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カテゴリ:読書
昨日は微熱が出たので、日中からエアコンをつけたり消したりしながら、寝転んで「風が強く吹いている」(三浦しをん)を読んでいました。
「まほろ駅…」を母に返しがてら、この作家の駅伝の本をずっと読みたいと思ってんだけどねと言うと、なんと「あるよ」と出してきました。 もうっ、これはハードカバーからなかなか文庫本にならなくて、新聞の広告欄でこのタイトルを見るたびに、読みたい読みたいと思っていたのです。 そんな思いも何もなく、何気なくついでに買っちゃうんだからもう。…助かったけど。 思ったとおり、本気で書いた本は、やっぱりよかったです。 バラエティに富んだ人物設定が絶妙で、これは自分に似ているとか、あの人にそっくりとか、そうかこういう人は頭の中でこういうことを思うんだなと、自分や周囲の人に重ね合わせて読み進めました。 最相葉月さんの解説によると、6年の歳月をかけて書かれたものだそうです。デビューしてからのほとんどの作品は、この作品と平行して書かれたというのも、うなずけます。 まほろ駅…は、読みながら、これまでに読んだ小説や見たドラマのことをいくつも思い出すような、既定路線の枠に収まってしまう、ありがちな話でしたが、この作品は、そのような世の中にあふれている、これは所詮こう、という既成概念や価値観を打ち破る物語です。 全く経験のない者を集めて箱根駅伝を目指すという話は、そんなの現実にはムリとか、所詮夢物語と言ってしまえばそれまでですが、こういうことも不可能じゃないのでは?と思いたくなる、希望や力の湧いてくる小説です。 箱根駅伝の存在をはじめて知ったのは、お正月に母の実家に行った時。叔父とその息子たち(従兄弟)が熱心にテレビを観ていました。 今考えると、テレビで全国放送されるようになってすぐの頃だったのでは。叔父は昔陸上をやっていたので、特に長男には小学生の頃からさまざまな大会に出させては、その映像を我が家に送ってきたりしていました。 その従兄弟は、スポーツ推薦で大学に入ったものの、アトピーがひどくなって最終的に走るのを断念しました。 陸上で一流の大学に入り、さらに箱根駅伝でエースとして活躍できる人は、才能もあり努力もし、さらに怪我や病気もなく運にも恵まれた、ほんの一握りの人だけ。 箱根駅伝の世界だけでなく、野球にしてもサッカーにしても、ゴルフにしても、相撲でも、いまや小さい頃から専門的にトレーニングしたり、親もお金をかけたり、才能のある選手を全国から集めたりということが、当たり前になっています。 そこから素晴らしい選手が数多く育成されているのも事実ですが、その分、そこまでたどり着かなかった選手もたくさんいて、いろんな人生があるはず。 スポーツの世界に限ったことではなく、今の世の中は、全般的に「こうだったら、次はこう」といった既定路線を簡単に描き、目的の前段階のさらに前のもっともっと前あたりから、そのワクから外れたらもう論外、という考え方におおわれているように思います。 そのようなワクは実際には幻想に過ぎないのに、少しでも有望なものを早く手に入れて、得をしようという考えだけにとらわれていて、かえって無用な限界をつくっているように感じます。 そもそも何のために走るのか?といった問いや、厳しい管理システムの下でのトレーニングの是非などは、駅伝だけの世界に限らず、多くの人の心を捉えるものだと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.09.08 14:23:37
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