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カテゴリ:読書
「魔術師」(ジェフリー・ディーヴァー)を読みました。
リンカーン・ライム・シリーズの5作目。 前回の「石の猿」では、登場人物の一人がリンカーン・ライムはまるで孫悟空だと言い、今回は魔術師にうってつけだと言う。 どちらも、車椅子から動けない人と、これほど正反対なものはありません。 この作者は、徹底して大衆の固定観念をひっくり返すことを考えているようです。 タイトルに「魔術師(イリュージョニスト)」とあるのを見て、なるほど~イリュージョニストを訳者は魔術師としたのか、この日本語は簡潔で語感もいいし、ウマいなあと思っていましたが、原題では「消された男」という、作品の中で重要な鍵となる言葉でした。うまい。 犯人が消えるだけでなく、リンカーン・ライムもまるで「消された男」だというわけです。 確かに存在しているのに、人々の目に映らない。そういうことは、私にも分かります。 必要以上に凝視したり、嫌悪感を顔に出したり逆に必要以上にいい人ぶった顔をされたりすることもあれば、無意識にあるいは意地になって見えていないふりをする。 そういう扱いをされている人は、それが武器だという訳です。 愉快な発想だと思いました。 リンカーン・ライムのような人を主役に据えようと考えるところから、すでにこの作者の、読み手の固定観念や先入観をひっくり返してやろうという意図がうかがえ、そういう価値観に読者も共鳴しているのだと思います。 そういう価値観は、ストレートに言うとスマートでなく反感を持たれがちで、こういうエンターテインメントに包むのが効果的なのでしょう。 それにしても今回は、どんでん返しも、極まれりというかやりすぎというか。 とんでもないことが軽いタッチで次々起こりすぎて、ハリウッドちっく過ぎ。 こう思ったでしょ、でも実はこうなんだよ、ってそぶりを見せたけどこうなのだ、な~んてねホントはこうだったのだ~とやられると、勝手にしてくれという気になります。 シリーズのこの後の作品では、どうなっていくのだろう。文庫本になってさらに古本で手に入るようになったら、読も。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.05.15 18:31:40
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