトルをつけた作者の意図を尊重しているし、ミステリーのスジからも合うように思います。 友は永遠にとすると、作者の思惑を超えて、読みながらあれこれ邪推してしまいます。が、最後の部分をより生かすという効果があるという意味では、よいタイトルかもしれません。 作品全体をどう捉えるかで、タイトル一つでもこんなに変わるのだなあと思いました。 この一文は怪しいぞ、このせりふは重要なヒントになるはずと、付箋をつけたところは全部罠でした。 そんな偽のヒントが、あちこちに散りばめられています。先日読んだジェフリー・ディーヴァーの言葉で言えば、読者の目の前にわざと吊り下げられています。 だからタネ明かしのところまで来て、なんと~!と驚きました。 でも、なるほど~という説得力は少し不足しているように感じました。 長く続くシリーズ物だということで、主人公のウェクスフォードだけでなく、部下や娘など、恐らく毎回登場する周囲の人物についても、掘り下げて描かれているだけに、真犯人の人物像や動機、犯行の詳細な様子の描写が、少ないように感じました。 でも、この作者の本が多くの人によく読まれているというその魅力は、よく分かります。 たとえば、晴れた日の朝の輝きの情景を詩的でロマンチックに描写するなど、目に見えるようなみずみずしさが感じられます。 そして、たんに善人、悪人ではなく、どの人物にもそれぞれ欠点があり、それでも愛すべきところがあるという風に、登場人物の特徴がしっかり描かれているところが、優れていると思いました。 また偶然この人の本に出合えたら、読んでみたいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.03.21 23:36:24
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