|
カテゴリ:読書
「アリバイのA」(スー・グラフトン)を読みました。
女私立探偵キンジー・ミルホーンを主人公にしたシリーズ。 Aから順番に、今のところUまで(日本ではRまで)出されているようです。 後を引かない読後感。こどもの頃読んだ、赤川次郎の三毛猫ホームズみたいな。アルファベットは26文字しかないのが残念無念。 主人公のキンジーは、サバサバしていて女性の読者に好まれる人物像だと思います。 女私立探偵というと、V.I.ウォーショースキーが思い浮かびますが、設定にヴィクのような重たさがありません。 自分の出自がどうのとか、大きな組織の不正に立ち向かうという大仰な使命感もない。 アクションシーンもヴィクのようにかっこよくハードではなくて、ハラハラさせられます。 あこがれる存在というより、親近感の湧く主人公です。 シリーズの最初だからということもあるのだと思いますが、出だしがあまりに芸がなく、驚きました。 私の名前はナニガシ。私立探偵。年はいくつ。カクカクシカジカ。 頭の中にスザンヌ・ヴェガの「ルカ」が流れました。 どの小説家も出だしで苦労すると聞くので、これは工夫した結果なのだろうと思います。もって回った言い方をしない、サバサバした主人公をうまく表していると、思い、ま、す。 不思議に思ったのは、夾竹桃の毒って、そんなに威力があるものなのだろうか?ということです。 こんなに簡単に殺人が出来るのなら、そこら中に植わっているのは危ないことではないか。大麻より先に、引っこ抜かなければ。実際には、こんな簡単に人が殺せるようなものではないのだろうと思いいます。まあどうでもいいのですが。 ただちょっと、カプセルをいくつか飲んでいる身としては、この殺人はドキッとしました。 もひとつ不思議に思ったのは、最初の被害者にはアレルギーがあって抗ヒスタミン剤を飲んでおり、犬やら猫やら花粉やホコリなどにアレルギーがあるということになっていますが、その妻が犬の美容室をやっているという設定になっていることです。 離婚してから(元)妻はこの商売を始めたんだろうと思いますが、その経緯に全然触れられていない。けれども、始終わざわざ犬が話にチラホラ出てくるので、いつそこらへんがハッキリするのだろうと思ったら結局触れられずじまいでした。 アレルギーがあるけれども、こどものためには犬を飼うのがいいと思い、クスリを飲むようにしたっていうのも、そんなにうまくいくかっと突っ込みたくなりますが、小説なのでこれもどうでもいいことです、けどなんでこういう話にしたんだろうと、不思議な気がしました。 ペットブームが目新しい時期だったんだろうか。。 驚いたのは、「カリフォルニアでは、他の多くの州と同様に、離婚が成立する条件は、性格の不一致と不治の精神障害しか認められておらず…」、浮気は理由にならない、ということです。 それじゃ、小説のネタとして探偵ごっこの余地が狭まってしまうな。 いやいや、これほどまでに家族の形態は崩れているということで、この小説の中でも、ろうあの子に「前妻」を理解させるのにナンギする場面が出てくるほどなのに、 一方では、精神科医が行うさまざまな療法や、甘いものを断った人の話、聞きなれない難しい名前の厳しいダイエットの話題が出てきたり、自然食品の店の描写が出てきたりと、一部の分野には妙にこだわって節制したりする世相が描かれているのは、面白いと思いました。 それらを主人公はあざ笑うかのように、無頓着なライフスタイルであるのが、可笑しかったです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.07.06 18:04:54
コメント(0) | コメントを書く |